表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Peel.  作者: @Fau
1/3

好き。

どうしてなのだろうか、時たまふと物悲しくなる時がある。

それは時と場所を弁えず、おもむろにやってくる。

独りで考え事をする時、又は君と別れ背を向けた瞬間。

腹の奥底から斑色に染まった何かが、ふわふわと喉元にまで上がってくるのだ。


「また連絡するから」

「そう」


何気ない二人の会話。

私は素っ気なく、ただ相槌を打つ。

共通の友人になら和気あいあいと会話できるというのに、君が相手となると急に口数が減る。

誰よりも、何よりも、どんな人よりも愛しているというのに伝わらない。

否、伝えることをしないのだ。

自分を曝け出すことが、何よりも怖いのだ。


「……情けない」


自室でメールの送信画面を見ながら独りごちる。

可愛らしい顔文字が羅列した画面に、溜息が漏れる。

自らの言葉には違いないのだが、何故こんなにもテンションが大幅に変わってしまうのか。

何故自分の声で伝えられないのか。

今日一日のことをひたすら反省するのだった。


「メールですら、好きだって言えないなんて」


そうなのだ。

私から告白をしたときも、付き合い始めたときも一言だって好きだとは言わなかった。

言った瞬間、今まで築き上げた「大人な私」が崩れてしまう気がした。

歳下だというのに頼りがいがあって、自分なんかよりも数倍大人な彼に甘えきってしまうのではないかという、ちょっとだけ残っている無駄なプライドが、その言葉を伝えるということを阻害している。

歳を取るとは難儀なものだ。

そう思い、枕元へと携帯を投げた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ