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神話の英雄譚/神々の楽園  作者: わらびもち
第二章 魔界・ミスロン王国
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第11話 忠誠

「魔族達はどんなもんなんだ? 上手く統治はできてんのか?」


 おれはユリハとフリナに尋ねた。元々魔族は人間を滅ぼすために現世にやってきたようなものだ。魔神が、三界や魔王が全員討たれたことで静かになるものなのだろうか。いや、ユリハ達が頑張っていることを否定するわけではないけれど。


「魔族達にはですね、協調だとか正義だとかっていう考えはないんです。彼らが持ってるのは本能だけなんです。だから本能的に持ってる“強者への忠誠”っていうのは何よりも信頼できるものなんですよ」


 だから私達には反抗はしませんよ、と、そういうことだ。確かに本能ほど信頼できるものはないかも知れない。本能とは、揺るがないものだから。


 三界だって、2000年間常に魔神に忠誠を誓っていた。魔神は魔族の親だから、というのもあるかも知れないが、どれだけ賢く、知性があろうとも、知性があるからこそ裏切りということはできないのだろう。忠誠とは主に誓うものではなく、己に課すものであるから。


「なら安心だよ。でも何かあったら声かけてくれよ。無茶はしないでくれ」


「はい! おじ様がいるなら心強いですね!」


 ユリハはおれの膝の上で笑いながらそう言った。可愛い子だな。おれが長生きしたからだろうか、子どもはどうも愛らしく感じる。……いや、それともユリハが血縁の子だからだろうか。


 ……どちらにしても親バカだなんだと言われてしまいそうだな。一通りの話を終えて、おれ達は帰るために城門に向かった。


「フリナはこれからもユリハの補助サポートか? エルフの里のみんなとか、会わなくていいのか?」


エルフ(私達)の寿命は長いからな。急がなくてもいいさ。じゃあまた、いつでも来いよ」


「またね! おじ様! セリアお姉様!!」


「おう、じゃあな」


 おれは手を振ってユリハ達と別れた。獄現門から現世に戻る。思ったより長話していたかな。夕日が森の中に沈んでいくのが見えた。綺麗な光だ。……あ、そうだ。


魔界ここの魔素って澱んでるだろ? だから浄化でもしようかと思うんだ。まぁ人が住んでるところはそうでもなかったけどさ」


「できるの?」


「森だけなら……ちょっと時間かかるけど」


 おれは地面に手を当てて魔素を吸収していった。絡み合った魔素を分解して、大気に放出していく。おれはただ繋ぐ役割だから負担はないけれど、時間はかかるので集中力は削がれていく。


「ふぅ…………よし! どうだ?」


「……うん! すっきりしたわ!! すごいわね!?」


「エスト様、流石にございます」


 ちゃんと空気が軽くなったな。上手くいった。まだ多少澱んでるところは放っておけばなんとかなるだろう。隅から隅まで面倒を見てやる必要はない。そう思って起き上がると、急に視界が傾いた。


「わっ……!」


「ちょっ、エスト!? 大丈夫!?」


「エスト様!? 平気ですか!?」


 おれはバランスを崩して地面に膝をついた。おかしいな。身体に負荷はかからないと思ってたんだけど……。思ったより疲れてたか? おれはセリアの手を取って再び起き上がった。


 が、再び倒れそうになる。なんとかセリアがおれの身体を支えてくれたので今度は倒れなかった。まともに動けなさそうだったので、セリアの肩を借りて帰ることにした。


「まったく……無茶しないでよ? 顔色も悪そうじゃない」


「……悪い。最近ちょっと力を使いすぎてたかな。頭がクラクラするよ」


「セルセリア様、エスト様のことは私が担ぎましょうか? お疲れになるでしょう?」


「ダーメ。あなたはエストを担ぎたいだけでしょ。私だってそうよ。我慢しなさい」


 セリアは堂々とそう放ち、デムは残念そうに諦めた。おれとしては、おれも重いだろうから体重をかけてしまうのは申し訳ないと思っていたが……そこまで心配する必要もないのかも知れないな。


 おれはセリアの肩を借りながらも城まで歩いていった。グラに声をかけて、会議室まで向かう。セリアに支えられながら椅子に座り、お茶を飲みながら一息ついた。


「ありがとうな、セリア。デムも迷惑かけた」


「いえ、エスト様のなすこと全て、私への褒美にございます」


「そうか。その考えは改めた方がいいぞ」


 おれがデムにそう忠告すると、彼は意気揚々と“承知しました”と言ったものの、多分聞いてない。おれはやれやれと頭を抱えていると、扉をコンコンと叩く音がした。


「おい、セリア! 入っていいか!?」


「ええ、どうぞ」


 グラの声がしたかと思うと、ズラズラと人が入ってきた。格団の団長達や、重役達だ。さっきセリアがグラに、帰ってきたから呼んでくれと頼んでいたからだ。


 彼らはセリアに一礼しながら席に着いた。おれと会ったことのある人達は疑問の表情を浮かべながらおれの顔を見ていた。まさかとは思いながら記憶を辿っているのだろう。全員が席についたとき、セリアは口を開いた。


「急な呼び出しに応じてくれて感謝するわ。えー……もったいぶっても意味ないから早速話すけど……これから話すことは機密事項だからね?」


「は……はい……」


「彼ね、エストよ。“あの”エスト」


 セリアはおれのことを指してそう言った。ものすごい簡潔に言ったが……まぁ説明としてはそれで充分なんだろうな。


 そう思っていると、ラルドが口を開いた。ラルドは2年前、クランの本部に行ったときに一度だけ会ったことがある。


「やっぱりそうっスよね!? なんか雰囲気似てるなと思ってたんスよ!」


「…………でもエスト様は死んでいらしたのでは?」


「まぁ生きてたのよ。面倒だから説明は省くけどね」


 セリアはそう言ったけれど……まぁ……事情の前提をよく知らない人に説明するのが面倒なのは違いないな。理由を知ったところで何が変わるという訳でもないし。


「エストが生きてるなんて知られたら大騒ぎになっちゃうから、極力他の人には知られないように。彼はこれからは私の補助サポートとして働いてもらうわ」


「承知しました」


「で、明日から私達、城空けるからみんなで頑張ってね」


「…………え?」


 急にセリアがそう言い、その場の全員が疑問を口にした。当然おれもだ。


「なんで?」


「え? だってせっかくエストが帰ってきたのよ? まだ行ってないじゃない。新婚旅行」


「ッ……そうだな、行こう」


 おれはセリアと手を握り合わせてそう言った。そりゃあもう行くしかないだろ。おれだって行きたいし。するとデムが勢いよく立ち上がって言った。


「では私もご一緒………!」


「ふざけんな。お前は留守だ。しっかりやっとけ」


「…………そうですね。王が言い出したら聞きませんから……せっかくなら楽しんできて下さい。あなたもまだ若いですから」


 大臣らしき老人が微笑みながらそう頷いた。……やっぱりセリアはいつもわがままを言っているのだろうな。みんなの反応が“またか……”って感じだ。


 短かったけれど、話が終わったので全員仕事に戻った。ラルド達も少しだけ挨拶をして帰っていった。彼らも仕事中にきてくれたのだな。おれは椅子に座ったまま天井を見上げ、ゆっくりと息を吐き出した。

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