迷い。
じりじりと、焼けるような暑さが体全体を襲う。
それを避けるように日傘をさす。
日傘は良い。
自分の暗い顔も外からの視線も何もかもシャットアウトしてくれる。
人の視線が怖い私には切り離すことのできないアイテムだ。
ふと、顔を上げる。
歩く人は皆、涼しげなワンピースを着ている。
私はワンピースを着ない。
持っていない、というわけではない。
むしろワンピースの方が多い。
それならば何故着ないのか。
答えは簡単である。彼が好まないからだ。
彼に好かれたい。そのためだけに私は自分を彩る。
ワンピースは好まない。
髪はロングが良いらしい。
彼との会話の端々からいろいろな情報を拾っていく。
彼好みの女の子になるために。
自分をしっかりと塗り固めていく。
(…好きだ)
心の中で呟く。
それだけで心が締め付けられる。
この気持ちを伝えられるなら。届けられるなら。
そうは思うが、この一言にのしかかった想いは、果たして彼に受け止めて貰えるのだろうか。
結論は、わかりきっている。
だからこそ全てを飲み込む。
彼までも、私のようなドロドロとした物体にしてしまわぬ様に。
(テレパシーがあったなら、心が読めたなら)
そんな馬鹿げた願いは叶わない。
分かっていてもどうしても空想してしまうのだ。
例え彼が目の前にいようがいなかろうが関係ない。
自分の言葉を伝えられないのはどちらも同じである。
(…会いたい)
届かぬ願い。
それと少しの希望を胸に抱えつつ、学校への歩みを早めた。