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神話の英雄譚/神々の楽園  作者: わらびもち
第八章 果ての地
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第60話 美しい世界

 ()()が誕生したとき、世界が誕生した。世界が誕生したときにそれが誕生したとも言えるだろうか。


 それは原初の存在であるために、世界そのものと同等の力を有していた。それはやがて天と地を創り、天の上に更に天を、地の底に更に地を創った。そして世界を安定させるために世界を三つに分割し、見るも美しい世界を創造した。


 世界が誕生してからしばらくしたときのことだった。あらゆるものが次々と創られていくその世界に、破壊と衰退が誕生した。それまでは生み出されることしかなかったのだが、破壊を司る者の誕生によって世界の在り方が大きく変わったのだ。


 創造する者と破壊する者、正反対の性質を持つ二者は反発するのではないかと恐れられたが、実際にはそのようなことはなかった。創造なくして破壊なし、破壊なくして創造なし。互いに互いを削りあい、補いあうことで世界が完全なるものに近づいたのだ。


 以来この世界は安定していた。世界を支配しようとする者によって乱されることはあったけれど、世界そのものが揺らぐほどのことはそれ以来なかった。


 だからこそ、新たな最高神の誕生というのは警戒の限りを尽くすべきことであった。その者は生まれたばかりであるために、知能はあまりに低く、ただただ何かを司っているだけの者であった。だからこそ、()()は危険であった。


 直近で消滅した力は6体の魔神、そして最高神の一柱・破壊神は封印された。魔神に関しては魂は世界を巡るだろうが、力は失われている。神が死ぬというのはそういうことなのだ。


 つまりこの世界に存在していた力が、ここ最近で大きく失われた。だから今、おれ達が接触したことをきっかけに、世界の外側から巨大な力が流れ込んできたのだ。


 繋がれた2つの水槽の水位が等しく保たれるように、世界の力もある程度バランスを保っているようだ。そしてその巨大な力が纏まってに流れ込むことによって、これまで存在しなかった創造神と破壊神に並ぶ第三の最高神が生まれたというわけだ。


「知能は不完全、つまり力もまだ発展途上だな。抑え込むなら今が好機チャンスだが……なんだって獄境こっちに出ちゃうかね。天界なら創造神セスフ様がなんとかしてくれたろうに」


「本来は根源ルートから一番近い天界に出てくるんだと思うんだけどね。ボク達が触っちゃったからかな。…………にーさんのせいだ」


「おぉ……おれだけじゃねぇだろ。どうすべきかな」


「悪神じゃないなら止める必要はないよね。いや、あれほどの存在ならどっちにしろ無闇に力を使ったりはしないでしょ。それにあれが何を司ってるのか分からない以上、今は手を出すべきじゃないと思う。だけどあれは……」


 あれはまだ知能を得ていない。つまり本能のままに動く怪物のような存在だ。その上、あれの力によって世界が何か変化している。


 恐らくあれの司る力の影響だろうが、制御ができていないのなら殺すか封じるかしなければならない。ただここまでの存在を考えなしに殺してしまうのは悪手だろう。


 何が起こるか分からない上に、殺せたとしても恐らくは新たな力を持つ存在がすぐに生み出される。


「知能を得るまで封印がいいか。……戦うとしてもちょっと様子見だな」


「そうだね。ボクとにーさんならなんとかなると思うけど、念のためもう少し離れておこうか」


 まずはあれの力を見極める必要があった。穴を目視できる程度の距離まで離れ、人型の泥を観察した。が、どうやらそんな悠長なことをしている余裕はなさそうだ。


()()()()な」


 天界は創造神セスフ様がいるために大して影響がないようだが、今まさに獄境ここと現世との境界がなくなっていっているようだった。


 境界を失い重なり、混ざり合っていく。それ自体は問題視するようなことでもないが、さらに力が大きくなれば、世界が大きく変化してしまう。


「獄境と現世が重なったところで、大陸が一つ増える程度の変化しかないだろうが……先のことを考えるといよいよ放っておくわけにもいかなくなったな」


「本来重なることのないものの境界を取り払う力なのかな。重複とか混合とかそういう……混沌神ってところだろうね」


 早いとこあれを止めなければならない。おれとサタンは混沌神に向かって一気に接近し、挨拶代わりに一撃入れてやろうとしたそのときだった。


「『ハク……』ッ!?」


「わっ!?ちょッ……にーさん!?」


 混沌神に近づいた瞬間、いや、近づけば近づくほどに、おれとサタンが重なっていった。おれとサタンは危機感を覚えて、混沌神から咄嗟に距離を取ったが、身体に異常はなさそうだった。


 なんだ……? あれに近づくほどに一つの存在になってしまうようで……。人と混ざるというのはなんだか気持ちの悪い感覚だ。あんなものからはさっさと離れてしまいたい、おれは心の底からそう思った。


「にーさん……。交わるならもっと雰囲気ムードがあるときにしてよ」


「バカ言ってんじゃねぇよ……。今の、分かってんだろ。外側の力だから想定はしてたが……おれに対しての強制力もあるんだな」


 おれの能力スキルによる“世界からの解放”、それはつまり“理外に至る”ということでもある。しかしながら、そんなおれでも混沌神アイツの力には従わざるを得ない。おれの能力スキルも所詮は最高神(創造神)に与えられたものってことか。


「弱らせて封印する、そうだよな? “2人で同時”には戦えねぇようだが、大丈夫か?」


「誰に言ってんのさ。封印はにーさんに任せていいのかな?」


「当たり前だろ。こちとら世界最高の封印術を体験してるんだ」


 おれは腰から刀を抜いて本格的に戦闘体勢を取った。まともに近づけば、恐らく混沌神あれの一部になってしまうだろう。ならどうする……?


 まずは可能な限りの身体強化を施し、抵抗力を高めてから立ち向かう必要がある。そうすれば、おれやサタンほどの存在をそう簡単に支配することはできないだろう。


 ……いや、“既に他の存在と融合していれば”、その存在が重なることはあるのだろうか。……それが一番の対抗策かもしれないな。


「『融合身体強化バースト』……!」

「サタン! 5分……いや、10分が限界だ。その間にヤツを弱らせて封印するぞ」


「なんでいきなり飛ばすかな……。ま、その方が面白いか」


 時間をかければ力がさらに大きくなってしまうかもしれない。だから最高の力で一気に片付けるのが最善だ。おれは久しい感覚に身体を震わせながら混沌神に視線を向けた。

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