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神話の英雄譚/神々の楽園  作者: わらびもち
第六章 襲来
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第36話 理想郷

「うおらァあああ!!」


「——ッ!!」


  一撃、デモンゲートの拳がマモンの額に直撃した。額からは血が流れ出し、その衝撃がデモンゲートの拳にも反射した。瞬時に“反射する”能力スキルを発動したのだろうか。


 拳の骨は砕け、こちらもまた血を吹き出した。しかしそれと同時に、マモンは高く笑いながら右腕を天に突き上げた。


「“無月の夜(ナイトメア)”!!」

「『巨神兵タイタン』!!!」


「なッ……!?」


 マモンの背後から大地を引き裂いて現れたのは巨大な、それは巨大な上半身だけの石像であった。いや、石だけではない。鉄も木も、溶岩や炎も氷も纏った魔像ゴーレムであった。


 マモンの異常なほど巨大な魔力を纏って、それはマモンが拳を下ろすと同時に巨大な拳を振り下ろした。大陸に亀裂が入り、伝うもの全てが破壊されるようだ。地面に脚をつけていたデモンゲートは、脚が完全に壊れてしまう前に空へ上がった。


「ッ——!! なんだそれはッ!!」


「見れば分かんだろ。ゴーレムだ」


 ゴーレムはマモンの動きと連動しているようだ。つまりデカいからといって鈍重というわけでもない。


 欠点……欠点と言えるかは分からないが、弱点になり得るとしたらその場から移動することができなさそうなところであるか。


「俺様が2つ以上の能力スキルを同時に発動できないってのは正しくねェな。同じ系統の能力スキルならなァ……多少無理すればイケんだよ!」


「ぐッ……!!」


 マモンは力強く右腕を振ると、ゴーレムの右腕がデモンゲートに直撃、両腕で防御をしたが、そのまま全身の骨が砕けて吹き飛ばされた。


「がはッ……! ッハァ……ハァ……! くッ……そッ!!」


 デモンゲートは何とか身体を起き上がらせて息を整えた。骨の何本かが内臓に刺さっていた。これ以上動いたらいよいよマズい。


 けれど動かなければ……それ以上にマズい。意を決してゴーレムに向かって飛んでいった。何を守るのか、命か? いや、それは違うだろ。


「何をする気だァ!!?」


「…………」


 接近中、デモンゲートは冷静にゴーレムの腕を観た。今残されている力ではどれだけ止められるか分からない。だからこの腕が触れる直前に、時間を止めて主を叩く。彼はこれまでにないほどに静かだった。静かに、ゴーレムの石の腕が頬に触れた瞬間……!


 見事に時間は停止した。だがそれはほんの一瞬、十分の一秒にも満たないほどのほんの一瞬の停止時間、デモンゲートはマモンの正面に現れた。


「!? ッ……止めたかッ!!」


 時間停止が通用しないとなってから、常に身体を強化して戦っていた。能力スキルの応用ばかりで、基本的な運用を、相手は忘れていたのかもしれない。デモンゲートは持てる全ての魔力を脚に集中した。最も損傷が少なく、最も力を出せる脚に。


「『堕天メテオ』ォ!!!」


 デモンゲートの、脳天からの踵落としは、マモンの頭を、そして大地を割った。彼自身の脚も砕け、空を飛ぶ魔力も残っていない。今まさに地面に落下しようとしたとき、頭上から巨大な拳がデモンゲートを地面に叩きつけた。


「あッ…………がッ……!?」


「今のは…………痛かったな…………デモンゲート。死ぬかと思ったぜ…………」


 頭を割りながらもかろうじて意識を保っていたマモンが、デモンゲートの身体を大地に潰した。しかし残りの魔力も半分を切っており、ゴーレムの身体も少し崩壊していた。


「…………ッ!?? 何だ!?」


 瞬間、一帯は何か異様な雰囲気に変わった。当たり前に、場所は変わっていない。環境が変わった。真っ黒の巨木がいつの間にか生えており、そのうちの何本かはすでに折れている。


「『理想郷ユートピア』……!」

「ありがとう……デモンゲート。これだけ削ってくれりゃあ俺の世界に引き摺り込める」


 イリアは全ての魔力を使って能力スキルを発動した。想像イメージの具現化、それは具体的でなければまともに発動しない。つまり理解の及ばない力を引き出すことはできない。


 が、それはあくまでもイリアが力を引き出す場合のことだ。記憶に強く刻まれているものであれば、その“状況の再現”をすることができる。理解の及ばない力でも、その記憶が鮮明であるなら、それが可能なのだ。


 この技の欠点を挙げるとするならば、新たな世界を一時的に展開するようなものなので、魔力の消費が半端ではないことだ。そして、魔力量がかけ離れた者はその世界に引き摺り込めないという点だ。


「俺が唯一、心の底から憧れた人の技だ。こんな大規模な技は……忘れようとしても忘れられないからな……よぉーく覚えてるぜ……!」


「なッ……お、お前は……!!」


 イリアの能力によって、1人の男が出現した。それは過去の人物の再現であるため幻影とでも表現した方が正しいが。


 男は大陸中の魔素を右手に集め、それを圧縮して小さな球体を作り出した。異常な量の魔素でできた、異常なエネルギーを有している球体だ。これが爆発してしまえば、島でも山でも、海でさえも消し飛ぶことだろう。どう使ったって自爆にしかならない。


 しかし、能力スキルによって生み出された男も、イリア自身もそんなものに怯えるような者ではなかった。


「マズいな……ゴーレムよ! 俺を守れ!!」


 マモンは背後にいた巨大なゴーレムを鎧のように身に纏い、残る全ての魔力を防御に回した。そして男は魔素の球体を握りつぶし、石の塊にぶつける。


 魔素の爆発さえも圧縮し、世界規模のエネルギーは街一つ分の大きさに集約された。


「『煌魔天ステラ』!!」


「ッ———!!!!!」


 魔素の爆発は大気をも燃やし、展開された世界を崩壊させた。マモンの鎧も砕け散り、防御など無意味となった。


 かつて最強の三界を屠り、第二の魔神(ルシフェル)をも消し飛ばそうとした一撃だ。攻撃を向けられたマモンも、それを利用したイリアも死の直前に立たされていた。


「かッ……ハァ…………楽しかったなァ……。続きがねェのが……残念だ」


「地獄で娯楽でも見つけるんだな……」


 マモンは最期に呟いて、肉体は塵になって消滅した。イリアも身体はボロボロであった。全身に深い火傷を負い、左耳と左腕の肘から下は消し飛んでいた。ある程度の距離は取っていたのに、それでもなお酷い重傷であった。


 まったく、アイツはこんなもんを使ってたのか。無茶をしやがるぜ。彼女は小さくそう呟いた。


「なぁ……おい、デモンゲート……。目ぇ開けろよ……。お前が死んじゃあ、エスト達(アイツら)に顔合わせられねーじゃねーかよ……」


 イリアは誰もいないところにただ一人、もう一度呟いた。そして緊張が解けたのか、バッタリと地面に抱きついた。彼女もすでに意識を保てる状態ではなかったから。


 戦闘が終わったことを感じたウーラリード達がイリアを安全なところに運ぶのは、この数分後のことである。

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