未成年淫行強制
暗い部屋で若い刑事とベテランの刑事がモニターを見ていた。
「エグいな」
「エグいっすね」
モニターに映っているのは『40才の男が小学生女児を誘拐し犯した』とされている現場。
灰色一色の防音の壁と屋根と床。
ベテラン刑事は映画『CUBE』を思い出していた。
「当たり前だけど血だらけだな」
「……そりゃそうですよ。ちょっとぉ。いきなり拡大しないで下さいよ。拡大されると……覚悟しないとかなりキモいっす」
ベテランは若い刑事の話は聞かずに眉一つ動かさずモニターのカーソルを移動させて拡大した。
床や壁。天井にまで血と精液がそこら中に飛び散っている。
「……バスで仲良く現場に移動したそうです。〇〇バス停で降りて現場の地下へ。十年前に無名のバンドマンが地下に作った防音室だとか……」
計画的な犯人だ。
この家はバンドマンの別荘で、この季節は誰も住んでいなかった。
なぜ暗証番号を知っており、鍵を開けられたのか?犯人はまだ口を割っていない。
「犯人はお世辞にも外見が良いとは言えんよな?」
「ええ。まぁ。怪しさ100%ってか。上下も靴もボロボロ。少しぐらいの笑顔と話術じゃカバー出来ない酷い顔っすよ」
「ばかやろ。そんな事言うんじゃないよ。そうじゃなくてよ……」
「えー!聞いといてぇ?」
またモニターに目線を戻す。
大量の栄養ドリンク。精神安定剤の空き箱。まるで一升瓶の様な太さのシリコン製のペニス。
(……これを挿入して遊んだのか。俺の腕より太い)
馬術用のムチ。尿管カテーテル。ビニール袋を被せたトイレ代わりのゴミ箱。他にも他にも。
「犯人は熱中症と射精のし過ぎで脱水でぶっ倒れて意識不明。いいご身分ですわな」
「男は“コレ“だったんだよな?」
ベテランは自分の頭を指さしてクルクルと回した。
「二人なんだからハッキリ言いましょうよ。キチガイです。クルクルパーですよ」
「だよな。そうだ。そうだよ」
ベテランのスマホが鳴った。
意識不明だった男が病院で死んだらしい。
珍しくはない幕引きだと思った。
……
女の子が友達と別れ一人になったタイミングで声をかけた。
自分が刑事だと伝えると笑顔で話を聞いてくれた。
「あのおじさんは心の病気だったんだよ」
「かわいそう」
「頭がね。『大人じゃなかった』の。君のほうが賢かったんじゃないかな?」
「かわいそう」
「ねぇ〇〇ちゃん。ちゃんとカウンセラーさんとお話してる?」
「かわいそう」
刑事はいつも取調室で犯人を追い詰める時の様に低い声で凄んだ。
「……大人の男が泣き叫ぶのが見たかったのか?『あんなものぶち込まれたら』前立腺がぐちゃぐちゃになっちゃうよ」
「喜んでたよ」
「……お前」
「ねぇ遊ぼうよ」
少女は笑って刑事に右手を差し伸べた。
決して美少女ではないのに年不相応な色気のオーラを纏っている。
刑事は催眠術にかけられたように意識朦朧となりながら少女の手を取った。
(な、何をしている俺は?)
「おまわりさんと一緒なら安全ね。あっちのバス停に行こうね。楽しく遊ぼうね」
刑事は3日後に遺体で見つかった。
未成年淫行の罪で死後裁かれ、特進することも無かった。