第九十六話 それでも旅は続く
食事が終わった後は大忙しだった。ルベルトやオルトたちは元居た国に帰っていき、最終的に残されたのはは、ハイム国王とエナ。そして僕たちだけだった。
先ほどまで人が多かったのと、ここがかなり広い空間ということも相まって、今ではやけにここが静かに感じる。その静寂に飲まれ、全員は会話を切りだせずにいた。
しかしそんな静寂を破ったのは、ハイム国王だった。
「これから君たちはどうするんだ?」そう言いながら、僕たちを一瞥する。
「私は冒険者ギルドに戻って、適当なクエストでもやるさ。一刻も早く、お前たちに追いつきたからな」
エナは僕たちを見つめながら、そう宣言した。
きちんとした目標がある。そんな彼女を、僕は少しだけ同感した。
もともと旅の目的なんてなかった。ただ、あそこの村は冒険をするのは固く禁じられている。昔からそういう環境に置かれていたせいか、漠然と外に出てみたいとだけ思っていた。だからこそ、その後の出会いは僕にとって記憶に残るものばかりだった。
モンスター大量発生時のこと。要との激闘。そして、父の暴走と別れにタイムリープ。最後に、彼との頂上決戦。
すべてを思い返すだけでも一日は経ってしまいそうだった。しかしその分、僕は新たに気づくものもあった。だからこそ、僕はこのたびに目標を持てた。
意を決して、僕は席を立った。
「僕はこれからも旅を続けます。もっと強くなって、みんなを助けられるような、そんな人になりたいんです」
「......しょうがないわね。私も手伝うわ」あきれたように、イヴは僕に賛同してくれた。
「いいよ」「まったく、本当に仕方のねぇやつだ」続くようにして、要もユイガも賛同してくれた。
「俺も行こう」
席に座ったまま、彼はそう言葉を発した。今までは冷酷な表情をしていたが、今ではどこか朗らかさを感じられるような、そんな顔をしていた。
「その前に、君はエディタ・アドレ。だからこそ、アドレが二人存在するということは隠しておきたい。幸いなことに外見や性格はまったくもって違うから、改名したらどうだ?」
ハイム国王が彼にそう提案すると、彼は深く考え込んだ。
そしてしばらく塾講師た末に出た答えは、存外シンプルなものだった。
「そうだな...それじゃあ、ヘルト・モルデスにしようか」
ヘルト・モルデス。その名を確かに聞いたハイム国王は、わかった。とだけ言って懐にあった手帳かに何かを記した。
それをぱたりと閉じ、ハイム国王は立ち上がる。
「それじゃあ、これでお開きにしようか。お前たち、また会えるのを楽しみにしているぞ...」
ハイム国王はそう言って、会場を締めくくった。
どこに進んでいるか。今どこにいるのか。よくわからない。ただ言えることは、個々が森林地帯であることと、僕たちが迷っていることだ。だけど、それに対して焦りや怒りはない。
そこにあるのは純粋な和み。各々は笑い、ともに何かに向かって歩み続けている。
「そういえばさ」僕はあることを思い出し、ユイガに問いかけた。
「なんだ?」そう聞かれるが、ユイガの足は止まらない。しかしそれでも、僕は彼に問いかけた。
「ユイガはあの時、どうして僕のいるところが分かったの?」
そう聞かれ、ユイガは一瞬の迷いなく答えた。
「なんでって、そりゃあお前、城を飛び出したら目の前に竜巻ができてるんだもん。何かあるに違いないだろ?けどそういえば...」
話している最中に、ユイガは何かを思い出したようで、不思議そうな顔をしながら僕たちにその出来事を語ってくれた。
「俺がヘルトに気絶させられた時なんだけど、誰かに『アドレを止めてくれ!!』って叫ばれてさ。誰かはさっぱりわかんないんだけどさ、どこかで聞いたような声だったんだ。ほんと、不思議だったよ」
話している最中、ユイガの頬から一筋のしずくが流れる。しかしこれは涙ではなく、冷汗だろう。なんせ、ユイガは話している最中から今まで、青い顔で話しているのだから。きっと、幽霊か何かだと思っているのだろうと、僕は確信した。きっとみんなもそう思っているだろう。
「本当に、ユイガ。お前というやつは....」
ヘルトは何かをつぶやいて、頬から一筋の涙を流した。しかし何を言っていたのかも、なぜ泣いているかもわからなかった。
ヘルトはすぐに目をこすり、こちらに顔を向けた。
「ほら、怖い話をするよりも早く足を動かせ。もうすぐで小さな集落だぞ?」
そうだ。僕たちはまだ旅を続けている。強くなりたいという願望と、誰かを救いたいという強い気持ちが、僕に旅をさせている。
きっと、父もこんな気持ちだったのだろう。
僕はそんな父の気持ちを受け継ぐ様にして、一歩一歩前に進んでいくのだ。
「そうだよ。行こう!」
僕たちの旅は、まだ終わらない。
最後まで読んでいただきありがとうございました!ここまでこれたのは皆様の支援のおかげです!皆様のおかげで、飽き性の僕でも2作目の長編小説を執筆し切ることができました!
しかし、正直に言えばまだまだこの物語を拡張していきたいと思っています!とはいえ、一つの章を執筆できるほどの体力とひらめき力はもう残っていないので、好評であれば少しずつ『番外編』を作っていきたいと思っています!
それでは、次回の作品、または番外編で会いましょう!




