第24話 意外な人物
土日、徹夜で勉強したかいがあり、なんとか赤点だけは免れることができたと思う……。
まだ、結果は帰ってきていないので、大変不安ではあるが。
「はぁ~。」
私は息を長く吐きながら、自室の天井を見上げる。
「明日から、部活か……。」
そう、今はテストが終わり、土日の休みがあり、そして、明日からまた普通に学校が始まるのだ。
もう他の部は、テストが終わった土日から部活が始まっているが、私たちは文芸部なので、基本土日まで出てきて、部活をするということはない。
なんだか複雑な気分だ。葵と二人っきりなるということが、前はあんなに嬉しかったのに。今は……。
葵のことを考えるだけで顔が熱くなるくらいなのだから、側にいると、本当にやばい。
そ、その、ドキドキしすぎて、心臓がもたないというか……。
「はぁ~。」
私は、またため息をつき、部屋にある回転椅子でクルクルと回る。
…………うぇ、ちょっと気持ち悪くなった……。
◆
次の日のお昼休み私は一人屋上にいた。
「ぢゅぢゅるるるるるる。」
私は、紙パックのいちごミルクを握りつぶしながら、最後の一滴まで飲み干した。
「ぷは~。」
と、一緒に吸い込んでいた息を吐く。
なぜ、私が一人でこんな所にいるかといえば、いつも一緒にお昼を食べている恭子が部活の仲間と約束があるらしく、昼休みになったらすっとんでどこかに行ってしまったのだ。
私は、葵の隣で一人でお昼を食べるのも、なんか嫌だったので、屋上でこうして過ごしているというわけだ。部室に行くという選択肢もあったが、このあとは移動教室なので、わざわざ部室棟まで行くのはあまりにめんどうだった。
私はぼーっと町並みを眺める。ビルなんて一つも見当たらない、そう、とても平たんで平凡な町。ずっと小さい頃から住んできた。そして、たぶんこれからも。
コツコツコツコツ、と後ろの扉から誰かが階段を上がってくる音がした。私は、しょうがないそろそろ教室へ戻るかと思い、荷物を持ち上げた。
すると、ちょうど扉がガチャっと開く。その扉を開けたのは、とても意外な人物だった。
「ここにいたのね、高山さん。」
「と、戸川、さん?」
そう、その扉を開けたのは、我がクラスの委員長、そして、先輩の想い人、戸川桜だった。
「ど、どうして、戸川さんが?」
「あなたを探していたの。」
戸川さんが私を真っ直ぐと見つめ、そう言った。
んっ?今、戸川さんは私を探してたといった?そういえば、戸川さんはクラス委員だし、なにかクラスのことで私に話でもあるのだろうか?それとも私、なにか提出物とか忘れてたっけ?、とグルグルと思考を巡らすが全く思い当たらない。
ほとんど話したことない戸川さんを戸惑いの表情で見つめ返すと、戸川さんは屋上のドアをバタンと閉め、私の方に歩いてくる。
その間も戸川さんは私から視線を外さなかった。そう、いつも誰に対しても戸川さんは真っ直ぐな瞳を向ける。私は、なぜだかその瞳を少し恐いと思ってしまう。
別に睨まれているとか、そういうわけではないのに、あまりに強いそのまなざしに私は目をそむけてしまいそうになる。
「な、なにか私に用事?」
私は、なぜだか上ずる声で、そう聞くと、戸川さんは歩みを止め、少し躊躇う表情をした。言おうか言わないか迷っているようだった。
「えーと、高山さんに聞きたいこと、というか、相談したいことがあるの。」
「私に相談?」
相談?……戸川さんが?あのクラスの中心で、頭もいい戸川さんが私になんの相談があるというのか。
……まさか、日下部先輩のことじゃないよね?
私は、ちょっと不安になりながらも、戸川さんの続きの言葉を少しドキドキしながら待つ。
「あの、中村さんのことなんだけど……。」
「…………えっ?」
葵のこと?
今回は、本編でした。次回は、また番外編になります。番外編は終わる終わる言いつつ、全然終わりません。有言実行ではなく、本当に申し訳ないです。番外編にはもう少しお付き合いください。
そして、いつも読んでくださって本当にありがとうございます。なかなか次回の投稿を早くすることができず、すいません。ゆっくりですが、これからもよろしくお願いします。