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第22話 本当の気持ち

後書きだけ、変更しました。

テストまで三日と迫った今日、私たちは体育をしようとしている。今日の時間割4限目は体育だ。まぁ、勉強の息抜きといったところか。身体を動かすのは、いい気分転換になるだろう。


私たちは教室で、体操着に着替える。なので、みんなその場で、ごそごそと着替えをしていた。


「今日は、何やるのかな?」

「この暑い中ランニングだけはごめんだね。」

「そうだね~。確かに、この炎天下で走りたくないかも。」


恭子が苦笑いしながら、セーラー服の上着を脱ぐ。

恭子は横を向きながら着替えているので、私からチラッと可愛いブラのひもが見える。ちなみに恭子は体の割には胸が大きい。


…………正直、うらやましい。


って、何を考えているんだ、私は。む、胸、なんて必要ない。じゃ、邪魔だし。


私はちらりと自分の胸を見る。

…………頭の中で必死にしている自分がとてつもなく悲しい。


そんなことを考えながら、私も上着を脱いで、半そでを着る。すると、隣からも布がすれるような音が聞こえてきた。


そう、みんな、その場で着替えているということは、私の隣では葵がいつも着替えているのだ。

だから、私は必死にそちらを見ないように、視線を前に固定している。


いや、女同士だから、見てもいいのだろうけど。でも、どうしても、どーしても横を見ることができない。恭子の着替えなら、ガン見していても何も思わないのに。いや、胸に嫉妬はするけど。


葵の着替えはなんだか見てはいけないもののような気がする。というか、隣で着替えているこの状況がとても恥ずかしい。本当は、カーテンに包まって着替えたいくらいだ。


私はなるべく急いで着替え、恭子に話しかけながら、気を紛らわせる。そうしていると、気配から葵の着替えが終ったようだった。


「涼ちゃん、そろそろ体育館行こう。」

「えっ、あっ、うん。」


ついつい葵の方に意識を集中していたので、恭子の声に慌てて返事をして、教室をでた。

その時もチラリとも葵を見ることはしなかった。


だって、半そで、短パンだよ。肌が見えるじゃんか。いや、制服のスカートとかでも肌が見えているのだけど、葵はどちらかといえば、まだスカートが長い方だから、それほどでもないのだ。

だから、体操着の方が肌が見える範囲が多い。


それに、今までの体育の授業で、葵が気になってチラチラ見ていたら頭におもいっきりバレーボールが当たったのは、最近の一番苦い出来事だ。それからは、あまり見ないように意識している。


ちなみに、バレーボールをしている葵はとっても可愛かった…………。



そんなこんなで、私と恭子は体育館に到着した。すでに先生が来ていて、クラスメイトもほとんどが整列していた。なので、私たちも急いで、その後ろに並ぶ。


「じゃあ、今日はまず、2人1組で柔軟をしてもらいます。」


その体育の先生の一言にクラスメイト達から不服の声があがる。


「えー、こんな暑い中で柔軟ですかー?」

「ただでさえ、この暑い体育館にいるだけで、汗がぐっしょりなのにー。」

「そうですよ。こんな蒸し暑いのにくっつくのは、無理です。」

「無理じゃありません。この暑さだからこそ、しっかりと柔軟が必要なんです。筋肉をきちんとほぐしておかないとケガにつながりますからね。ほらほら、さっさと2人になって、早く終わらせてしまいましょう。」


先生がパンパンと手をたたき、生徒をせかす。皆は近くの人と組みを作るため、しぶしぶと動いた。

そんな中、私も組を作るパートナーを探すため、立ち上がると、ふっと葵と目が合った。


数秒間、時が止まった気がした。本当になぜだろうか、私はいつも葵に目を奪われてしまう。どんな時も、どんな瞬間も、葵を見ている。


私は、何も言えず、ただバカみたいに葵をみつめているだけだった。でも、葵は、違った。

少しだけ微笑んで、私の方に一歩踏み出しながら、口を開きかけた。


でも、その時だった。私の肩を誰かがガシッとつかんだ。


「えっ?」


完全に思考を葵に持っていかれていた私は、かなり驚いて振り向く。

すると、


「うわっ。」


恭子のびっくりした声が聞こえた。だが、いつも私の胸ぐらいにある頭が見当たらない。


「あれ?」


と思って、辺りを見回すが、恭子の姿は見えない。


「したー、下だよー。」

「んっ?」


私の足元から拗ねた声がする。まさかと私が真下を見ると、


「もー、やっと気づいた。」


なぜか地面に座っている恭子がいた。そして、頬をふくらませてプリプリと怒っている。


「いつの間に、そんなに背が縮んだの?」


私は、しゃがみながらそう声をかけた。すると、その言葉に恭子は眉を怒ったように寄せる。でも、幼い見た目のせいで、全然怖くはないが。


「ちっがうよー。涼ちゃんのせいだよ。」

「私の?」

「そうだよ。さっきいきなり振り向くから、びっくりして転んじゃったんだよ。」

「あー、そっか。ごめん、ごめん。」

「そ、それだけ。もー、お尻が痛いよ。」


恭子はお尻をさすりながら、立ちあがろうとしていたので、私は手をさしのべてひっぱる。


「久しぶりに、尻もちついた気がする。」

「確かに、あんまりつかないよね。」

「うー。」


恭子が唸りながら私を見たが、それをスルーして違う話題にする。


「それで、何か用?」

「何か用って、一緒に組になろうって誘いに来たんだよ。」

「あっ。」


私は、さっきまで目の前にいた葵のことを思い出して、そちらを見た。

だが、葵はそこにはいなくて、周りをみると戸川さんと一緒にいた。


2人は楽しそうに笑っていて、私の胸の中に少しだけの後悔とズキッとした痛みが生まれた。

葵はいつもの穏やかな微笑みを浮かべている。その表情を見た時、胸の中に小さい負の気持ちがうずいているのがわかった。私はそれをなんて呼べばいいのか分からない。ただあまり気持ちいい感情でないことは確かだった。


やるせなくて、孤独になってしまったような気分になる。葵がその瞳に私を映してくれないことが、こんなにも…………寂しくてたまらない。



「ねぇ、涼ちゃん。どうしたの?」

「えっ、い、いや、なんでもないよ。」


私は、頭を軽く振り、気分を切り替える。


葵が私を見ないなんていつものことじゃないか。所詮、私たちは部活だけの関係なのだから。それ以上でもそれ以下でもない。教室ではほとんど話さえしていないのに。だから、葵が戸川さんと組むのは当たり前だ。逆に私と組む方が変に映るだろう。


でも、期待してしまったのは確かだ。葵が私を誘ってくれるじゃないかって。そんな期待を少しでも持ってしまった。そんなわけないのに、葵が私を選ぶなんて、ありえないのに。

一緒にいる時間としては戸川さん達といる方が断然長いだろうし、私としない話とかいろいろしているだろうし、私の知らない葵をたくさんみているだろう。それを今更、うらやましいなんて思ってもしょうがないことだ。


バカだな、何を期待しているのだ、私は。私が葵の特別になんてなれるわけないのに。

そんなこと、分かりきっていることなのに。


「涼ちゃん、痛い、痛いよ。背中、押しすぎーー。」

「えっ?」


はっと気がつき、現実に戻った時には、私は恭子の背中をギューーとこれでもかと押していた。


「あっ、ご、ごめん。」


慌てて力を緩める。


「うー、今日の涼ちゃん、ひどいよ~。」


やばい、恭子が半泣きしている。


「ほ、本当にごめん。今度、何かおごるから許して?」

「えっ、やったーー!」


さっきまでのウルウルとしていた涙はあっというまに引き、さっと笑顔に変わった。


「今の、嘘泣き?」

「ち、違うよ。本当に痛かったんだもん。」

「はぁ~、まぁ、いいや。」

「じゃあ、今度交代ね。涼ちゃん、座って。」

「はいはい。」


私達は柔軟を続ける。チラチラと見える葵と戸川さん、私の中のモヤモヤはどんどん大きくなっていくばかりだった。


「はーい、みなさーん。柔軟はそれくらいで終わりにしましょう。次は…………。」


それから、私たちはフットサルをした。私は葵と違うチームになった。

その間も私の胸の中のモヤモヤは消えない。


一生懸命ボールを追いかけている葵、的確にパスやシュートを繰り出していた。意外と運動神経は良いのだ。その姿は華麗で、とても楽しそうだった。仲間と笑い合って、ハイタッチを交わしている。

そんな表情も私は見たことがない、さっぱりとした笑顔だった。


私の胸が熱くなる。目が、葵から離せなくなる。


そんな風に、遠くから葵をみつめていて、気がついた。私は、私の心は葵を求めていると。だから、彼女の側に入れないことがこんなにも辛い。


いつからだろうか、こんな気持ちになっていたのは。無意識に葵に目がいくようになったのは。

葵をそばに感じると胸がドキドキする。遠くから見ているだけで、幸せな気持ちとモヤモヤとした気持ちが一緒になっていた。


私の中には葵を知るほど、強くなる気持ちがある。


私はずっとその気持ちに気づかないふりをしていた。でも、だんだんと私の心に積み上がっていくものがあった。それは自分への嘘やごまかし。そして、それと一緒に葵が少しづつ、着実に胸の奥深くに根付いていくような感覚も大きくなっていった。


分かっている、気づいていたんだ、本当は。どんなにごまかしても、ごまかしきれない自分の気持ちに。

私の頭は、いつだって葵のことを考え、彼女を想っている。


もっと話したい。笑顔を見せてほしい。誰にもみせない表情が見たい。触れたい、触れてほしい。

そして、感じたい。


葵を抱きしめる時の感触、肌のなめらかさ、唇のやわらかさを。


葵の全てを…………。


もう遅いと、頭の中で声が聞こえる。後戻りはできないところまで来ているのだ。自分に嘘をつき続けることはできない。受け入れるしかないこの想い。たとえ、この気持ちを葵に伝えることができなくとも。


認めよう。私は、葵が…………好きなんだ…………。


もう私は、どうしようもないくらい彼女に、…………恋している。



大変遅くなって申し訳ありません。


次回ですが、8月の中旬以降になりそうです。本当にごめんなさい。

それまで、色々と話を溜めておくので、8月末には数話投稿できると思います。

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