第八十一話 決戦間近
それは、まだアドレが寝ているときのことである。
この時点で、レイナは300人程人を殺していた。それ故に格段にパワーアップ。実力は、アドレと戦った時よりも数段上になっていた。
ついに準備が整ったと判断した白髪のアドレは、ついに作戦を実行することにした。
「いいか。お前の建設スキルで、俺の言ったとおりに城を作れ」
「わかったわ」
「まず通路を四つ作る。行きつく先はずべて同じ、俺のもとに行くようにしろ。そして、お前はあれを使って全員を足止めするんだ。いいな?」
レイナは首を縦に振って、さっそく外に出た。
その後ろ姿を、アドレはにやりと悪い笑みを浮かべながら追いかけると、目の前には平野が広がった。
何もない、地平線だけが広がった平野。しかしよくよく目を凝らしてみれば、遠くには何らかの壁が見える。
それは、ソラを守る外壁であった。
「ここでいいのよね?」
「ああ。俺の言ったように頼むぞ」
アドレがそういうと、レイナは両手を地面につけた。
直後レイナの前方に、すべて異なる方向に延びた四つほどの線が広がり始めた。しばらくして線が止まったかと思えば、それが城を作るためのスペースを現していることに、アドレは気が付いた。
そう気が付いたのもつかの間、レイナが魔力を地面に込めたかと思えば、地面から何かが浮き出てきた。
高いところから見渡す塔に、正門。徐々に、その正体は明らかになっていく。
そして、ついに城が完成した。
「上出来だ。あとは、あいつらの到着を待つだけだ」
拍手をしながら笑みを浮かべ、アドレはそう言った。
「もしほかの人が来たら、どうするばいいのかしら?」
「殺して構わん」
あっさりとそんなことを言うアドレの口には、わずかな笑みがこぼれていた。
移動を始めて十三日目。いよいよソラが見えてくるころなのだが、時刻は夜。このまま移動しても意味はないと考えた僕たちは、いつものようにキャンプを始めた。
各々の作業を終えて食卓を囲み、皆が就寝した。そんな時、僕は立ち並ぶテントの中心部にある焚火で、手を温めていた。
「あったかいなぁ...」
静かに、僕は呟いた。
昼では寒さに困ったことはないのだが、夜は違う。手はほのかにかじかみ、たびたび身震いを起こすほどに寒いのだ。
故にこういう暖は、僕にとっては生命線そのものであった。
そんな時、ルベルトが僕の横に現れた。
「どうしたんです?」
そう僕が尋ねると、ルベルトは静かに僕の横に座り、語り始めた。
「君は、あの異変を覚えてる?」
「うん」
忘れるわけがない。あれは、父との思い出を作ってくれ、僕に勇気をくれた。しかしそれと同時に、国は混乱を巻き起こした。
故にあの出来事を、忘れるわけがなかった。
「アドレ、実は君がいなくなってから、異変について僕たちでいろいろ調べたんや。したら、あれは記憶が埋め込まれただけの、偽物だっちゅうことが分かった」
そう言われたとたん、僕はなにかを失ったように感じた。
しかしそれでも、僕の声色は変わらない。
「そうなんだ....」
「驚かないんやな」
「だって....。ううん。なんでもない」
きっと、父はわかっていたのだ。自分はエディタ・グイドではないことぐらい。本にが一番よくわかっていたはずだ。
だからこそ、父は異変とともに消えることを選んだ。自分はまがい物だから、息子といる権利はないと、そう判断したのだろう。
しかし僕からすれば、あなたは立派に父親だった。
「それで、本題は?」
「今回の調査で、異変で蘇った人は全員偽物。だけど、なんで偽物なのにスキルを使えたのか。君にわかる?」
そう聞かれて何度も考えたが、答えは出てこない。
最終的に、僕は首を横に振った。
「それは、スキルの譲渡や」
「譲渡...?」
「そうや。僕たちはそれを再現するために研究してる。でもな、人はスキルを三つ持つことはできなかった...。完全なキャパオーバー。その限界が、二つまでなんや」
スキルの譲渡。それに近しいことを、前にやっていたことがある。
それが、『時』スキルで別世界の俺を呼び出す方法。確かにスキルを譲渡される形ではないけれど、スキルのようなものは二てょど手に入れることができていた。
もしかしたら、スキルでも同じようなことができるのかな。と思い立ったが、キャパオーバーという言葉を思い出し、その作戦は中断した。
「そこで、万が一の場合には僕たちがスキルを君たちに譲渡し、戦力アップさせようと思ってな。一応、ハイム国王たちの司令塔には、このことは伝えてある。でも、なるべく使いたくはない。あくまで最終手段だと、そう考えといてほしいねん」
「わかった。みんなには、黙っておくよ」
頼むでー。と言って、ルベルトは一人用のテントに入っていった。
「明日か...」
一体、レイナはどれほど強くなったのだろうか。僕は、俺に勝てるのだろうか。
様々な不安が、僕を煽り立てた。
最終的に僕は急ぐ様に火を片し、一人用のテントにそそくさと入っていった。
「....ふぅ。............!?」
僕が毛布にくるまって寝ようとした瞬間、僕の前方にあった何かにあたった。
「なんだ...?」
まさか、奇襲じゃないだろうな?といぶかしみつつ、毛布の中にいたそいつの正体を探るべく、そっと毛布を覗き込んだ。
,,,,,!?
僕の視界に広がっていたのは、すやすやと背中を丸め、小動物のように毛布を握り締めて眠っていたイヴの姿があったのだった。
最後まで読んでくださりありがとうございます!執筆速度は遅いですが、これからもこのシリーズを続けていこうともいますのでブックマークをして待っていただけると嬉しいです。
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