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神話の英雄譚/神々の楽園  作者: わらびもち
第六章 襲来
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第48話 意外と

「おかえりー! 思ったより早かったね」


「……お前の方が遅いと思ってたんだけどな」


 グランデュース家の屋敷を出た日の夕方、ミスロンの城に帰るとそこにはすでにサタンが待っていた。おれの部屋で何やら菓子を頬張っている。


 アスタロトを倒すのに時間はかからなくとも、見つけるまでにはそれなりにかかると思っていた。思っていたんだが……。


「アスタロトの方は片付いたのか? もっと時間がかかると思ってたよ」


「獄境にはアイツほど大きな魔力は存在しないからね。探すのはそんなに難しくなかったよ。昨日のお昼には片付いてたんだけどね、にーさんは外出してるっていうから待ってたんだ。……このお菓子は竜帝がくれたやつだからあげないよ」


「別にいらねぇけど。……何か情報は得られたのか?」


「? 情報?」


「“果ての地”のだよ。アスタロトはそれを探してたんだろ? だったら何かしらの情報を持っててもおかしくはないだろ」


 おれ達はこれから手掛かりもない“果ての地”を探しに行くんだ。どんな些細な情報でも得られるものは得ておきたい。だがおれの期待とは反対に、サタンは深刻そうな顔で尋ねてきた。


「……もしかしてにーさんって頭良い?」


「……そうか。お前は思ったより頭が悪いらしい」


 アスタロトからは情報を得られなかった、というかそういう発想にすらならなかったようだ。こんなことならおれが同行していればよかった。まだ何も始まっていないというのに、おれは先が不安になった。


「ま、まぁいいじゃん。ボクとの旅が長くなるんだからさ!」


「それが残念ながらおれはお前が嫌いなんだな」


「なッ……!! そんなこと言わなくて良いじゃないか! それにボクは嫌われるようなことをした覚えはないよ!」


「殺し合いを楽しむような狂人なんて好きにゃなれねぇよ。少なくともおれはそこまでイカれちゃいない」


「にーさんだって大して変わらないでしょ。困っちゃうなー! 自分のことは棚に上げちゃってさー! 悲しい! ボク悲しいよ!」


 やかましいヤツだな。まぁこれくらい変なヤツの方が今は楽だからいいけど……。でもこれから長いこと同行するとなると疲れるな。……慣れるまでは頑張ろう。


「それで、いつ出発するんだ?」


「にーさんがいいなら今からでも行きたいかな。早ければ早いだけいいでしょ? それにほら、獄境は昼でも夜でも暗いから、正直時間帯なんて気にする必要がない……っていうか気にするだけ無駄だからね」


「そうか。……じゃあもう行くか? おれも別にこっちでやることもねぇし……寝るにはまだ早いからな」


「そう? じゃあ城門で待ってるから、準備が終わったら来て。そこで獄現門を開いちゃおう」


「分かった。じゃあやることやったら行くよ」


 おれは空間収納アイテムボックスの中を整理し、部屋を片付けた。この部屋は随分と長いこと空けることになるだろう。帰ってきたころには倉庫にでもなってるかな。


「おーい、グラ! ジルアード!」


「お、エストか! もうすぐ出発じゃろ? また寂しくなるな!」


「おう。ホントに寂しいヤツはもっと抑揚がないんだぞ。知ってたか?」


「そうか! 知らんかったな! まぁ今生の別れってわけじゃないんじゃ。悲しむほどのことじゃない」


 グラは笑いながらそう言った。まぁ実際に会う頻度が低くなるだけだ。確かに悲しむほどのことではない。…………おれが会いに来るのを忘れなければな。


「そうだ、リル。お前はこれからどう過ごしても構わないからな。城で過ごしてもいいし、どっかの森で過ごしてくれてもいい」


 リルにそう伝えると、リルは元気よく“キャンッ!”と鳴いた。城を出ていく気配がないということは城で留守番するということだろうか。おれは満面の笑みを浮かべているリルをワシワシと撫でた。


「じゃあサタンを待たせてるからそろそろ行くよ。おれの部屋は好きにしてくれていいから」


「おう! たまには帰ってくるんじゃぞ!」


 おう、と返事をし、おれはサタンの待っている城門へと向かった。別れは悲しくなかった。むしろこれから待っているであろう冒険への楽しみが、おれの心を支配していた。


「お、にーさん。もういいの?」


「ああ、行こう。……獄境に入ったらまずユリハの城に行かせてくれ。あの子にもちゃんと会っとかねぇと」


「そっか。もちろん構わないよ。じゃあ行こうか」


 そう言ってサタンは獄現門を開いた。魔法でも能力スキルでもない。……おれも門は開けられた方が便利かもな。これを機会にサタンの魔力運用でも覚えておこう。おれは大きくなっていく門をよく観察しながら、足を踏み入れた。

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