毒を食らわば皿まで
「シン、ちょっと待て」
部屋を出ようとしたシンをアロウが引き止める。
昨日買いそろえた服の上下を着て、借りた外套と武器も持った。
何か足りなかっただろうか。
「これ、持っててくれ」
そう言ってアロウが差し出したのは、革製のポーチだ。
冒険者用のものらしくベルトがいくつかついていて、結べば動いてもずり落ちないようになっている。アロウが身につければいいと思い、シンは首を傾げた。
「なんで?」
「俺は俺の持ち物で手いっぱいなんだよ」
めんどくさそうにぐいぐい押し付けられたポーチをシンはのぞき込む。
中味は……包帯らしき布、中でゆらゆら色石が揺れている木箱、ロープ、火打石、使い方のよくわからない壺が何種類かと、乾燥した葉っぱの入った巾着、布切れ、濡れないようにする油紙で包まれた……
「ごはん!」
「堅焼きビスケットだ。普通のパンより長くもつ。」
「……アロウの」
「ん?」
どう見てもひとり分のセットだ。アロウが手いっぱいだから持ってほしいというのは、ウソだろう。
うそつき、と思ったままを口にするのは簡単だ。
シンは言葉を飲み込んだ。
「しょーがないから、持っててあげようかな」
「そうしてくれ」
飲み込んだ言葉が、胸の奥を焦がす。
この熱は毒か、薬か。
見極めるにはまだ足りない。
だから、もっと必要。もっと知るために、シンもウソをつくのだ。
シンはぎゅっとポーチを抱きしめた。




