補欠勇者
―――――『魔導ニュース、
本日もノイエン・フロリアンがお伝え致します。
王都アルトリア襲撃を皮切りに
周辺の街が次々と攻め落とされ、
事実上アスティア王国が滅ぼされるという大事件からおよそ六年。
長きに渡った現地の調査結果から、
四大国は新たな魔王の出現と判断しました。
旧アスティア領内に魔物が急増し、また統制の取れた動きを見せ
街に目標を定めて攻撃する事件が発生していることから、
指導的立場にある者が存在していると推測されるためです。
近年、他の地域でもジュネート大陸から
渡って来たとみられる魔物が増え、
四大国は自国防衛に追われアスティア方面への対処が
難しくなっております。
また、今なお正規勇者がジュネートの魔王打倒に
かかりきりであることを受け、
国王たちは半年前に認定したばかりの補欠勇者に
アスティアの魔王を打倒するよう
一応要請しました。
しかし補欠ということで正規勇者と比較すると
力量が格段に落ちるため、
焦らず力を蓄えてからでよいという温かな言葉が添えられました。
ある国の高官は、
“補欠勇者は拾ったクジのようなもの、あまり期待せず
当たれば儲けものというくらいの気持ちである”
と話しています。
実際、優れた能力を持っていることで選ばれたわけではなく、
ある町に視察のため訪れていたジェストール国王に
勇者になりたいと直訴した少年がおり、
あまりに熱意があったため例外中の例外として
他の三ヶ国の王たちに推薦したという経緯で
認定されたとのことですが、
それほどまでに強い意志を持つ若者、
ぜひともがんばっていただきたいですね。
なお、正規勇者と異なり補欠勇者は氏名・容姿ともに公表されません、
特別支援する必要もないそうです。
自力で知名度を上げ人々の協力を得なさいという
四大国王たちの親心でしょう!
さあ、二番手の勇者様、出番です!
それでは、次のニュースです…』―――――
―――――「何だ今の!
一応要請したとか拾ったクジとか、みんな言いたい放題だな!
俺、今までノイエン・フロリアンは結構好きだったけどたった今
どちらでもないになった」
「この人は原稿を読まされてるだけでしょ」
魔導テレビを見ていたデスゾルカは、憤慨して立ち上がる。
それには目もくれず、エリエルは言った。
聞こえているのかいないのか、
デスゾルカはぶつぶつとつぶやいていた。
「…ジェストールの王様め、あの時は俺の手を握って
感激した風情を出していたくせに…
あんまりうるさいから仕方なく認められたみたいに…」
「恥ずかしいから他の人には言わないでね。
俺が補欠勇者だーって」
「恥ずかしくありません!
ついにレビ家から勇者が誕生したんだぞ」
「補欠でしょ」
「重要なのは勇者の部分!」
「だってお兄ちゃん弱いじゃない」
「まだ強くないだけ!
正規勇者だって最初は弱かったんだよ。
だんだん強くなっていったんだ!
俺もそう!これから恐るべき成長を見せる。
俺は世界一伸びしろがある男と言われているからな」
「自分で言ってるだけでしょ。
お父さんも昔似たようなこと言ってたらしいよ」
「…不安になるようなこと言うなよ…
でもなあ、さっきのニュース見たらやる気なくなるよなあ。
世界中の誰からも応援されない勇者って何だよ」
だって名前だけだから…と言わなかったのは妹の優しさだった。
デスゾルカは、補欠勇者になった。
勇者が足りなくなったら補う者。
彼はレビ家から勇者が誕生したと言ったが、そうではない。
四大国が公式に認めるのは正規勇者だけだからだ。
彼が夢見ていたものが、まさにそれなのである。
とはいえ、過程はどうあれ
ジェストール国王が推薦してくれたのは事実だ。
世間にとってはほとんど意味のないことだが、
デスゾルカの目標には一歩近づいた。
実績を積めば真の勇者として認められる可能性はある。




