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神話の英雄譚/神々の楽園  作者: わらびもち
第六章 襲来
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第46話 迷えど

「ありがとうございます……。それともう一つ相談が……というか意見を聞きたいんですけど……」


「いいよ。話してごらん」


 エリスはしばらくの間、目を泳がせていた。正しいことをしたいけど、何が正しいことなのかが分からない。そんな目をしていた。


「お兄様もお姉様も亡くなって……グランデュース家には私1人じゃないですか。元々私も、冒険者になって、世界を見てから将来を決めようと思っていたんですけど……。グランデュース家を継がなきゃいけないし、父様達にも心配かけたくないから……。でもやっぱり、お姉様達がどんなものを見ていたのか、冒険者になって確かめてみたいという気持ちもあるんです」


 上の2人が冒険者として力を付けたがために死に、それゆえに迷いがあるのか。エリス自身はその辺りの覚悟はできているようだけれど、もしものことがあったとき、両親の気持ちを考えるとそれはやめておいた方がいいのではないか、そう考えているようだ。


「……そうだね。ダルゲートさんもティアさんも、もちろんおれも、正直エリスが冒険者になるっていうのを止めたい気持ちはあるよ。グランデュース家の跡取りがいなくなるとかそういうことじゃなくてね、やっぱ危ないからさ」


「……そう……ですよね」


「でもね、危険な道を歩くことは、人生において必要なものでもあるんだ。おれもセリアも、これまでたくさん危険な目にあってきたけどさ、正直それ自体には嫌なことは思わないんだよね」

「だってそれは自分の成長になるし、周りの人達の成長にもなるし。君に危険な道を歩ませたくないっていうのは確かだけど、君にも険しい道は歩んでほしいかな。だからおれ達はさ、“君のやりたいようにやりなさい”としか言えないんだ。おれ達には君の人生を決めるような力は持たされてないんだから」


「…………」


 結局、己の人生を決めるのは己自身だ。他人がどうこう言おうと、それは他人の人生を決めるだけの力は持たない。本人が迷って決められない道があるのなら、それはたとえ親であろうとも迷って決められない道なのだ。


「ま、さっきも言ったけど逃げたって構わないんだ。恐いことからも、責任からも逃げていい。決めたことからだって逃げていい。だから今は、今やりたいと思うことに決めればいいよ」


 おれはそう言ってドアノブに手をかけた。エリスのことはエリスが決める。おれはただヒントを与えるだけ。ただそれだけだ。


「義兄さん!」


「ん?」


「明日……私の特訓、見てくれませんか?」


「ははっ。構わないよ。……明日だね、楽しみにしてるよ」


 おれはエリスにそう返事をして、部屋を出ていった。この日の夜はグランデュース家でご馳走になり、その後は空いている部屋で夜を過ごした。


 どんな話をしていても、美味い飯は美味い。おれも料理の腕は磨いておこうかな。おれも2000年間自分で料理してきていたけれど、なかなか思うように上達はしなかった。


 このまま趣味もなく目標も……はとりあえずあるけど、当分を獄境で過ごすにしても何かしらやりたいことは見つけておきたい。ただ生きるというのも、つまらないから。それに死人のように生きるよりは、人として生きていた方がセリアに再会したときもあれこれ言われずに済むしな。


***


 まだ朝日が昇る少し前、おれはエリスに屋敷の庭まで連れ出されていた。昨日約束したけれど、まさかこんな早朝からやることになるとは……。エリスはおれが朝に弱いことは知らないからな。仕方ないと言えば仕方ない。


「よろしくお願いします!! 義兄さん!」


「あ、ちょっと待って。せっかくなら剣でやろう」


 おれはそう言って炎で剣を作り出した。あんまり体力が消費される感じはない。これまで少しずつ慣らしていたからなのか、とにかく身体に馴染んでいる感覚だ。……ただまぁ、未だにセリアのように美しい剣は作れず、剣の形を模しただけの炎といった具合だ。そしてその剣を左手に持った。


「!? 綺麗……ですね……。まるでお姉様のみたいな………」


「これはセリアから貰った力だからな。元々あったおれの力と混ざって少しだけ変わってるけど」


「へぇ…………。……? 腰に差してる剣? は使わないのですか?」


「ん? ああ、これは刀だな。これはちょっとなぁ……。ただの特訓に使うには凶暴すぎるから」


 鬼火舞おにのほのまいを使っては何もかもを焼き尽くしてしまう。少なくとも、エリスに対して使うにはあまりにも凶暴な刀だ。


「じゃあ……行きますよ」


「おう、どこからでもかかってこい」


 エリスはセリアと似た構えで剣を向けた。彼女の剣先はおれの喉を狙っている。……悪くない。対するおれは堂々と立ったまま剣を軽く握り、“お前の攻撃は全て受け止めてやる”と言わんばかりに構えた。

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