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補欠勇者  作者: 吉良 善
4 強くなりたい
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読み解く少女と降ろす男

「進行具合はいかがですか。


 順調ですか」


「うん」


「何か必要な物はありませんか」


「うん」


「では、また何かありましたら外にいる


 イメリアに申し付けてください」


「うん」


「では、失礼」


作業に没頭していたフィラミラは、たった今部屋を出て行った者が


誰なのか気づかなかった。


時計に目をやると、時間もいつの間にか


五時間ほど飛んでいた。


「…あれ?今来たの、誰だったんだろ」


それは実は、キラリトだった。


部屋を辞した彼女は扉の横に立つ女性兵士、


イメリア・ターナーに声をかける。


いかにも人の良さそうな若い女兵士だった。


「引き続き、よろしくお願いします」


「承知致しました。


 …ただ、作業中はこちらから話しかけても


 ほとんどお答えいただけませんけど」


イメリアは、そう言って苦笑した。


先程、部屋で見せたような反応を常にしているのだろうと


キラリトは思った。


だから、イメリアらのやることといえばフィラミラの休憩中に


話相手になったり暇つぶしに付き合うくらいのものだった。


フィラミラが風変わりな少女であることは、


初対面の時から垣間見えていた。


彼女とパーティーを組んでいれば苦労も多そうだが、


特殊な才能を持つ人物というものは往々にして


そういう傾向があるのかもしれない。


「報告を聞く限り、彼女の集中力は相当長く持続するようですね。


 そして連日集中し続けることでさらに磨きがかけられ、


 副産物と言っていいかわかりませんが魔力までも向上している様子。


 作業もはかどっているようですし、一石三鳥ということになりますね」


ファンフランのためにも、彼女自身のためにもなっているのなら


実に良いことである。


ぽんぽんとイメリアの肩を叩き、にこりと笑って


キラリトは歩いて行った。





神降ろしを体得するための修練を開始してから一ヶ月。


この間、ムトーはエウリス最高神殿の地下深くにある至聖所に籠もり、


完全なる静寂の中とてつもなく重いハンマーと聖杯を手に


祈り続ける日々だった。


至聖所には年に一度、最高司祭のみが入ることを許されているが、


『白の聖女』が神を降ろすためにここで祈りを捧げたことがあるため、


最高司祭に認められた者が神降ろしの修練を行う場合に限り、


立ち入ることができた。


基本的にそこから出ることはないが、入口の扉の向こうに


補助役の神官が控えており、問題があった場合に対処したり、


一日に一度扉を開き水や食糧を差し入れたりしている。


「本日も、お手数をおかけします」


早朝六時、開かれた扉の奥から巨体を覗かせたムトーが頭を下げた。


「いえ、とんでもございません。


 何度も申し上げていますが、


 このような大役を与えていただき光栄です」


恐縮しつつ答える神官は、女性である。


ムトーがこの神殿で働き始めた頃に出会った者で、


名をリリィ・ノーディンといった。


同時期に神殿に通い始めたことから接する機会も多く、


メアローゼから補助役を選ぶよう言われた際に、


ムトーは彼女に頼んだ。


リリィは二つ返事で了解し、今に至るのである。


威厳のある外見のムトーと向かい合うと、


ともすると親子ほどにも歳の差がありそうに見えるが、


実は年齢は五つしか違わない。


「それにしても、やはり神を降ろすための鍛錬というのは過酷ですね…


 あんな物を持ち上げたまま祈り続けるなんて」


リリィは、ムトーの背後に見えている室内に置かれた


鉄製のハンマーと聖杯を覗き込んで言った。


彼女の細腕ならば、どちらもわずかにでも持ち上げることすら


できないだろう。


いや、男性であっても相当の力自慢でも腰より上には


上げられないのではないか。


「このような鍛錬を、白の聖女様も行っていたのでしょうか…?」


「いえ、この方法は私が考えたものです」


「え?」


「神降ろしを体得するということは、


 より深く神の御心に触れること…


 そのために己をどう高めるかは自分で考え決める、


 それも修練の一環とメアローゼ様はおっしゃいました」


「…」


いずれも成人男性数人分の重量はありそうな


ハンマーと聖杯を持ち上げつつ、精神統一して祈り続ける。


過酷である。


とてつもなく過酷であるが、下手をすると


筋肉トレーニングの色が強くなりはしないかと、


リリィは案じた。



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