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第19話 朝の教室

葵の過去を聞いた日から数日たったある日の朝、私はすでに登校して、葵と短い挨拶を交し、自分の席に着いていた。葵とは、教室では挨拶をするだけで、談笑するまでには至ってない。まぁ、同じ部活に入っていることも、今のところは恭子にしか知られていないみたいだった。


あの恭子に葵のことがバレた次の日、私は恭子に葵のことを聞かれて大変だったことを思い出した。



「もぉ~、涼ちゃんが事前に言ってくれれば、私はあんな気まずい思いをしなくて済んだのに。」

「だって、聞かれなかったから。」

「普通は、聞かれなくても言ってくれるものなの。中村さんが文芸部に入ったなんて、大、大、大ニュースなんだからね。」


恭子は頬を軽く膨らませながら、そのままの状態で器用に怒っている。私は、そのぷっくりしたほっぺをツンツンしたくなったが、余計に怒らせそうなので、とりあえず我慢した。


「それで、中村さんとはどこまでいったの?」

「………………はっ?」

「だから、ほらっ、も、もうチューとかしちゃった?」


少し顔を赤くしながら恭子がそんな事を言ってくる。

私はもう唖然と恭子の言葉を聞くしかなった。なぜいきなりそんなことを聞かれるのか、私にはさっぱり理解できない。ま、まさか、そんな風に見えたわけじゃないよね。もしかして、何か顔に出てた?


「まぁ、涼ちゃんの部活の先輩は噂のモテモテ先輩だからね、涼ちゃんも影響されてもおかしくはないとつねづね思ってはいたけど。まさか、あの中村さんに手を出すなんて思わなかったよ。あっ、じゃあじゃあ、私が描いた漫画はもしかして実話だったりするのかな?」


恭子の笑顔は、まさにキラキラと輝いていた。あぁ、眩しい。

だが、こいつは、本当に、何言ってんだ。


私があの先輩に影響されたなんて、ふざけてるにもほどがある。私は、恋には一途な方だと思う。たぶん。今まで恋なんてしたことも考えたこともないけれど。でも、先輩みたいに次から次へと手を出したりしない。まぁ、先輩にも色々あるみたいだけど。


「あ、あのねぇ~、葵とはただの友達だから。へ、変なこと勘ぐらなくてよろしい。」


私はそう言いながら、恭子の頭をぐわしっとつかみ、ぐるぐる回した。


「うわぁ、ちょっひょ、背が縮んじゃうよ~。」


恭子は慌てて、頭から私の手を外そうとするが、何分身長が違うので上から押さえつけている私の方に分がある。いつもなら、すぐに手を離すが、今はちょっとだけこのまま意地悪してやる。だって、恭子がチューとかいうから、またあの漫画のことを思い出してしまって、顔が少し熱くなっているから。その責任を恭子には取ってもらわないといけない。


「ほらほら、早く逃げないと本当にもーっと、ちっちゃくなっちゃうよ~。」

「うにゃ~、や、やめてよ~。」



私はその時の恭子の慌てぶりを思い出し、朝の教室で一人、少し笑ってしまった。

すると、そんなタイミングで、


「おはよー、涼ちゃん。あれ、今、思い出し笑いしてた?」


ちょうど恭子が登校してきて、前の机に鞄を置きながら私に声をかけてきた。


「あ、あんたには関係ないでしょ。」


私はちょっと恥ずかしくなり、いつもよりそっけなく返事をしてしまう。というか、いつも恭子にはそっけないような…………、少し反省。


「もう、朝から機嫌がいいのか、悪いのか分からないよぉ。」


恭子は苦笑まじりにそう言い、席に着いた。恭子のあとから、すぐに我がクラスの担任、杏先生が入ってきていた。


「みなさーん、ホームルームを始めますよ。席に着いてくださーい。」


と、大きな声で教室中に言うが、クラスメイト達はいつものように言うことを聞かない。


「もう、話をやめて静かにしてくださいよ~。」


杏先生は、これまたいつものように、頑張ってみるが、


「えー、いいじゃん。もうちょっとだけ。」

「ホームルームなんて、適当で大丈夫だよ。杏ちゃん。」

「うんうん、それよりも一時間目まで休み時間にしようよ。」

「あっ、それいい。もっとゆっくり学校来れるし。」


そんな、さらにうるさくなる教室。だが、我がクラスの委員長はその様子を見て、毎度のようにはぁーとため息をつきながら、一歩、また一歩と足を踏み出していく。


そして、教壇の横に立つと、くるりと振り返った。


「ちょっとー、みんな、聞いて。今、早く席に着いて静かにすれば、ホームルームだって早く終わるし、そうしたら、あいた時間にいくらでも喋れるでしょう。朝倉先生だって忙しいんだから、あまり困らせないで。」


と、戸川さんは教室のどこにいてもよく聞こえる声でそうみんなに声をかけた。

たったそれだけで、クラス中は静かになる。


そして、今までうるさく話していた女子も


「そっか~、そうだよね。ホームルームを早く終わらせて話せばいいのか。」

「うん。杏先生。ちゃっちゃと終わらせてくださーい。」


とか言いながら、静かに席に着いた。


戸川さんはみんなが静かになったのを見届け、先生の方に身体を向けた。


「朝倉先生、すいません。ホームルームをお願いします。」

「あっ、はい。戸川さん、ありがとう。さすが、委員長ね。」


そう言ってから、戸川さんも席に着いた。杏先生は少し微笑みながら、教壇に立ち、みんなの顔を見回す。なんともかわいらしい笑みではないか。本当に杏先生は生徒を怒っているところを見たことがないくらい温厚な人なのだ。そこがまた魅力なんだと、ファンクラブの人は言うらしいが。


「じゃあ、日直の人、号令お願いします。」

「はい、きりーつ、礼、おはようございます。」

「はい、おはようございます。さて、みんな、今日で中間テスト一週間前になりました。ちゃんと、勉強してますか?」


杏先生のその言葉に、クラス中から、「うげー。」「マジ!?もう、来週なの?」「やばーい、何にもしてないよ~。」などなどの苦渋に満ちた声が聞こえる。


「もう、前からちゃんと勉強しといてって言いましたよ。今回のテストは高校生になって初めての定期テストです。なので、赤点なんて取らないようにね。」


杏先生にどれだけ可愛く言われようとも、今は小悪魔にしか見えなかった。

そして、私的にはそのあと言われた言葉の方が衝撃的であった。


「それと、今日から部活動は一切禁止です。なので、部室棟は立ち入り禁止となるので、大事な荷物を部室に置いている人は今日の放課後に絶対取りに行ってください。」


ぶ、部室に立ち入り禁止!?なんじゃそりゃ、わざわざそんなことまでするのかこの学校は。

ということは…………、先輩を部室で待つことができなくなる。


私はちらりと隣にいる葵を見た。ちょうど、葵もこちらを見たようで目が合う。

困っているような表情で、少しだけ眉が下がっている。


私は昼休みに屋上で話そうとノートの切れ端に走り書きし、そっと葵に渡した。葵はすぐにそれを見てから、顔を上げ、私を見てうなずいた。


それを確認してから、私たちは前を向き、杏先生の話の続きに耳を傾けた。



さてさて、今回はもう少しでテストですね~という話です。そして、次回は部室で先輩を待つことができなくなった涼花たちは一体どうするのか……という話になると思います。


次回の投稿は少し遅くなるかもしれません。気長に待っていただけると嬉しいです。

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