第7話 翌朝
中村さんが部室に来た、次の日の朝、私は緊張していた。
教室で会ったとき、なんて声をかけたらいいんだろうか。
それとも、私に話しかけられたら迷惑だろうか。
いや、弱気になっちゃ駄目だ。
きっと、彼女は待っていてくれるはず。
ここで逃げたら女がすたる。
・・・・・・・・・・・・・かもしれない。
はぁ~、私がこんなに悩むなんて、本当にらしくない。適当に、流れに身を任せて生きるが私の人生だったのに。
これから、どんな毎日になるのか。全く想像ができない。
でも、きっと楽しくなる。
それだけは自信が持てる。だって、彼女がそう言ったんだから。
私にはそれで十分に信じられる理由になる。
彼女の温かい笑顔を思い出す。昨日の夜、何度も思い出した笑顔。
心までも温かくなるような、そんな感じ。
私はなんだか落ち着いた気分になった。
頑張れ自分、負けるな自分。
よしっ、大丈夫。
行くぞ!
と、教室の扉に手をかけ、開き、教室に入る。
そこには、すでに彼女が座っていた。窓際一番後ろにある私の席の隣に。
傍まで行くと、何かの本を読んでいた彼女の顔が上がる。そして、私と目が合った。
「お、おはようございます。高山さん。」
「お、おはよう。中村さん。」
彼女の方から微笑みを浮かべ、挨拶をしてきたので、私もぎこちない笑みを浮かべ、挨拶を返す。
もしかしたら、声が少し震えてしまっていたかも。
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
そして、無言。
駄目だ、さっきまでの勇気はどこ行ったんだ。 情けなさすぎ、私・・・。
なにか気の利いたことを言おうと思ったが、うまい具合に言葉が紡げず、気まずくなって、中村さんの後ろを通って自分の席に腰をおろした。
中村さんからも話したいけど、何を話せばいいのかわからないという風な空気が伝わってくる。
お互いにチラチラ互いの顔を見てしまうが、言葉がでてこない。
数分経ち、私は意を決して、話しかけようと口を開いた。
「あのさっ。」
「あのっ。」
中村さんも同時に口を開く。
真正面から目が合う。
やっぱり彼女も話しかけようとしていてくれた、その安堵感で胸がいっぱいになる。
それで、もう何を言おうとしていたか忘れてしまっていた。全然、ダメじゃん。
彼女もそうらしく続く言葉が出てこない。
それでも、何か話そうとしゃべりかけたその時、
「おっはよ~、涼ちゃん。」
「中村さん、おはよう。」
互いに別々の友達、恭子と戸川さんが挨拶をしてきた。
「お、おはよう。恭子、い、いつもより早いね。」
「そうかな、そんなことないよ。ほら、もう朝のホームルームが始まる時間だし。」
「そ、そっか。あ、あはは~。」
チラッと横目で中村さんを見る。彼女も戸川さんと会話をしていた。
もう今朝は話すのは無理そうだ。
ふぅ~、まぁ、しょうがないか。きっと放課後話せるだろう。
「涼ちゃーん、どうかしたー?」
気づけば、恭子が私の目の前で手を振っていた。
「あっ、ごめん。何?」
「いや、別に何でもないけどさ。今日の涼ちゃんはいつもに増してのんびりさんだね。」
「なっ!べ、別にそんなことないから。あっ、ほら、杏先生が来たよ。席に座りなよ。」
「えっ、あっ、ホントだ。」
そう言って恭子はちゃんと席に座った。
ふぅ、危ない。別に危ないことなんてないんだけど。
なんだか昨日ことは誰にも知られたくない思いからか、必要以上に焦ってしまった。
中村さんはもう戸川さんに昨日のことを話したのだろうか。ちょっと気になるが、すでにホームルームは始まっているので、二人は会話をやめていた。
黒板前にいる杏先生に目を向ける。
「皆さん、あと数週間後に中間テストがありますから、今から少しずつでも勉強してください。その後に、楽しい夏休みを過ごせるように頑張ってくださいね。」
杏先生はかわいい笑顔で、何だか気分が落ち込むような話をしていた。
テストかぁ~、まだ数週間も余裕があるとはいえ、今から気が重い。
ちなみに、私の成績は中の上だった。高校に入ってからはこれが初めての定期テストなので、高校での成績はどうなるのか、全く予想はできないが。
この高校は、実は少しだけレベルが高く、受験するときは結構勉強をしたものだ。
なので、もしかしたら、周りと私のレベルは実際は離れているのかもしれない。
下の下にはなりたくないな。そうなると、親からゲンコツをもらう可能性がある。
まぁ、さすがに高一の始めで落ちこぼれないだろうとは思うけれど。
赤点を取って、夏休みに補習というのは避けたい。
夏休みに予定なんて全くないんだけどね。
なんか、自分で思っていて悲しくなってきた。
今年はまた、たまに恭子と遊びに行くくらいだろう。でも、恭子の夏休みはいつもマンガ三昧だからな。そういう時はあまり近づきたくない。
だって、すぐモデルになれとか言うんだから。さすがの私でもかなり恥ずかしいのだ。
そして、その内容もかなり恥ずかしい。
初めて見た時は、あまりのショックに言葉にならず、一日中放心状態だった。
もちろん、次の日は恭子の家に怒鳴りに行った。
「お前は人に何させてんだぁー。」てな感じで。
はぁ、今年は恭子の部屋に行くのはやめよう。私には刺激が強い。
そんなこんなを考えていると、すでに杏先生はいなくなっていて、一限目の英語の先生が来ていた。
ヤバい、早く教科書ださないと。あの先生、よく生徒に当てるんだよな。
私がかばんの中から教科書を取り出すと、いつの間にか机の上に綺麗に折りたたまれたルーズリーフが置いてあった。
それを手に取り、周りを見渡すと中村さんと目が合った。
まさかこれ、中村さんが?と目で問いかけると、彼女は少し恥ずかしそうにうなずいた。
「後で読んでください。」と口の動きだけで伝えてくる。
私はそれにうなずき返し、手紙っぽいものを見つめた。
ものすごく内容が気になったが、さすがに本人の目の前で読むのは失礼かもしれないと思い、机の中に仕舞いこんだ。
その後、午前中は読む暇がなく、ずっと授業に集中できなかった。
何かもっと他の人と会話させるとか言っといて全く会話してないです。
・・・・・次こそはきっと他の人物と会話してくれるはずだ。