第八十八話 エディタ・アドレvsレイナ 其の二
一体、どれだけの攻撃を繰り返したか、僕でもよく覚えていない。確かに言えることは、僕の攻撃はすべて当たらず、僕の体力はむしばまれて行っているということだけであった。
結果、延々と続いていた僕の攻撃はついに終止符を打たれた。
「くそっ...!」
時間ずらしも効かない。確かに、クロノス・スウィフトが残ってはいるが、時間ずらしが効かない時点で、その技も無意味だと理解していた。
だからこそ、僕は常時レイナに対して時スキルを使っているのだが、効いているようには思えない。いや、どちらかというと効いてはいる。だが、それ以上に持っているスキルが多いせいで、戻す時間が遅れているのだ。それに、同時並行で別の用途でも使っているため、より遅くなっているというのが事実だろう。
しかしかといって、時スキルを解除してしまえば、僕の勝利への道筋は閉ざされる。
じゃあいったいどうすればいいのか。その答えは、いまだ出てこなかった。
「....?」
突然、レイナが違和感を抱いたようにして拳を握っては開き始めた。
いったいなんだ?
そう疑問に思っていると、レイナは顔を上げ、そして僕にこういってきた。
「私の分身が全員やられた。けれど、これで今の私は百パーセントの実力で戦えるわ。ただでさえ四割程度の力でひいひい言っていたあなたでは、もう私には勝てないわよ。だから、あきらめなさい」
息を荒げつつ、レイナはその言葉を言い終えた。
百パーセント。その言葉を聞くだけで、僕の背筋が凍り付いたように寒くなる。
レイナのいう通り、今まで四割の力でさえ対処しきれなかった僕にとって、百パーセントの力で攻撃された場合、僕では手に負えられなくなってしまう。
先ほどにもまして、戦力差は絶望的だった。
だったら、どうする?打つ手ゼロ。回復こそできるものの、魔力のほうは回復はできない。それに、短期決戦も仕掛けられそうにない。
..........。そうだ。
吹きもしない風が、僕の頬をかすめた。
「いいや。僕はあきらめないね。君勝つまでは、僕はここでは終われないんだ!」
「そう。じゃあ、死になさい!!」
直後、レイナのナイフは僕の腹部を貫いた。同時に、僕の腹部からは血が漏れ出て、おまけに血反吐を吐いた。
レイナはさらなる出血を引き起こすために、その刃を一度抜いてしまった。
その瞬間、僕はにやりと笑って見せる。
「さっきも言ったはずだ。僕は負ける気も、殺される気もないはずだってね!」
僕は時スキルを使い、刺されたことによってできた傷口をいともたやすく治して見せた。
そう、これが僕の作戦。時間稼ぎ。レイナに対しての時スキルは持続させたまま、なるべく時スキルを使用しないようにし、戻すことだけに専念する。
かなりの戦力の差が開くが、死なないだけましだった。
「流速」
要ほどのスピードではないが、先ほどよりも何倍も早いスピードでレイナに接近する。流れるように剣を振りかざし、確実に当たる様に工夫した。
そんな一撃は、レイナの片手によって阻まれ、攻撃は失敗に終わった。
「無理よ。そんな攻撃じゃあ、私は倒せないわよ」
レイナの空いていた左手がかざされたかと思えば、僕は思い切り吹き飛んでしまっていた。衝撃で背中の骨は骨折し、一瞬下半身の動きが取れなくなった。
いいや。これで終わりじゃない!
直後、迷いなく時スキルを発動し、骨折を一瞬で治す。
防戦一方。だがこれでいい。治し続ければ死なないし、なによりあと一押しでレイナと戦った時にまで戻せそうなのだ。
だから、このままいけばいい。
「まだだ。あと少しでお前を倒せる!」
その後、何度もレイナの攻撃を食らった。食らっては直し、食らっては治しての繰り返し。だが、それでもいいのだ。
彼女の体力と、スキルを削っていけばいい。
「もういい。うっとうしいわ」
しばらくして、レイナはそう言った。
直後、僕の眼前にレイナがいた。慌てて剣をふるうが、その剣は見事に空を切ってしまう。
気が付けば、レイナは背後にまで回ってきていた。
「もう終わりよ」
レイナが携えていたナイフ。それは確実に僕の心臓をとらえていた。
1秒。0.8秒。0.5秒。
ナイフは徐々に迫ってきているが、その反面、そのナイフはゆっくりになっていく。
「ここだ!」
直後、僕はクロノス・スウィフトを発動し、レイナの背後をとった。
「なに!?」
驚きと焦燥が混じったような声を発し、防衛するべくスキルを発動しようとする。が、スキルは発動しない。その代わりといわんばかりに、剣の刃がレイナめがけて飛来した。
反応が遅くなったレイナは、見事にその刃に切り裂かれた。はずだった。
「まだ、まだ終わるかぁ!!」
首の皮一つつながったような声でそう叫ぶレイナ。しかし、もうすでに立てるような状態ではない。右肩から左骨盤まで、対角線を引くように切れ目ができており、そこからはありえない量の血が噴き出ている。
もう助からない。
それをよく知っているのはレイナだというのに、どうして彼女はここまでに執念深いのか。僕には理解できなかった。
そんな時、一人の男が陰から現れた。白い髪に赤い目をした男。男は凄惨な姿をしたレイナを見ると、フッ。と鼻で笑った。
「なにがおかしい!」
声を荒げるレイナを、男は冷たい視線で見つめる。
「あれだけ啖呵を切っていた奴が、こうもみじめに声を荒げているのが、たまらなくおかしくてな。そしてレイナ......お前はこいつを倒せなかった。百パーセントをもってしても、お前はこいつに勝てなかった。そんなやつなど、いるだけ無駄な足かせだ」
「え.........」
「爆ぜろ」
直後、ぱぁんという破裂音とともに、レイナの肉片が四方八方に飛散した。
最後まで読んでくださりありがとうございます!執筆速度は遅いですが、これからもこのシリーズを続けていこうともいますのでブックマークをして待っていただけると嬉しいです。
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