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補欠勇者  作者: 吉良 善
2 仲間がほしい
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神剣グレムド

遥か昔のこと。


ファンディアという世界が生まれたばかりの頃は、


神々しか存在していなかった。


ある時、善き神の王エウリスは様々な生き物を誕生させた。


魔の神の王ユーギルもまた多くの生き物をつくったが、


それらには魔の力が備わっていた。


ユーギルは自らがつくった生き物を率いて


エウリスたち善き神に挑んだ。


ファンディア全土が戦場となり、いつ果てるとも知れぬ


神々の激しい戦いの末、エウリスは己の血から


神を屠る力を持つ血の色の聖剣を生み出した。


その剣の一撃はあまりにも強力で、


ユーギルが手にしていた邪剣を折り、ユーギル自身を砕き、


ファンディアの大地と海をも割り、


長き戦いは終わりを迎えた。





という、神話が伝えられている。


この中に出て来る、エウリスの生み出した血の色の聖剣こそが、


グレムドだという。


無論、それを示す確証はない。


エルトフィア大陸の各地に、恐るべき力を持つ剣士の話が残る。


時代こそ違うが、彼らに共通するのは赤い剣を携えていたこと。


人々は、その赤い剣はエウリスの剣ではないかと考えた。


しかし赤い剣は正義のためだけに振るわれたのではなく、


己の野望のために使う者もあった。


ゆえに、聖魔双方の性質を備え、持ち主の心を試し、


支配すると言われたのである。


善き神の血から生まれた剣がなぜ魔の剣にもなるのか。


それは、神々の戦いの折にユーギルの血を吸ったからだと、


人々は恐れた。


いつしかグレムドと呼ばれるようになったその剣を持つ者は、


いずれも短期間で姿を消している。


だが、もし。


『神殺しの剣』の力に屈せず、自在に操る者が現れたとしたら。


それは『勇者』なのだろうか、それとも…





シャンデラではグレムドに関するめぼしい情報は得られなかった。


ジュナイルによると、


「オズリッドかヴィルレーに行くのがいいだろうな」とのこと。


両都市は、それぞれニーベルムとファンフランの王都である。


「何で?」


ゾルカが尋ねた。


「前者は赤い剣の剣士が最後に目撃された土地、


 後者はエウリスの最高神殿がある土地だからだ」


すなわち、グレムドにゆかりの深い場所だ。


オズリッドは直近に件の剣が出現しており、


ヴィルレーは己の血から剣を生み出した神・エウリス崇拝の


総本山がある。


「ムトーはヴィルレーには行ったの?」


ゾルカにムトーは深くうなずいた。彼は、エウリスの神官だ。


「シャンデラの前に寄りました。


 ワムトから出たことがなかった私にとっては、


 憧れの場所でしたからな…


 グレムドについての話はついぞ耳にしていませんが」


「ふぅん…俺もヴィルレーには行ったことがあるし、


 オズリッドにしようか」


行ったことがあると言っても、ゾルカは子供の頃に


成り行きで行くことになっただけですぐに出発してしまったので、


ヴィルレーの街の記憶はほとんどない。


ただ、白で統一された美しい街並みは心に刻みついている。


またゆっくりと訪れてみたいとは思っていたが、


今はグレムド入手が優先だ。


一行は、血の色の聖剣が最後に現れた地へ向かうべく、


シャンデラを発つ。


「どうした?」


街の門まできた時、立ち止まったゾルカにジュナイルが声をかけた。


ゾルカは街と、外に広がる平原とを交互に見ている。


仲間と出会った場所、これから踏み出す場所、その境界。


この街でまた、ゾルカの人生は変わった。


広い世界、多くの人々の中で、同じ目的を持つことのできる


存在と出会うことができたのである。


ひとつの転機から次の転換点へと進み、それを何度も繰り返した先に、


望む未来と結末はあるだろうか。


「…今までの旅は、たまたま同じ方へ行く人たちの中に


 入ってきただけだからさ。


 向かう場所も目指すものも同じ仲間がいるっていうのは


 いいもんだなって」


「オレも一人旅を続けてきた身だが、同感だな。


 出会って間もない同志とはいえ、見てる方向は同じなんだ。


 道を違えるまではともに行けばいい。


 魔王も海も越えて、幻の北の大地までな」


互いにまだ深くは知らない。


しかし、同じ時、同じ場所にあって結ばれたえにしは、


決してただの偶然ではないだろう。


四つの運命はこの街で出会い、今ひとつの道をゆく。




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