軟禁
十人ほどの男とともに村の中を歩く。
村人の姿は見えなかった。
突然のよそ者の出現を受け隠れているようにとでも言われたのか。
やがて到着したのは、村の外れにある一軒家だった。
ここで待てと言われ中に入ってみると、家具などはそろっているものの
空き家だったらしく生活感はなかった。
「部屋もいくつかあるみたいだな!
なかなかいい宿になりそうだ」
「のんきだなァ、お前さんは」
荷物を下ろしながら室内を見回すゾルカに、ジュナイルが言った。
ムトーは不審な物がないか調べている様子で、
フィラミラはさっさとソファーに腰を下ろしている。
「こりゃ相当待たせる気だぜ。
外にはばっちり見張りもいるしな」
窓のカーテンは閉じられている。
覗かれるのも落ち着かないのであえて開けはしないが、
当然外を見ることもできない。
それでも、確かに人の気配がある。
「見張りって、何人くらいかな」
「オレの読みでは五人ってとこだ。
正面に二人、左右と裏に一人ずつ」
「厳重だなあ」
「待たせるどころか、出す気がないかもな」
「物騒なこと言うなよ…
こっちが疑ったら相手も信じてくれないぞ。
伝わるからね、そういうのはね」
「…そうか、今の状況は村の前で帰ろうかとか言っていた
お前の気持ちが伝わった結果なのかもしれないな」
「違うよ!
みんなムトーが怖かっただけ!」
「ひどい言いがかりですな…」
そんな会話をしていると、玄関の扉がノックされた。
ゾルカが開いた扉の向こうには、先程の少年が立っていた。
彼の表情にもはや恐怖の色はなく、瞳は好奇心に輝く光であふれていた。
「おお、君はさっきの」
「ぼく、アリヤ!
さっきはごめんね、今までこの村にお客さんが
来たことなんてなかったからびっくりしちゃったんだ」
「ははは、いいってことよいいってことよ。
俺はそんな小さいことは気にしないからな。
ところで、何か用か」
「にいちゃんたちにお茶を持って行くって話になってたから、
ぼくがやるって言ったんだ」
アリヤは、ポットとカップが乗せられたトレイを持っている。
扉の両脇には、見張り役の男性がそれぞれ立っていた。
「よく許してもらえたな」
ゾルカの後ろから、ジュナイルが顔を覗かせる。
村側にとって、見張りがいるとはいえ子供を接触させるのは
人質に取られる危険性があるはずだ。
無論、ゾルカたちにそんな考えはないわけであるが。
「さっきも言ってたけど、父ちゃんは
にいちゃんたちが悪者だなんて思ってないんだよ。
他の人たちもそうだと思うよ」
「なるほど…」
だとすれば、この家にとどまらされているのは
こちらを警戒しているということ以上に
村の方で何か理由があるのだろう。
「…しかし、その発言をしたのは…君のお父上は」
「父ちゃんは村長なんだ」
互いに自己紹介をする暇もなかったが、
村の入口で話し合いをしたあの人物がやはり村長だった。
彼をはじめ村人たちは思ったよりこちらを危険と
感じてはいないようなので、ゾルカたちの緊張もいくらか解けた。
「もうすぐここから出られるようになると思うから、
そしたら村の外の話を聞かせてよ!」
「おお、それならオレの本を…」
「やめろジュナイル!
アリヤが広い外の世界への興味を失ったらどうする」
「…どういう意味だ…」
「任せろ、ゆっくり話してやるよ。
俺が旅をしてきたこの大陸のことをな」
ゾルカはまだそれほどの旅をしてきたわけではないのだが、
アリヤは瞳を輝かせる。
その姿に、ゾルカはかつてアルトリアで冒険に憧れていた
自分を重ねるのだった。
「そういえば、にいちゃんは名前は何ていうの?」
「おう、俺はデスゾルカ・レビだ!」
「オレワデス・ゾルカレビ?」
「…何か重大な間違いを犯しているようだな…アリヤ…」
「ぼく、ずっと村の外にも友達が欲しいと思ってたんだ。
友達になってくれる?」
「何を言っているんだ、アリヤ!
お互いに名乗り合ったなら、それはもう友達なんだぞ!」
「うん!ありがとう、オレワデスにいちゃん!」
「…ゾルカにいちゃんって呼んでくれる?
友達なら頼む」




