第九十四話 俺のすべて
「あの日の行動を振り返れば、俺はあいつを生かせることができた。いくつも、何百通りと。ありとあらゆる解決策があったはずなのに。それでも俺はあの日、その道を踏み外してしまったんだ。
俺の周りにはユイガ、そしてレイナ。カナにオルト。そしてリレイル学園長にグイド先生。最後に村長。たくさんの味方がいたんだ。しかし、レイナは裏切り者だった。
裏切り者のレイナは、ユイガと行動をとっている隙を狙って、ユイガが疲弊しているタイミングで背中に剣を突き刺した。
彼女が裏切り者だということは、なんとなくわかってはいたんだ。だけどそれは憶測に過ぎないよなと、俺はそこで彼女に剣を突き立てることをやめたんだ。だけど、それは大きな間違いだった。
俺は、俺の優柔不断さとやさしさのせいで、ユイガを殺したんだ。レイナが殺すのは当たり前だ。なんてったって、ユイガは彼女からしたら敵だ。戦力を削るためにする行為は間違いではない。だけど、俺の場合は違う。
俺は、本当に愚かだった。だから、もう誰も失いたくないと、あの世界で誓った。そしてそれと同時に、ユイガとエディタ・アドレがともに生きている世界があればなと、そう願った。
そして、その願いはかなった。
何事もない、平和に包まれた亜sの世界で生活していた俺は、そこで目を覚ましたんだ。目の前に広がる光景。それは、お前が初めて時スキルを脳に使用した時だ。
傷だらけのユイガ。そしてそれ以上に負傷をしている謎の少女。俺はその光景をまじまじと見つめて、理解した。
ああ。俺の願いはなかったんだな。と。そしてそれと同時に、ユイガを今度こそ守ってあろうと決意したんだ。
だが、この世界の主役は俺じゃなかった。そう、この世界にはもう一人の俺。つまり、お前がいたんだ。それにスキルの使用を停止すると、俺は人前に出れなくなってしまう。
この世界の創造主は、俺というイレギュラーを許すことはなかった。
だから、俺は作戦を変えた。俺はお前を鍛えることにしたんだ。たとえいつ死んでもいいようにな。その覚悟で、俺はお前に教えられることは教えてきた。
しかしそんな時、転機が訪れた。
それはお前が、グレイヴとの戦闘で俺を呼び出したことがきっかけだった。その時すでにお前はなかなかの実力を手に入れ、スキルの強くなっていた。だから、俺はついに外に出ることに成功したんだ。しかしそれと同時に、お前の実力はまだ足りないと思った。
エディタ・アドレという男は、絶望的な状況で追い込めば追い込むほど強くなる。俺の成長過程と、お前の記憶。それらを照合して、俺はその結論にたどり着いた。
それがわかってからは、やることはたった一つだった。
『俺がお前にとっての最大の敵として立ちはだかり、極限にまでお前を鍛える』
だから、一刻も早く殺してやりたい思っていたレイナまで利用し、お前たちだけでここに来るよう指示をした。
そこからは簡単だった。レイナは調子に乗り、ほかの連中はレイナのおかげで体力を削ったのちに俺が沈めた。だからこそ、レイナを殺すことができたし、お前との一対一に持ち込むことができた。
そして最後は...。まあお前にばれてしまったわけだが、俺が死ぬことによって、お前は俺を超えることができる.....。完璧な計画だったんだが、最終的にお前に見破られてしまったよ....」
真実を話した彼はどことなくさわやかであり、最後にハハッ。と苦笑いをした。
いやだ。どうしても、僕は彼を殺せない。
やさしさ。というわけではなかった。別に彼は嬉々として適役を買ったわけでもないし、何か恨めしいことがあってこんなことをしたわけでもない。
すべては、僕がユイガとともに生きていけるようにという、彼の切実な願いの元の行動だった。
だからこそ殺す気になんて、とてもじゃないがなれなかった。
「無理だよ...。僕じゃあ、殺せないよ.....!別に、殺さなくたっていいじゃないか...!ここにはハイム国王も、ルベルトも要もいる...!この三人なら、君の罪を帳消しにすることだって...」
「違うんだよ」
直後、彼の体は光に包まれた。彼の光から飛び出す白色のオーブのようなものが、空高く舞い上がっていく。それと同時に、彼の体は薄くなっていく。
「俺という存在はイレギュラーなんだ。異端者は追い払われるべき存在。つまり、俺はこの世界の創造主から追い出されようとしているんだ.......。そしてどうせ、俺はここで消えれば存在ごと消える。なんせ俺は、俺の元居た世界にいた俺のコピーみたいなものだからな。そこに行っても、そこの世界の創造主が俺を殺すだろう。だから...」
彼は千鳥足になりながらも、何とか僕がしまっていた剣を取り出し、僕に持たせた。
「せめてお前の手で殺してくれ....」
いやだ。
呼吸をするたびに、彼を殺したくないという拒絶反応が強くなる。さっきまで敵だと思っていた奴の真実を知ったら寝返る。それは、きっと彼が望む最後の願いに背いてしまうだろう。それは嫌だった。だけれど、それ以上に僕の心は殺したくないと叫んでいた。
何か、いい方法はないのだろうか。
何度も何度も、脳が機能を停止するまで、僕は考えるのだった。
最後まで読んでくださりありがとうございます!執筆速度は遅いですが、これからもこのシリーズを続けていこうともいますのでブックマークをして待っていただけると嬉しいです。
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