35話 七海
一人称で、七海の話です。
あれから、十年の月日が流れた。
相変わらずイーターとの戦いは続いていて、平和は訪れそうにない。あの時との違いを挙げるとすれば、私が戦場を離れたことかな。
あれ以来、私は変身できなくなってしまった。ブレイクギアを動かすに足るだけのイメージが浮かばないからってクロエは言っていた。悔しくて初めの内は何度も挑戦していたけれど、三年経ってからはもう腕に付けてすらいない。もう、私は戦えないって、分かったんだ。
一花の仇を取りたいって思っても、心の奥底にある恐怖が邪魔をしてくる。それに気付いてからは、ブレイクギアを見るだけでも戦いの悲惨さを思い出しちゃって、もう何年も机の中に仕舞いっぱなしなんだよね。
本当なら、ブレイクギアはクロエに返すべきなんだろうけど、クロエはそのまま持っていて良いって言ってくれたんだ。嬉しいけど、本当に持っていて良いのか不安だなあ。
今まで倒したイーターの残骸からギアを量産してあるから、旧型のブレイクギアは必要ないのかもしれない。ギアの適応者じゃない人も量産されたヒュドラ参型を使って戦えるようになっているらしいし、三人で戦っていたあの頃よりはずっと楽なのかも。
それと、舞姫は今でも現役で戦っているみたい。かなり重要な立場にいるらしいし、尊敬しちゃうなあ。逃げ出した私とは、全然違うよ。
舞姫はまめに会いに来てくれるけれど、私としては昔のことを思い出しちゃうから辛いかな。でも、一花のことを知っている数少ない友達だから、大切にしたい。
戦場を離れた私は学校の先生をやっている。経験を生かしてイーターとの戦いの歴史を教えているんだよね。戦場を離れたのは後悔してるけど、でも、今の生活も悪くないかなって思ってる。
けれど、最近は生徒の一人がギアを使って戦いたいって言ってて心配だなあ。目を輝かせて「あたしも一花さんみたいになりたい!」って毎日のように言ってるんだよね。昔の一花にそっくりだから、尚更不安になっちゃうよ。
来月にはギアの適応者検査があるから、もしあの子が適応者だったら、喜んで戦場に行っちゃうだろうなあ。考えを変えて欲しいけど、簡単には変えてくれないだろうし。そういうところも一花にそっくりなんだよね。
あの子が適応者じゃなければいいけど、もしそうだったら……。私は、あの子の助けになりたい。あの子の純粋な気持ちを、私は肯定してあげたい。




