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神話使いの住む世界  作者: 高居望
第1章
2/9

遅刻と先輩  7/23改

 初日、入学式は俺と愛がクラス委員に強制選出され、無事終わった。(俺たちはちっともぶじではないが)

 その日の事だが、この学校は全寮制なので、俺と愛は一緒に帰宅した。以下そのときの会話:

「なんか・・・すごい一日だったね」

「そうだな・・」

「・・・」

「・・・」

「あっあの・・如月君のセルフってどんなのなの?」

「セルフ?あぁ固有神話か。そんな大したもんじゃないよ」

「そうなんだ・・私のは活性化なんだ」

「へぇ、便利そうでいいな」

「うん。怪我したら言ってね・・・」

「頼りにしてるぜ」

「うん・・・」

「おっと、もう寮か。じゃあな桐野」

「うん、じゃあね。如月君」


 そういえば桐野の顔、少し赤かった気がするが、気のせいだろうか。

 家に着いた俺はこれから何をしようかと考える。

 時刻は15時02分。来てからまだ日の浅いこの町を散歩するのもよさそうだなとも思ったが、それは友達ができてからすることだな、とその案を却下する。

 結局この日は読書をして過ごすことにした。実はけっこう読書家なのだ。俺はページを進めていくにつれ、徐々にまぶたが重くなっていく。

 

 翌日、俺は目覚ましが鳴り響く前に起床。昨日はいつの間にか眠りに落ちたようだけど、何とかおきれたようだ。

「今何時だろう、6時ぐらいかな・・・。あれ・・・これはまさか!!」

 そう、俺は寝坊をしていた。原因は昨日目覚ましをセットし忘れというベタなミス。

「マジかよ・・・」

 現在時刻は8時15分。ここから学校まで徒歩25分。8時半までに着かないとアウト。

 俺は朝飯もろくに食わずに家を飛び出す。急げばぎりぎり間に合うか・・・


 通学路は当然ながら生徒らしき姿は見当たらない。

 俺は走りながら遅刻したときの言い訳に思考をめぐらせていた。

 先に言っておくが、これからおきるイベントは偶然の事で、俺の故意的な意思は働いていないぞ。と、ここで責任逃れをしておく。だいたい、朝寝坊なんてべたなことをした俺に、もう一つや二つの事件がおきないはずがない。

 そして曲がり角で・・・またしても恒例のイベント”女の子とぶつかる”発生!

「きゃっ」「うわっ」

 この後の展開は言わずもがなだろう、俺はこれから起きるであろうラッキーイベントに少し身構える・・・しかし、そううまくいかないのが現実。

 なんと、俺が跳ね返ったのである。

 全く想像してなかった事態で、俺は受身を取ることもかなわない。

 ゴツ、と鈍い音がして目の前が暗くなっていく。


「ん・・」

 気がつくと俺は知らない部屋にいた。ここは保健室か。並んでいるベッド、部屋中に満ちている薬のにおい、その他もろもろの要素から推測。

 記憶が定まってきて、今朝のビックリ衝突事件を思い出しながら苦笑いする。

「とんだ展開だぜ・・」

 すると、先日聞いたばかりの声が耳に入ってくる。

「目が覚めたかね?」

 衝突相手はなんと・・・かの有名な生徒会長、薗崎印である。よりによって生徒会長かよ。笑えない冗談だ。

「読書に集中したくて神話を使用していたら突然君が飛び出してきたものだから、いやはや驚いたよ」

「す・・すみませんでした!」

 俺は謝る。陳謝だ。

「おいおい、私にも非がないというわけではないのだから、そんなに謝らなくてもいいよ」

 おお、なんて心の広い人だろう。性格もいいって噂は本当のようだ。憧れの先輩ナンバーワンだな!!ってまだ印以外の上級生とあった事は無いけど・・・

 衝突の許しも得られ、少し安心した俺は間近で先輩をウォッチング。背は思ったほど大きくない。160あるかないかぐらいだな。スタイルは・・・パーフェクト!!いわゆるボン、キュッ、ボンってやつだ。黒髪ストレートの長髪は、武道家の様にも見える。

「そんなに見て、私の顔に何かついているか?」

と言って少し近づいてくる。スタイルを意識したせいか、俺の視線はある一点に・・・まったく立派だ。

 先輩は俺の下心に気づいてないらしい。多くの偉人がそうであるように、先輩も人の眼を気にしない派か。と、偉人と先輩を並べてみた。そのほうが今は助かるけど。

「まぁいい。君の怪我はたいしたものじゃなかったから、あらかた治しておいたよ。でも君はぐっすり眠ってしまっていてね。もう今日の学校は終わってしまったよ」

 そういわれて時計を見ると、現在時刻12時43分。確か今日は11時30分下校だったから1時間以上たってしまってる。昨日の読書のせいか。て、あれ、先輩もここにいるってことは、授業受けられなかったんじゃ・・・

「先輩はどうしてここに?」

「君が熟睡してしまっていたからだが?おかげで今日の授業は欠席になってしまったよ」

「あう・・・」

 大ダメージ。心が申し訳なさでいっぱいになる。

「冗談だよ。今日は保険医の先生が御休暇を取られているしくてね。先生に事情を説明したら保健室の鍵を貸していただいて、君が起きたら返しにくるように言われたのだよ」

 ああ、なんかいろいろ迷惑かけてしまったな。

「君も無事起きたことだし、そろそろ我々も下校するとするか。鍵は私のほうで返しておくから君は先に帰って良いよ」

「はい。ご迷惑おかけしました」

 そう言われて俺は帰ろうとする。

「そうだ。君にもう一つ言っておきたいことがあった。」

「?」

「今朝、君が飛び出してきたときに、私が声を上げただろう」

 俺は頭の中を検索。あ、あのかわいい声か。

「それでだな、その・・・あれは聞かなかったことにしてもらいたいのだが・・・」

「え?何でですか?」

 よくわからないお願いに俺は首をかしげる。

「・・・・みなまで言わす気か?」

「・・・・?」

 未だにお願いの意図がつかめない。何か問題があるのか・・・

 そして印は少し顔を赤くして、

「・・・恥ずかしいから・・・」

と言ってさらに顔を赤くした。

 その瞬間、俺のほうも顔が燃え盛った。ヤバい、これがギャップ萌えか・・・?

「・・・了解です」

「・・・約束だからな?」

 完璧超人だと思っていた先輩のかわいらしい一面に思わず笑ってしまった。もう少しいじってみたくなったが、相手は先輩。ここは自重しよう。

 先輩は笑った俺にちょっとムッとしたようだが、特に何も行ってこない。今のうちに退避だ。

「それでは、失礼します」

「・・・絶対言うなよ」

 今朝は踏んだり蹴ったりだったが、先輩との衝突未遂はそれほど悪いことじゃなかったな。

「そういえば、怪我したら桐野が治してくれるって言ってたっけ」

 そんなことを思い出しながら、またしても生徒の見当たらない道を一人で歩いていく。


こんにちは、高居望です。

これからもそれほど間を空けずに投稿していく予定ですので、お付き合いいただけると幸いです。

感想などいただけるとうれしいです。

次回は「神話と仲間」を予定していますが、変わるかもしれません(笑)

最後まで読んでくださった方々ありがとうございました。

それでは。


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