第24話 異次元の才能
「それにしたって……エストって本当に体力なくなってるのね」
「まぁ無茶すりゃ動けるんだけどな。体力がないってよりは肉体が脆くなってるって感じか」
「……やっぱり心配よ。明日はまだいいとして、これから魔神と戦うってなると……」
「ほら、昇華が解けてるぞ」
「あぁーもう!!」
座りながら剣に炎を流しているセリアと会話していた。セリアの能力は簡単に言えば“炎の剣術”だ。今やっているのは昇華した状態で、落ち着きを保ったまま扱えるようになるための特訓だ。
そして夜も更け、足元を走り回っているリルに夜ご飯を与えながらセリアを見守っていた。浸透を習得する上で最も重要なのは慣れだ。始めは集中力も大事だが、その状態を自然体にする必要がある。
「……ねぇ、エストはどれくらいで浸透したの?」
「おれ? おれはまぁ……100年くらいかな?」
「ひゃく!? んん………私できるかな……」
「そんなに気にしなくていいよ。おれは急いでたわけでもないし、セリアはおれよりも才能あるから」
「えへへ……そう?」
「ああ。だから心配すんな」
お世辞ではない。セリアは才能で見れば確実におれの比ではない。18歳で昇華させて20でかつてのバンリューに匹敵し得る強さなのだから。浸透も近いうちにできるだろう。
おれがしっかり鍛えてやれば、いずれはおれをも超えられる可能性だってある。そう考えると、どうも楽しみなものだ。
「今日はもうここらでやめにしよう。明日獄境から帰ってきたらまた見てやる」
「よし……分かった」
セリアは昇華状態を解除して一息ついた。夕食を食べ、部屋へ行き眠りにつく。随分と身体にくる1日だった。
***
「じゃ、くれぐれも気をつけるんじゃぞ。もし身に危険を感じたらすぐに逃げて来い」
「おう、心配すんな」
おれ達は獄現門の前に来ていた。魔神どもに会うためだ。戦いに行くのではなく話し合いに行く。だからそこまで心配をする必要もないのだけれど、相手が相手なだけにそうもいかないようだ。
「じゃあ行ってくるよ。飯の準備でもしといてくれ」
「ええ。行ってらっしゃい」
セリアも忙しいだろうに……見送りなんて来なくてもよかったんだけどな。まぁ忙しくてもそれくらいの時間は取れるのか。
おれはみんなと別れて門を潜った。門を通ると、そこにはフリナとユリハが立っていて、その隣に見慣れない馬車も置いてあった。アレが使者ってことだな。
「話は聞いてます。おじ様、くれぐれもお気をつけてくださいね。あちらの馬車が運んでくれるそうです」
「そうか。わざわざありがてぇもんだな」
おれはユリハの頭を優しく撫でながら少し皮肉気味にそう言った。あれが手紙に書いてあった使者か。馬車を引くのは馬……ではなくてケンタウロスだな。奇妙なもんだ。
こんなものを用意するってことはそれなりに遠いのか、それともコイツが転移術でも使えるのか。まぁそんなことは考えたってどうしようもないな。
「気をつけろよ、エスト。危なくなったら気にせず逃げてこい」
「ははっ。グラにも同じこと言われたよ。ありがとな、フリナ。ユリハもまた今度遊ぼうな」
「はい! いつでも来てください!!」
馬車はゆっくりと走り出した。いや、そう感じただけで割と速いのかもしれない。揺れが少ないから速度を感じないのかな。
「ケンタウロスよぉ、アンタ誰かの部下なのか?」
「私の主は“嫉妬”のリヴァイアサンにございます。貴方に手紙を出した方です。とはいえ、あれはただ適当に代表を決めただけですけれど。……到着致しました。どうぞお降りください」
……え、もう? いくらなんでも早すぎないか。そこまでケンタウロスも速くないだろ。魔神達の魔力も今の今まで一切感じなかったのに……でも今は確かに感じるな。5つの異様な魔力が。
「? なんだここ?」
「世界の狭間、現世と獄境の間の空間です。このまま進まれましたら獄境のとある場所へと転移させられます。そこに魔神の皆様がおられます」
「そうか、ご苦労だったな」
おれはケンタウロスに言われたままに無い道を進んでいった。真っ黒いような明るいような、そんな空間を1分にも満たない間歩き続けた。
すると一瞬、周りが光に包まれたかと思えば、目の前には5人の魔神が席に座って待っていた。
「おぉ〜、来たか。待ってたぞ、ネフィル=エスト」
「……」
正面に座った、一層大きな魔力を持った男がそう話しかけてきた。おれは待たせたな、とだけ放ち、目の前の空いている席に座った。




