第八十話 俺の記憶 其の四
俺との差はいまだ圧倒的。そして、もしかしたらもう僕ではレイナにかなわないのではないか。
そんな不安にあおられるようになって、僕の特訓に火がついた。何度も何度も退陣戦闘をする日もあれば、何度も自主的なトレーニングによる技術の向上を試みた。
そしてその一日の最後に必ず、ステータス測定器で測定するのが日課になっていた。
しかし、僕のステータスは一向に変わらない。変わったとしても、一か二ほどしか数値が変わっていなかった。
それを毎日見させられて、僕はだんだんと焦っていった。これが負のスパイラルだということも十分知っていた。しかしそれ以上に、自身が足手まといになることが怖かった。
その様子を見て、イヴが心配して声をかけてくれた。
「大丈夫?最近あなたおかしいわよ。少し休んだらどう...?」
「体は絶好調だよ。だから、心配しなくていいよ」
そうはいったものの、実際はかなりの疲労を蓄積させてしまっていたことに気が付いた。そしてそれと同時に、あることを思い出した。
鍛錬を毎日続けていた、そんなある日、ついに僕の肉体は限界を迎えかけていた。
その日、僕は休んだ。そう僕は思い出したのだ。ここには、頼りになる見方がたくさんいるのだ。ここにいるみんなは、僕が思っている以上に強いということを、思い出したのだった。
僕は眠りにつき、また夢を見た。
その夢でまず初めに見たもの、それは一つの墓だった。あたりにはたくさんの墓があるが、その墓は飛び切りきれいに整備されている。どうやら、最近できた墓らしい。
夢の主がその墓に近づいていくと、墓に書かれていた文字がぼんやりと、次第にくっきりと浮かび上がってきた。
その墓にはしっかりと、こう書かれていた。
『ユイガ ここにて眠る』
「ユイガ、ほら、君の好きなステーキと、君がくれた赤いハチマキ。君に返すよ」
まるで、眠っている人を起こさないようにそっと、夢の主は静かにおいた。
そして、夢の主はしゃべりだした。
「君のおかげで助かったよ。君が見つけてくれた本で、僕は魔法の本質を知ることができた。おかげで、レイナを殺すことができた。これで、世界に平和が訪れる。君という犠牲を払って手に入れた平和。だから、ずっと大事にしていくよ.........。そして、ありがとう,..,,,,,最後まで」
そういって、夢の主は立ち上がると最後に別れの言葉を告げた。
「またね、親友」
夢の主は踵を返し、そして墓から姿を消した。
そんな夢の主は去り際に、ぽつりと言葉を吐いた。
「ああ、もしユイガとエディタ・アドレがともに生きている世界があったのなら....」
願いを込めるように、夢の主は言った。
「その○○にいる○○〇を○○○が、二度と〇〇〇を○○○○ように、○○○○〇〇ように守ってくれればいいのにな」
声にノイズのようなものがかかり、はっきりとは聞こえず、一部しか聞き取れなかった。
そこで、僕はようやく目を覚ました。
丸々一日。過労のせいだろうか、僕は丸一日眠っていたらしい。起きて宮殿の中を歩いていた時に出会った、ユイガから聞いた。
しかし、あの夢は何だったのだろう。ユイガが死んだということは、過去に聞いたことがあった。もちろん、本質はそこではないのだが。それでも、あいつが死者に何かしてあげる。そういった行動をとるのが意外だった。
僕のイメージでは、彼は暴虐武人な男。それが定着していたからだ。
「まぁ.......結局のところ、世界を滅ぼそうとしているのは事実だもんな。なら、戦うしかないんだろうな......」
そんなことを一人呟いて、僕は訓練を再開し始めた。
そしてかなりの月日がたった。いや、多分一週間ぐらいだろうか。何か月もトレーニングしたかと思うほど、僕は自分を追い込んだ。追い込んで追い込んで....結果、僕は各ステータスの数値を20ほど上げることに成功した。
そんなある日、ハイム国王を頭として、集会が開かれた。一体何だろうとハイム国王の顔を覗いてみたが、険しい表情をしていた。
「皆に、伝えねばならぬと思ってな........俺がしばらくここにいる間、各方位に見張りを設置したのだが........そのうちの一つの部隊が、一つの城を発見したらしい」
『城』
その単語を聞くなり、全員の意識がハイム国王に集中した。
「情報通り...というわけですね」
要が落ち着いていった。
「そうだ。つまり、そろそろ決戦が近づいているというわけだが........全員、準備はできているか?」
ハイム国王がそう尋ねると、全員が快く承諾した。しかしその裏で、全員はひっそりと固唾をのんでいた。
「それでは、今からソラに向かうぞ」
ハイム国王の指示に従って、僕たちはソラに向かい始めた。
しかし、それでは遅かった。そう...遅すぎたのだ。
ウェスリーアからソラまで、かかる日にちはおおよそ一週間以上。それでさえかなりの時間を要するというのに、今回は大移動ときた。当然持つべき荷物は増えるため、時間も当然増える。
結果的に僕たちがソラに着くのは、二週間後くらいかなぁ。
移動を始めた時、僕は静かにそう思ったのだった。
最後まで読んでくださりありがとうございます!執筆速度は遅いですが、これからもこのシリーズを続けていこうともいますのでブックマークをして待っていただけると嬉しいです。
これからもこのシリーズをよろしくお願いします!




