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神話の英雄譚/神々の楽園  作者: わらびもち
第三章 旅行
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第16話 教官

「……つまり、公表するつもりはないと?」


「ああ。まぁ公表しないとマズい事態になれば話は別だけど」


 イリアから一通りの罰を受け終わったおれは、これまでのことを軽く説明した。なんかもう……人に会うたびに説明するのも面倒だな。その点では世界中に公表しちまった方がいくらか楽かも知れない。……そんな理由で公表はしないけど。


「そうか。ま、好きにすればいーんじゃねーか?」


「言われなくたってそうするよ」


「テメーは! いちいち返事がウザーんだよ!!」


たた! ちょっ……頬をつねるな!!」


 まったく。いちいち噛みついてくるのも昔から変わってないな。これじゃあ落ち着いて茶も飲めねぇよ。……いやまぁ悪いのは全面的におれだけどさ。


 すると、落ち着きを取り戻したイリアはそっと口を開き、静かに声を発した。


「……2000年か……。……退屈だったろ」


「そうでもねぇ……っていうと嘘になるな。でも案外楽なもんさ。結局は《《今》》が全てだからな」


「ジジーになって達観したか?」


「ジジイじゃねぇよ! 人間換算すればまだまだ若者だってんだ!」


「2000年はどんな種族でもジジーだよ! 俺はまだ20代だからな!!」


「だったら年長者を敬いやがれ」


 まったく……なぜこうなってしまうのか。隙あらば攻撃してきやがって。おれはまだ若いんだ。ジジイなんて言われるほど……歳はとってるけどとってねぇ。


「……2000年も生きてりゃ強くなったろ?」


「そりゃあもう……。昔とは天地の差があるさ。すぐ疲れるけどな」


「……疲れるなんてもんじゃないでしょ。ホントに無茶しちゃダメだからね」


「? なんだ。後遺症でもあんのか?」


「まぁ……死ぬつもりだったからなぁ。肉体も神経も使いすぎると酷く疲れる……っていうかもはや死にかけるんだけど。まぁそれでもマシなもんさ」


「おいおい、せっかく生き延びたんだ。大事にしやがれ」


 おお……珍しくまともなことを言うな。ちょっと感動だ。まぁ……ここまで生きてきたらそこまで生に執着しないけど。


「オメー、また俺のことバカにしただろ!」


「してないよ! ……いや、したけど! なんでそう決めつけるのさ!!」


「してんじゃねーか!! 顔見りゃあだいたい分かんだよ!」


 やっぱダメだ。この場にいたらいつ殺されるか分かったもんじゃない。生存報告も済ませたしさっさと出てしまおうか。


「……で、オメーらこの後はバンリューに会いに行くのか?」


「ええ、そのつもり」


「どこにいんのか知ってんのか?」


ハーラン大陸ってことは知ってるけど……」


「そこのハルノトって街のギルドで教官をやってるらしいぞ」


 ……バンリューが教官……!? “最初からできるから教えられない”なんて言うような男だぞ? そんなヤツが……まぁどうするも自由か。……でも意外だな。


「あの人“俺は天才だから人には教えられない”って言ってたのにね」


「セリア、それはちょっと誇張表現だぞ」


「冒険者も引退して暇なんだろーな。……今でもそこらの冒険者よりよっぽど強いだろーに」


 ……バンリューはまだそれなりに強いのか。……そりゃそうか。あんな化け物みたいなヤツがそう簡単に弱くはならねぇよな。


「じゃあそろそろ行くか。またな、イリア。何かあったら呼んでくれ」


「こっちの台詞セリフだバカやろー。もう死ぬなよ」


「心配すんな。普通は2度も3度も死にはしないもんだ」


 イリアが手をひらひらと振るのを見て、おれとセリアは部屋を出た。ハルノト……ハーラン大陸か。ちょっと遠いけど……まぁ色々と観光しながら行くか。……いや、リルに乗ってったらすぐ着く気もするな。大陸のどこらへんにあるのかにもよるけれど、2、3日もすれば着くことだろう。


「今日はこの街に泊まっていこう。リルも今日は休もうね」


「そうだな。じゃあちょっと散歩でもしようよ」


 おれ達は宿を取り終え、街をふらついた。夜になるまではまだ時間がある。やや離れたところにある小さな山を登り、開けたところで寝転がった。


 目を瞑って草の生えた大地に身を任せる。腹に乗って寝ているリルと、遮るものもなく当たる日の光が暖かい。瞼を越えて目に入る光が、急に遮られた。


「だぁーれだ!」


「……誰って……セリアしかいないだろ」


「あははっ。せいかーい!」


 セリアは笑っておれの目元から手を離し、それと同時に隣に寝転がった。何だかテンションが高いな。だがそれも、昔のセリアを見ているようで嬉しくなった。国を出て、いい加減責任感から解放されたという感じだろうか。


 しばらくし、空は赤く燃え始めた。そろそろ日が暮れ、夜になろうという具合だった。

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