第8話 手紙
昼休み、私は恭子と昼食を済ませ、その後、一人で屋上に来ていた。
もちろん、中村さんの手紙を読むためである。
今日気づいたのだが、中村さんは授業中以外、常に誰かと一緒にいるので、ものっすっごい話しかけずらいことがわかった。
これじゃあ、本当に放課後しか話せそうにないなぁ~。
折角、話せるようになったのに。
まぁ、今朝はちょっと失敗したけど、二人が挨拶してこなければきっと話せていたと思う。
・・・・・たぶん、話せていたよね?私?
そ、そこは、もう置いておこう。過去なんて覚えていても、きっといいことなんてないはずだ。
人生とは明日を見て生きることをいうのだ。
と、かっこいいことを言ってごまかしてみる。
・・・・・・・・・・・・・・・。
一人で何意味のないことしてるんだろう。 自分で自分に呆れてしまうほどだ。
まぁ、そんな事は置いといて、早く手紙を読もうか。
私はスカートのポケットから、中村さんからもらった、折りたたまれたルーズリーフを取り出す。
なんか、ドキドキするかも・・・・・って、別にラブレターを読むわけじゃないんだから。
こんなに緊張しなくていいだろうと思うが、心臓が少しドキドキするのは止まらない。
女子高生の間で手紙交換なんて日常茶飯事だ。私自身はしないが、よくクラスメイトが書いているのを見かける。一番後ろの席なので、手紙を書いたり、回したりしているのが丸見えだ。
ルーズリーフをそっと開く、中には中村さんのきれいな字でこう書いてあった。
高山さんへ
いきなりのお手紙すいません、たぶん教室だとゆっくり話す時間がなさそうなので、手紙で伝えることにしました。
実は今日は放課後に家の用事が入り、部活に参加することができなくなりました。入部してすぐに部活を休むことになり、本当にごめんなさい。
そのお詫びと言ってはなんですが、約束していたお勧めの本を持ってきました。部室の机の上に置いておきますので、ぜひ読んでみてください。
明日はきっと部活に行くことができると思いますのでよろしくお願いします。
中村葵より
という内容が書いてあった。
なんか中村さんはそんなつもりないんだろうけど・・・・これ、文章堅すぎないか?
敬語のせいかもしれないけれど、花の女子高生からもらったものとは思えない。
まぁ、真面目そうな彼女らしいけど。
それにしても、今日部活来れないんだ・・・・。
結構楽しみにしていたんだけどな。
でも、家の事情なら仕方ないか、明日は大丈夫みたいだし。
あれっ?そういえば、なんでお勧めの本をわざわざ部室まで置きに行ったのだろうか?隣の席なんだから、机の上にでも置いてくれればいいのに。
も、もしかして、私と同じ部だと思われるのは嫌とか?
うわぁ~、それはちょっとショックかも。でも、中村さんに限ってそれはない気もする。
というか、私の気のせいであってほしい。
って、なんで私こんなに彼女のことを気にしているんだろう。普段なら誰かの評価を気にするなんて滅多にないのに。
なぜか彼女の一挙一動が気になってしまう。
まさか、彼女がとてつもなく美人だからだろうか。前に恭子が女の子でも可愛い女の子に興味があるものだと言っていたから、そう言うことなのかな。
クラスの人気者だし、そんな人と話せるようになったから、自分で気づかないうちに、浮足立っていたのかもしれない。
私も廊下で騒いでいる女子と一緒ってことなのかな。
なんか気分が落ち込んできた。
昼休みももう終わる時間だ、そろそろ帰ろう。
そのあと、私は鬱々とした気分で午後の授業を過ごした。
なぜか中村さんの方を見ることができなかった。
明日からゴールデンウィークなので、次話の投稿はすぐになるとおもいます。