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神話の英雄譚/神々の楽園  作者: わらびもち
第六章 襲来
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第41話 災害

 あれから1週間が経った。魔神の脅威もまだ残っているため、国民が帰ってこれるのはまだ少し先になりそうだ。街は崩壊しているし、ただでさえひび割れていた大地が、数日間の雨で随分と滅茶苦茶になった。


 セリアが戦っていた場所は、未だに炎の熱が冷めずに残っていた。それだけ激しい戦いだったのだろう。


「ただいま」


「ん? エスト、お前どこに行ってたんじゃ?」


 城に帰ると、グラとジルアードがいた。色んな国と連絡を取って、他国の状況を調べてくれているらしい。


「セリアの剣が残ってるんじゃねぇかと戦ってたところに。どこにも見当たらないし、大地の割れ目も探してみたが……この前の雨で海底まで流されちまったのかもしれねぇ」


「…………もう大丈夫なのか?」


「大丈夫なもんか。でもいつまでも籠ってるわけにもいかねぇだろ。まだ油断するわけにはいかねぇし、早いとこ能力()にも慣れなきゃならねぇ」


「無理はなさらないでくださいね」


「お前こそな」


 今回の戦いで討ち取ったのは第四、第五、第六、第七の魔神だ。それに対して、こちらはセリア、デモンゲート、パルセンダを失った。


 イリアはなんとか命は繋いだものの、全身に深い傷を負って戦士としては再起不能、ジルアードも同じく、グラは持ち前の再生力でなんとかなるようだ。おれがこのことを知ったのはつい数日前であるが、グラが気を利かせて伝えるのを遅らせてくれたらしい。


 それで被害が変わるわけではないけれど、精神が回復してからでなければ……いよいよ狂ってたかもしれない。


「おれは少ししたら獄境に行ってこようと思う。注意するべき相手は第三の魔神(アスタロト)だけだし、そうなればアイツはそう簡単にこっちに手は出さないはずだ」


 本来最も注意すべきは第一の魔神なのだろうが、それがここまで不干渉の姿勢を貫いている以上、変に気にするのはかえって危険だ。……どう転んでも一度くらいは会っておきたいけれど……。


 少なくともこちらに害を与えてこないのなら、わざわざ相手にする必要もない。


「その辺りはお前に任せる。万が一現世(こっち)に出てきたときのためにいつでも戻れるようにしておけ」


「わかった」


「それはそうと、一つ確認しておこう。エストお前、魔神との戦いが終わった後、どうする? この国に残るか?」


「………。おれはおれが手伝えることなら手伝いたい。でも正直……ここには残りたくないかな。セリアのことを忘れたいわけじゃないんだけど……セリアのことを思い出すとすげぇ苦しいんだ。……ここにいるとセリアとのことを思い出しちゃうから。良いことかもしれねぇけど、今のおれにはやっぱり…………」


 いずれ心が回復したら、そのときはどうか分からないけど、少なくとも今は、できるだけ色んなことから離れておきたい。やるべきことを終えたら、何も考えないで、どこか遠くに……。傷心旅行ってとこかな。


「そうか。まぁ好きにしろ」


「……自分で言っててなんだけど……良いのか?」


「国を始めたとき、元々お前はいなかったじゃろ。お前は国王でもないから、別にどこに行こうと咎められるものでもない。ただ、たまには帰ってきて、儂らに会いにきてくれればそれでいい」


「……ありがとう……」


「私もついていきましょうか?」


「……お前、デムに似てきたな、ジルアード。おれは一人がいいんだ。お前はグラと協力してくれ」


 初めて会ったときはこんな性格ではなかったのに……。従者としては良いっちゃ良いけど……おれの気持ちは汲んでほしいな。


 でも、こういうバカなヤツがいた方が楽なときもある。感謝は忘れないようにしないといけないか。


 そんな、心が多少安らいだときのことだった。


「ッ!?」


「? どうした?」


 グラもジルアードも気づかなかったようだ。いや、おれもなんとなく察しただけに過ぎず、何が起こったのかは理解していなかった。けれど確かに、今この瞬間、世界の何かが変わった。このときはまだ、何か分からなかった。


「……なんか一瞬変な感じがしたんだけど……気のせいだな。疲れてるのかもしれねぇや。悪いけど、今日も休ませてもらうよ。セリアから継承した能力スキルがまだ馴染まないんだ」


「そうか。しっかり休めよ。……ヤケ酒はするなよ」


「しねぇよ。……飲んだとしても昼間っからは飲まねぇからな」


 そう言っておれは部屋に戻った。“斬る炎”を指先に出す簡単な特訓をしながら、時間を潰した。


 セリアのものほど美しい炎ではないけれど、荒く強い炎だった。アスタロトが言っていた破壊神から受けた能力スキルも完全に覚醒し、能力スキルを発動するだけでも今まで以上に疲れるようになっていた。


「…………ッ!?」


 しばらく力を試していると、外に異様な雰囲気を感じた。何者かの魔力が、現世の外側、つまり獄境から溢れて出てきていた。


 獄現門は開いていない。なのに、魔力が世界の壁を貫通しているようだ。おれは窓を開き、外に飛び出した。しかし……そんなことがあるのか? あったとして、それではまるで……。


「グラ!!」


「ああ、儂も分かっとる! 何者かは分からんが……こっちに向かってきてるな……!」


 構えていると、空に穴が空き、そこから1人の少女が現れた。異常なほどにデカい魔力を持っていた。


 例えるなら、アスタロトは山のような魔力であったが、コイツは荒れ狂った大海原のような、まさに魔力だけで災害を引き起こすような大きさだった。


 けれどそれ以上に……おれは一度、彼女に会ったことがある。なぜ気づかなかったのか。こんな超常の存在に。


「にーさん! 久しぶりだね! だいぶ強くなってるみたいで良かったよ!!」


「見当はつくが……一応聞いておこうか。何者だ? アンタは」


「神の子……ってのはナシか。ボクはサタン。第一の魔神・“憤怒”のサタンだ。今日は話し合いに来た」

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