第26話 留守番
「ただいまー! 帰ったぞ!!」
「おかえり! 思ったより早いかったね!」
ミスロンの王城に帰ってきたおれは、セリアのいる執務室へと向かった。そしてソファに座り込んだ。
「お疲れ? 時間巻き戻してたでしょ。」
「ああ。ほんのちょっとだけなんだけどやっぱり疲れたよ。世界全体に干渉する術は気をつけないとな」
「どんな話してきたの? その様子だと良いものじゃなかったのかな?」
「仲間にならないかって。当然断ってきたけどな。そしたらアイツら現世に攻め込もうとしたもんだから時間を戻したんだ。そのときにリヴァイアサン、第六の魔神は殺しておいた」
「!? ……はぁ……また無茶して……。あのね! そんなことしてもし戦いになったらどうしたの!! 1人で戦っても大丈夫とでも!!?」
「いあ……すいあへん。ひょっとひょうひいおってしあいあした」
おれはセリアに両頬を引っ張られながら説教を受けていた。痛……というほどでもないけどなかなかお怒りの様子だ。……仕方ないか。
「はぁ……まぁいいわ。結果オーライだしね」
「いいならつねらないでくれよ」
「……」
「すみません冗談です」
もう下手なことを言うのはやめておこう。殺されかねないからな。
「セリアは何してたんだ?」
「エストのことと魔神のことで世界中から連絡が途絶えないのよ。近いうちに集まることになるからそのつもりでいてね」
「集まるって……誰が?」
「主要国の代表や組織の代表達がね。あとは五法帝……じゃなくて今は四法帝か。そうなったらもちろんエストにも来てもらうわよ。グラとデムは残していくけど」
「ふぅーん。ま、集まるのは早い方がいいかもな。魔神達もすぐには動かないだろうから」
ヤツらは作戦を考えるはずだ。反応からするにおれの力が想像以上だったっぽいから、すぐに襲撃しようとは思わないだろう。ただ一つ怖いのは、相手はいつでも攻撃できるのにおれ達は何もできないという点だ。どうしようもないというのがすごく怖い。
「国を空けるのが心配よね……。グラとデムを残しとけば大抵のことはなんとかなると思うけど……何しろズーザミアのことがあったから」
「……ギルバートさんは戦力に数えられないのか?」
「兄様は私が召喚してるから力を使うと私の魔力が消費されちゃうのよ。私は実験的な召喚だったから効率も良くないから……まず戦えないわ」
「…………あ、じゃあアイツら使えばいいじゃん。おれが話してくるよ」
「アイツら……?」
おれはセリアと話を終え、その地へと向かっていた。どうも使わない道だから迷ってしまいそうだ。地図でしっかりと確認しながら道なき道を進んでいく。
獄境から仕入れた魔障石を使っているから魔力を感じないのだろうな。魔力を感じられたら道を確認する必要もないのに……。まぁ仕方ないか。おれは静かにその建物に入っていった。そして、彼らの前に椅子を置いて座った。
「…………」
「これはこれは……何の用ですかな? 大魔王様よ」
「おれが聞いてないのに口を開いてんじゃねぇよ。隣のパルセンダみたく静かにしてろ」
「これは失敬。しかしこんな所に来るとは、私に用があるのでは?」
「……お前ら、牢屋の中にいても暇だろう。魔神達の動きを考えて、お前らには国を守ってもらおうかと思ったんだが……」
「魔神……ですか?」
ああ、そうか。コイツらは知らないのか。おれは魔神についてざっくりと説明した。そして近いうちに国を空けるであろうことを。
「なるほど……しかし、いいんで? 悪人を解放してしまって」
「おれは善だ悪だと語れるほど偏っちゃいないからな。何よりおれが面倒を見ていれば大抵のことは許されるだろ」
「ふふ……それは最高ですな。……私は貴方についていきましょう。この命尽きるまで、私は貴方に忠誠を誓います」
「忠誠は誓わなくていいんだバカやろう」
「いいえ、貴方様に命を捧げます」
あぁ…………厄介なもんだ。“誓い”ってのはかなり重い条約だ。主の方は縛りは受けないけれど、従者の方は言葉の通り命を賭けることになる。おれからしたら……まぁ構わないとして……なぜデムといい、こう変なヤツになってしまうのか。
「はぁ……分かった分かった。お前はどうだ? パルセンダ」
「私は冒険者です。依頼であるならお受けしましょう」
「お前も面倒な性格だな。……報酬は……そうだな……グラとデムに傷を負わせた罪は帳消しにしてやろう。ただの留守番としては充分だろ。国に手を出したことまでは許す気はない」
「……承知しました」
勝手な報酬かもしれないが、まぁデムは怒らんだろう。おれが許したと言えばな。グラはバカだからこのくらいは大丈夫なはずだ。
「じゃあまた来るから、そんときまではしっかり反省しとけ」
そう残しておれは監獄を出た。来なかった方が良かったかもしれない。なかなか厄介なことになったけれど、まぁ……まぁまぁ。背に腹はかえられないからな。不安は残りつつも、おれは城に帰った。




