第50話 能力
「あ、そうだ。おれからも一つ聞いておきたいことがあるんだ」
「ん? 何?」
食事を終えておれとサタンの2人で酒を飲んでいるときだった。根源に至る手掛かりを掴んで浮かれていたが、それ以前に確認しなければならないことがある。
「お前の能力を聞いておきたい。人の能力を尋ねるのはどうかと思うんだけどさ、何ができるのかは知っておきたいから」
「ああ、そんなこと? 別に構わないよ。だってボクはにーさんの能力を知ってるんだしね」
そういえばそうだったな。おれは気にしていなかったけれど、いずれ戦うことになるのに片方だけが相手の能力を知っているというのは明らかに知っている側が有利になってしまう。
少なくとも楽しみとして戦いを望んでいるサタンにとっては、そんなことで有利になることは望んでいないようだ。
「ボクの能力はね、『神々の怒り』、自然災害を自由自在に生み出し操ることができるってものなんだ。魔神の一位にしては単純な能力でしょ?」
「……確かに。時間を操るアスタロトや新たな摂理を生み出すルシフェルに比べるとなんか……規模感が違うな。いや、それでも普通の人からすると化け物みたいな力でしかないけどさ。実際おれもヤバい力だとは思うけど……」
災害を操るなんてのは世界を崩壊させてしまうような強大な力ではあるけれど、この世界そのものに干渉しているような規格外さは感じない。まぁ能力なんてものは結局のところ手段の一つにしかならないのだけれど。
「ま、一対一なら結局魔力量と魔力出力量がものを言うからね。そんな中でも君みたいな例外がいるから面白いんだけどね」
「そもそも強力な能力を発動するには馬鹿みたいに魔力を消費するからな。……あ、能力といえばおれ、魔眼と“闇の王”の力? っていうのも聞きたいんだ」
何もない空間から解放された直後、確かアスタロトがそんなことを言っていた気がする。破壊神から授けられた本来の能力とか言っていたか。おれの赤い瞳が魔眼ってやつなのか?
「ああ、あれね。魔眼はまぁ象徴みたいなもんで……。“闇の王”っていうのは魔力とか魔素とか……あるいは念力とか、超常的な力を自由自在に操る者の……“力を支配する”力だよ。あとはその延長で王の力っていうのが力を与えたり受け取ったりする力なんだけど……」
「……あ! セリアから能力を継承できたのはそのおかげなのか? あとは前までできなかった能力の付与とか?」
あのときはセリアもおれもなぜか継承できると思っていたのだけれど、それは本能的に自分の力の可能性を理解していたからだったのだろうか。
考えてみればユリハに渡した魔石だって“能力の付与”という、これまでは不可能だったものを施した代物だ。それが要は“力の支配力”が上がって可能になったってことなのか?
「そうだね。まぁセリアちゃんに関しては彼女が“光の王”の力に目覚めたって理由でもあるんだけど……目覚めたっていうのはにーさんの力に触発されてね。彼女、にーさんと同じ眼をしてたろ?」
「能力が浸透したときに目覚めたのか!!……? じゃあその“光の王”の力ってのも継承してんのかな?」
「そうだね。“力を抹消する”力。……まぁそんな力を持っててもにーさんには意味ないかな。打ち消すのって消耗がすごいし」
……確かに。消耗が激しい力を今更磨く必要もないかな。魔法や能力の発動するときに魔力を乱せば、つまり『反魔法』を使えば似たようなことはできるからな。
でもせっかくセリアから貰った力だし有効に使いたい気持ちもあるな……。でもそうか。きっと“何もない空間”に閉じ込められてる間に精神を鍛えてたからおれは新しい力に目覚めたんだな。
「まぁなんかすごい能力なんだな! それが開眼したからおれは封印前より強くなれたのか!!」
「制限されてた力が解放されただけで別に新しい力ってわけじゃないけどね。だから強くなったのは単純ににーさんの精神が研ぎ澄まされただけだと思うよ」
「えっ……そうなのか?」
「だって“魔眼”だよ? そもそもそれは“見る”力なんだよ。他の人よりも“よく見える”から色んな力の使い方ができるってだけ。開眼してもその見える幅が広がっただけだよ」
…………そうなのか。……確かに筋力が上がった様子はない。魔素の操作力……いや、支配力が上がっただけか……。あとは闇の精霊から引き出せる力も増えたかな。
そう考えるとあまり変わっちゃいないのか。なんか興奮していたのが恥ずかしくなってきた。
「……そうか。じゃあ今日はとっとと寝よう」
「あ、待って待って! にーさん空間魔法……っていうか空間収納の魔法は得意なんだよね?」
「? まぁ得意っていうか……じいちゃんから鍛えられたのがそれだけってだけだけど?」
「“闇の王”の力はさ、次元を跨ぐほどのものなんだよ。少しだけその漏れ出た力があったからにーさんは魔力を使えないときから、つまり魔法を使えないときから空間魔法だけは使えたんだ」
「……? それで?」
「根源に至るのに“果ての地”を探すって手段もあるけどさ、だけどにーさんの力を使えばあるいは……にーさんが“果ての地”になれるよね!!?」
「………………は!?!?」




