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神話の英雄譚/神々の楽園  作者: わらびもち
第三章 旅行
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第15話 お尋ね者

「長い白髪に赤い瞳……誰かさんにそっくりな特徴が書いてるわね? この人相書き」


「いやぁ……誰でしょうね。まったく」


 イリアのいるビロンまで駆け抜けてきたおれ達は、ギルドの食堂で昼飯を食べていた。そんなときに、ギルドに貼り出されていた人相書きをセリアが見つけてしまい、ミスロン国へ行く前のいざこざがバレてしまっていた。


「はぁ……まぁ起きたことは仕方ないけどさ。よくこれで顔隠さなくていいなんて言ったわね?」


「……確かに危なかったかも。むしろこの辺だったらセリアよりも顔を隠さなきゃいけないかもな」


「…………で、エストは悪いことしたの?」


「まさか。ちょっと巻き込まれただけだよ。それなのにまるで悪者みたいに言ってよ……」


「そう。じゃあ潰しとく?」


「それは気が早いってセリアさん」


 セリアってこんなに好戦的だったっけ? ただ本当にそんなことをされても困る。そんな……クランを壊滅させようとするほどのことでもないだろうに。


 まぁさほど本気では言ってないだろうけど、不服そうなセリアの顔を見るに冗談ってわけでもないのかも知れない。


「パルセンダね。あの人、前から気に入らないのよ。なんであんなのが法帝ほうおうになったのか」


「あまり大声で喋らないでくださいって。いくらパル……なんとかの支配地ではないからって、アイツ悪口にうるさいんだから」


 外套で顔を隠していても、法帝ほうおうに対して強く言っていると流石に視線を集める。ここはさっさと出てイリアに会いに行った方がいいかな。


「そろそろ出よう。人も増えてきたから」


「ん。そうね」


 顔がバレるとマズい。おれはセリアを連れてギルドを後にした。これからイリアに会おうと思ったが……。


「イリアのクランはどこにあるんだ?」


「クラン“幻想”、街の中央に行けばあるはずよ」


「……あんま考えてなかったけどさ、急に行っても会えるもんなの?」


「なんとかなるでしょ」


 あぁ……なるほど。セリアも考えてないんだな。まぁなんとかなると言うならなるのだろう。


 おれはセリアの横に並んで街を歩いていった。なかなかいい街だな。静かたさだけれど活気がある。冒険者の治安も良さそうだ。イリアが頑張っているのか、ここの領主がしっかりしているのか。……イリアはそんなに頑張ってないだろうな。たぶん大事なことは仲間に放り投げてるだろう。


 でも法帝ほうおうが街にいるというだけでも安心して暮らせるというのはあるかもしれない。


「おぉ…………なんか……クランの本部ってどれも似たような建物なのか?」


 “幻想”のクランは、昔見た“煌焔”と似たような建物であった。強いて言えば階層が多いくらいか。


「そんなこともないわよ。まぁ冒険者だからギルドに似るっていうのはあるかも知れないけどね」


 あぁ、なるほど。ギルドに似ているのか。構成を一から考えるのも面倒だろうしな。そう考えると納得だ。おれ達は話を終えるとクランへ入り、受付へと進んだ。


「イリアに会いたいわ」


「……ご予約はなかったと思いますけれど?」


「ええ、ないわ」


「……あの、失礼ですが、予約のない方に会わせるわけにはいきません。それになんだか……その……怪しいですし」


 ……顔が見えないような服を着ていればそりゃあ怪しまれるよな。それなのにセリアは遠慮せずに要求するから、相手が不審に思うのは当然のことだ。


 どうするのだろうか、そう思ってセリアへ目をやると、懐からギルドカードを取り出していた。


「……!!? EX(エクストラ)……!?」


「深くは聞かないでほしいわ。急で悪いのは承知だけれど、会わせてくれる?」


「も、もちろんです! 少々お待ちください!」


 受付の子はそう言って奥に走っていった。おれ達はその場に取り残され、おれはセリアに話しかけた。


「……セリア、EX(エクストラ)ランクになってたの?」


「1年前くらいにね、バンリューが認めてくれたの」


「へぇー。じゃあ昔のバンリューくらい強くなってんのか?」


「そこまでじゃないわよ。ただまぁ……今なら1人でも、侵界クロワールとなら戦える程度と思うわ。たぶん」


「そりゃスゴいな! たった2年でそれだけ強くなったのか!」


 時間もあまりなかっただろうに……たった2年で何倍も強くなったのか。どんな気持ちで、どんな特訓をしていたのか……興味深いものだ。…余裕があるときに手合わせでもしようかな。


「お待たせしました。こちらにお越しください」


 奥から帰ってきた声に従って、おれとセリアはイリアのいる部屋へと向かった。なかなか圧のある魔力だ。こっちも2年で強くなってるんだな。おれ達は重い扉を開けて最古参の法帝ほうおうと相対した。


「イリア、久しぶり」


「おう。セリア、オメー急だな! ……と、ソイツは?」


「おれだよ。2年ぶりだな、イリア」


「……!!?」


 おれはフードを取って顔を見せた。あまり変わっていないな。相変わらずの生意気そうな顔で……。


「テメー! 今失礼なこと考えただろ!!」


「痛ッ! ちょっ……痛ぇッ! いいだろ!! 別に! 蹴るな!」


「生きてんなら黙ってんじゃねーよ!! テメー! この……テメー!!」


「悪かったけどそのやりとりはもうやったんだよ! 痛いから! やめて!!」


 何度も何度も蹴ってくるイリアを宥めようとするもなかなか上手くいかなかった。セリアに助けを求めようにも笑っているだけで反応してくれない。


 おれは諦めて蹴られることにした。痛いけれど、2年分の罰だと思えば大したことはなかった。……いや、なんとか我慢することはできた。

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