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補欠勇者  作者: 吉良 善
4 強くなりたい
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ロトとゾルカ

ロト・ロウの元での本格的な剣の修行が始まった当初、


時間に余裕がないことからロトは身体の強化と


実戦経験に重きを置いた。


「ゾルカは非常に強く、それでいて柔らかい手首を持っている。


 肘、肩も強い。


 何とかの一つ覚えで剣を振り続けたおかげで


 良い太刀筋も身についておる。


 ここでは小手先の技術はよい、剣速を極め上げよ。


 レイファスは技術に不足はないが後の先にやや偏った剣である。


 だが勝負とは得てして先に一撃を入れた方が勝つもの。


 先の先を打つ意識も養い、加えてどっしりと構え、


 時に敵を圧倒するほどの攻撃を行うために足腰を強化するのだ」


とのことで、二人は上半身と下半身に腕や足の動きに


抵抗する機能のある重りを着けた。


剣も通常より遥かに重量のある物を使わされたが、


ハンマーよりはいくらか軽い。


それらで身を固め、ひたすらに経験を積んだ。


ロトと戦い、小屋を離れ魔物と戦い、


またゾルカとレイファスとで戦った。


始めは無論レイファスの方が何歩も先に行っていたが、


これまでまともに鍛えることも教わることもなかった分


ゾルカの伸び方は大きく、本人も驚くほどであった。


獣の原でハンマーを使っていたことも効用があった。


先述のとおり訓練用に重く作られた物でもハンマーよりは軽く、


またロトの言う手首、肘、肩もよく鍛えられたようだった。


ゾルカにとってここでの日々は、


ロトとの戦いで剣技を、


魔物との戦いで実戦経験を、


レイファスとの戦いで闘志を高める、


望んだとおりの鍛錬の場となったのである。


そして残すところあとひと月となった日、


ロトから今後は重りを着けないようにとの指示を受けた。


身体も剣も羽毛のように軽く感じゾルカは自信を深めたが、


ロトと打ち合ってみると全く歯が立たず、


またレイファスとの差も、彼も大きく成長しているため


依然としてあった。





「くっそー!


 強くなってるって実感はあるのに、


 ロトさんにもレイファスにも全っ然かなわない!」


本日の訓練を終え、ゾルカは悔しさを全身で表しながら言った。


レイファスはさっさと身体を清めに行っている。


「…ちくしょう…


 腐ってもレイファスのヤツはあの赤騎士の弟だからな…


 対して俺は父さんの息子…


 ある意味呪われた血筋…!」


「アホか。


 血筋なんぞ関係ないわい」


「はっ!


 ロトさんいたんですか!」


一人落ち込んでいると、いつの間にか背後にロトが立っていた。


剣を扱っているときは背中に棒でも入っているかのように


背筋がぴんと伸びるこの老人であるが、普段は腰が曲がっている。


そのロトが、ゆっくりとゾルカの前に回り込んで額を小突いた。


「親や血で己が決まるほど人間はたやすいものではなく、


 この世はつまらないものではないぞ。


 皆、持っているものが違うだけじゃ。


 レイファスは兄と同じく剣魔に優れておったというだけの話、


 お前の父は剣才には恵まれなかったが何もない男ではない。


 そうじゃろ」


「…ハイ」


「わしに勝てんのは当たり前じゃ、


 剣に身を入れてたかだか数ヶ月のひよっ子に


 やられてはかなわんわい。


 わしの人生何だったんじゃという話だ」


「…ハイ」


ロトは、剣豪と呼ぶにふさわしい剣腕の持ち主であった。


対する者は、小柄な老人という外見の印象を持ったままに抜き合うと、


次の瞬間には地に伏すことになるだろう。


闇雲に打ち込んでも体をかわされ、


ゾルカは未だにロトの剣に触れることすらなく打ち据えられる。


その電光の如く素早いことは、


身体にも剣にも羽が生えたかのように軽やかで、


動きを目で捉えることすら困難だった。


「わしがお前に付き合ってやっているのはリグルスが言うたとおり


 ヤツよりはマシだったからじゃ。


 わかるか。


 来るものは拒まずとはいえ、見込みが全くない者は


 わしにとってもその者にとっても益にならぬゆえ断ることもあるが、


 お前のことは見てやっておる。


 剣の道に限って言えば、父と違いわしが時を割くだけの意味があると


 お前のことを考えておるわけじゃ。


 いちいち親兄弟がどうのと考慮するか、埒もない。


 わかったか」


「は、はい、すみませんでした」


「得心したなら、汗くっさい身体を流して飯の仕度をせい。


 食後にもう少しもんでやる」


「ええ!まだやるの!?」


「バカもん、レイファスに追いつきたいのじゃろ。


 もともと数段上にいたヤツと同じ修行で差が埋まるか。


 慢心する男ならそう難しくはないが、ヤツは貪欲だ。


 お前はさらに貪欲になれ。


 もっと目の色を変えるのじゃ。


 そうでなければ一生並ぶことはできん」


「わ、わかりました、お願いします!」


「それと、お前はこれから反りのある剣を使え。


 お前の剣技にはその方が合っているかもしれん。


 わしの秘蔵これくしょんの中からひとつ分けてやる」


「はい、ありがとうございます!」


一礼して、ゾルカは走って行く。


それを眺めながら、ロトは小さく笑った。


ゾルカの方はわかりやすい少年だし立ち直りも早いから、


心配はしていない。


気がかりはむしろ、実力的には上にいるレイファスである。


ゾルカが風呂に入りに行っている間に、


ロトはレイファスと話してみることにした。



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