第八十六話 白黒兄弟&リレイルvsエディタ・アドレ
それは、グレイヴがレイナを討伐する少し前の出来事である。
リレイルたちは、すでにレイナを討伐することに成功していた。
「なんじゃ、こんなものか」
リレイルがいう。
「しかし、これは分身です。もしかしたら本体が出てくる可能性もあるかもしれませんし、注意を怠るべきではないかと」
黒い少年が丁寧にそう言った。
「そうじゃの.......おぬしら、行くぞ」
そうリレイルが先導しようとした時のことである。一人の男が陰から現れた。
白い髪に赤い目。そう、エディタ・アドレである。
彼が現れた瞬間、全員が戦闘態勢に入った。
「さすがはレイナの分身を一瞬で倒した連中だ。まあしかし.....」
直後、白い少年の腹に、深々とアドレの拳が入る。
白い少年は苦しそうに悶え、とどめの蹴りで壁に吹き飛ばされ、気絶した。
しかしこの光景は一瞬にしか過ぎない。二人は、一体何が起こったのかを飲み込めずにいた。
「俺にとっては、赤子に過ぎない」
そういってアドレは二人を一瞥し、笑った。
絶対的強者。
それを目の前にした二人には、動くことすら許されず、ただひたすらに冷汗をかくことしかできなかった。
「さて、出会って早々悪いんだが.........。ここでお前たちは退場してもらう」
「ふん」
アドレの言葉に、リレイルは鼻で笑った。
「何を言うかと思えば、わしらはこの戦に勝つためにここに来たのじゃ。敵に退場しろと言われて、退場するバカはここにはおらん!」
「ああ、知っているさ。特にあなたはそういうと思っていたよ......だから、力でひねりつぶす」
瞬間、アドレは黒い少年に一瞬で近づき、思い切り吹き飛ばした。
少年は目では視認できないほどのスピードで飛んでいき、やがて柱に激突した。ずるずると落ちていく少年の意識は、すでになかった。
「さぁ、始めようか。俺とあなたの戦いを」
その言葉を合図に、リレイルはアドレに手をかざすと、スキルを発動した。
直後、スパークのようなものがアドレの元へと向かっていく。
「こざかしい」
アドレがパチンと指を鳴らした途端、スパークは目の前から消失した。
なに!?
突然の出来事に、リレイルは一瞬集中力を欠いてしまった。途端に、戦況は絶望的状況に変わる。
「あきらめろ。あなたがスキルに頼ってしまっている時点で、あなたの敗北は決定しているようなものだ」
直後、アドレに触れられているわけでもないのに、リレイルは後方にまで一気に吹き飛ばされた。
その反動で、ごほっ。と言って血反吐を吐いた。
その光景を見たアドレは、自身の手を見つめながら話し始めた。
「俺の世界では、この力は魔法と呼ばれていた。しかし、俺の世界でいう魔法もこの世界でいうスキルも、原理は何ら変わりない。魔力を使って干渉する。お前たちは自身や空気に干渉、そして時には概念に干渉してスキルを発動する。しかし、俺は違う。俺の魔法は空気魔法。つまり、空気に触れているものには好き勝手に干渉できる。例えば先ほどのように空気を圧縮したり、今のように相手を吹き飛ばしたりな....」
アドレの説明を聞いていると、リレイルの顔は徐々に青ざめていった。
空気に触れている時点で終わり。そうわかってしまった時には、もうリレイルの戦意はとっくに喪失してしまっていた。
「降参じゃ」
静かに、リレイルはそういって両手を上げた。
戦う意思はない。
リレイルの意思をくみ取ったアドレは、すかさず背後に回り、首筋をとんと強くたたいた。
直後、リレイルは白目をむいて倒れた。
「さてと.......」
俺の作戦は順調。あとはあれをするだけ。
残す仕事があと一つだということにアドレは安堵の息を漏らしつつ、空気魔法を発動する。
床、壁。柱。そして、今どこに誰がいてどう戦っているのか、色こそはっきりとはしないが確かに把握することができた。
「アドレとユイガか...まあ、問題はないだろう」
そうぽつりと言葉を残して、アドレはその場所から姿を消し、グレイヴの目の前に現れた。
最後まで読んでくださりありがとうございます!執筆速度は遅いですが、これからもこのシリーズを続けていこうともいますのでブックマークをして待っていただけると嬉しいです。
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