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疲労。混乱。そして接敵。

影の巣を出た三人は、街の裏通りを慎重に進んでいた。


夜の帳が下り、静寂に包まれる中、足音だけが耳に残る。


三鷹は少し疲れた様子で歩みを進めていたが、決してその顔に疲労を見せることはなかった。


彼の鋭い目が周囲を警戒し、常に何かを察知しようと動いている。


影の力を存分に使い、敵の動向を感じ取ろうとするその姿は、まさに戦場のようだった。


「しばらくはここを動かない方がいいだろうな。」


三鷹の声が、しばらくの沈黙を破って響く。


彼がそう言ったのは、少し考えた後だ。


その言葉に、マユリとジョンは反応しなかった。


二人はそれぞれ、心の中で自分の思いを巡らせていた。


マユリは敏感に耳をすまし、周囲の気配を感じ取ろうとしている。


その小さな身体をさらに引き締め、周囲に警戒心を張り巡らせながら進む。


だが、心の中には少しの不安が渦巻いている。


それは、連戦による精神的な疲労と、索敵を続けていることによる過度の緊張感だ。


彼女の鋭い感覚であれば、隠れた敵の動きはすぐに察知できるだろう。


しかし、無意識のうちにその能力を過信してしまうことに対する微かな恐怖が心に残る。


ジョン・ドゥも、肉体的にはほとんど疲れていなかった。


だが、彼の心の中には不安と混乱が渦巻いていた。


過去の記憶が断片的に蘇るたびに、彼の胸は締め付けられるような痛みに襲われる。


母親の厳しい言葉、罵詈雑言が頭の中で鳴り響き、彼は何度もその痛みに耐え続けていた。


しかし、今はそれに捉えられている時間はない。


記憶は少しずつ取り戻しつつあるが、それが今の彼にどんな意味を持つのか、完全に理解するには時間がかかるだろう。


記憶が戻るたびに、彼の心は揺れ動き、そしてその度に迷いが増す。


しかし、今は一緒に戦っている仲間たちのためにも、この不安を乗り越えなければならない。


「ジョン、気をつけろ。」


三鷹の言葉が、ジョン・ドゥを引き戻す。


彼は瞬時に警戒し、周囲に目を凝らす。


その瞬間、マユリが鋭い目を光らせ、何かを察知したようだった。


ジョンもそれに続き、目を凝らすが、視界には特に異常はない。だが、マユリが小さくつぶやいた。


「……来た。」


その一言で、三人の体が一斉に緊張した。


戦闘の準備が整い、すぐに行動に移れる状態だ。


追跡者たちの気配が近づいているのは間違いない。


その人数は五人か、いや、六人。


能力者ではないが、隠密行動に特化した精鋭部隊だ。


過去の経験から、三鷹はその動きを確実に捉え、無駄な戦闘を避けることができるだろう。


しかし、警戒を怠るわけにはいかない。


「三鷹、どうする?」


ジョン・ドゥが静かに尋ねる。


彼の言葉には、仲間に対する信頼と、やはり少しの不安がにじんでいた。


三鷹は一瞬目を閉じ、深呼吸をしてから、視線を向けた。


「先手を取る。奴らはおそらく、隠れながら接近してくるだろう。だが、俺の影があれば、すぐに位置はわかる。」


三鷹がそう言うと、マユリも素早く頷き、その表情には決意が見える。


彼女は戦闘において最も冷静であり、最も素早い。


そのため、即座に行動に移すことができる。


「なら、俺が先に行く。少しでも情報を得て、みんなに伝える。」


マユリは冷静にそう言い、素早くナイフを抜く。


彼女の鋭い目は、周囲の動きに焦点を合わせ、次々と敵の位置を特定していった。


静かな街の中で、彼女の動きが止まることはなかった。


すべてを見極め、間違いなく先手を打つ準備を整えた彼女は、三人の中で最も即断即決を得意とする存在だ。


「ジョン、後ろは任せたわよ。」


マユリの言葉に、ジョン・ドゥは無言で頷き、周囲の気温を感じ取る。


その瞬間、熱を帯びた空気が彼の手のひらに集まり始める。


彼はすぐに炎を操れるように、警戒を強化しながら進んでいった。


その時、三鷹が動いた。


彼の影が一斉に動き、追跡者たちがどこに隠れているのかをすぐに掴み取る。


三鷹の影はまるで生き物のように、地面を這い回りながら敵の位置を洗い出していった。


「……ここだ。」


三鷹が静かに言ったその瞬間、追跡者たちが一斉に飛び出した。


数秒のうちに戦闘が始まり、空気が一変する。


マユリは素早くナイフを抜き、最初の一人を倒す。


彼女の動きは驚くほど素早く、目にも止まらぬ速さで次々と相手を仕留めていく。


だが、相手も簡単な相手ではなかった。


追跡者たちは、予想以上に手強く、素早く反応し、無駄な動きをしない。


その隙をついて、ジョン・ドゥの前に一人が飛び込んできた。


その人物の手には鋭いナイフが握られている。


ジョン・ドゥは一瞬その刃を見たとき、思わず動きを止めた。


だが、その瞬間、過去の記憶が一瞬だけ彼をとらえる。


その隙間を狙った相手のナイフが、ジョンの胸元に迫った。


反射的に炎を放とうとしたが、その力を一瞬制御できずにいた。


「ジョン!」


その声が響いた瞬間、マユリが横から飛び込んできて、ジョンを庇いながらナイフを受け止めた。


彼女の体が一瞬大きく揺れ、痛みに顔を歪ませる。


「マユリ!」


ジョン・ドゥが叫ぶが、マユリは笑顔でそれを制止する。


「大丈夫よ。ちょっと痛いだけ。」


「無茶だ! どうして……!」


「ナイフくらいで倒れる私じゃないわ。」


彼女は苦笑いを浮かべ、素早く立ち上がり、再び戦闘に戻る。


その強い意志に、ジョンは胸を締め付けられる思いがした。だが、彼女が無事でいるなら、今はそれを信じるしかない。


ジョンは再び炎を使い、周囲の追跡者を吹き飛ばす。


三鷹もその後ろで影を操り、敵を倒していく。


影が鋭い刃となり、次々と敵を仕留めていった。

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