第七十八話 方針
すべての情報を吐きつくし、もう何も情報が残っていないときのことだった。バタンと、大きな音を立てて、一人の警備員がこの部屋に入ってきた。
警備員は慌てている様子で、ぜぇはぁと息を荒げている。
「大変です....はぁ。こんな手紙が....はぁ。届きました........はぁはぁ」
そういて警備員が差し出した手紙を、ルベルトが受け取った。
手紙の後ろには『エディタ・アドレより』と書かれており、全員が息をのんだ。そして恐る恐る、その手紙を開けた。
『お前らもご存じのとおりだろう。俺はこの世界を破壊する。今からでも、俺は世界を滅ぼすことができるが、少し待ってやる。さらに、俺たちの陣営について、少し情報をやろう。その代わり、俺からの二つの要求をのむことだ。
まず一つ、「ソラ」の近くに建設する城でで決戦を行うこと。そして二つ、その場にいるお前ら以外は決戦の場所に来ないこと。
もしこの条件を破ったと分かれば、俺は直ちにこの世界を破壊する。
そして情報だが、俺以外に四人ほど強い奴らを率いていてな。一人はお前らも知っている通りレイナだ。ほか三人も腕は立つが、別に注意するほどの強さではない。
さて、情報はこれぐらいでいいだろうか。俺はこの後大事なようがあるのでね、お前らの会話を聞きながら作業に移るとしようか。
せいぜい頑張るがいい』
ルベルトがその手紙の内容を読み終えるとともに、全員の顔の色が青くなった。
まず、あいつを止めるには、それなりの大所帯が必要になる。少なくとも一万以上、もしくはそれ以上の軍勢が必要だ。しかし、二つ目の条件により、その希望は完全に打ち砕かれた。
しかも、相手にはレイナがいる。前回はタイムリープという形で彼女を攻略したが、今回中利はそうはいかない。
待つ時間が長ければ長いほど、僕の戦略は彼女には通用しなくなってしまうのだ。
「どうする?」
僕の呼びかけに、全員が黙った。
その時全員が考えていたこと、それは『万事休す』だった。
「どうするといっても、この人数では....」
あのハイム国王が、ついに弱音を吐いた。全員が、やる気を失っていた。
それにいきが付いた僕は、高らかに宣言することにした。
「一人はレイナなんだ。彼女とは、僕が戦う」
「大丈夫なんか。俺達が行かなくても。いや、それは俺たちが一番知ってるよな。なんてったって、お前は一度レイナを倒す直前にまで行ったもんな」
ユイガがそういうと、みんながはっとした。彼女に有効打を与えていたのは、紛れもない僕であるということを。
「そういうこと。それに、レイナには僕のスキルが一番有効だ。悪いことを言うようだけれど、多分、レイナと戦うなら僕一人のほうがいい。ほかは足手まといになると思う」
「それなら俺たちは三陣営になって別れるべきか...」
現在大きな戦力になれる人物は、僕とユイガ、要とオルト。そしてリレイルとエナ。さらには白黒コンビとグレイヴの計九人だ。そしてレイナには僕一人だけなため、一人に二人か三人程割けれる。
「人員は、できる限り三つの勢力どちらも同程度の実力にするべきちゃうかな。だから、僕はグレイヴと要。ユイガとエナ、そしてオルト。最後に白黒コンビとリレイル所長でどうや?」
ルベルトの人選は的確で、どれも実力に偏りはなかった。そのため一つの反論もなく、あっさりとグループ分けが完了した。
戦闘をしない人以外は全員司令塔。攻め方といったように、次々と作戦会議は進んでいく。しかし、僕には納得できないものがあった。
なぜ、あいつは僕たちに情報を渡したのか。それがいまだに理解できなかった。
世界を滅ぼすのがもし僕であれば、確かに情報は多少与えて、こういったように人員を制限するような真似はする。しかし、あまりにも提供する情報が多いのだ。
これでは、あっち側がかなり不利に立たされる。それをわかっているはずなのに、なぜあいつはわざと情報を漏らしたのか。
何か、別の目的があるのかもしれない。
そう思っては止まなかった。
何かを書き終わったハイム国王は、ふぅと息をついてペンを置いた。
「さて、このくらいでいいだろう。一応城がどういった設計なのかは不明だ。故に、大体131072パターンの作戦を考えた。しかし安心しろ。状況に応じて、俺たちがお前たちを先導する」
「どうやってやるんですか?」
僕は言った。
「安心しろ。俺のスキルで、お前たちの位置情報はすべてわかるようにしておく。そのうえで城の構造をこの白紙の地図に記していき、あそこにいる黒い少年でお前たちに情報を共有する算段だ」
ハイム国王のそのことばで、僕は後ろにいた黒い少年のほうを振り返った。
少年は相変わらず不愛想な顔でこちらを見つめると、ぷいとそっぽを向いた。
「これで、私たちの作戦は整いましたね」
源一郎さんは、静かに指を組み、ぽきぽきと指を鳴らした。
「ああ。あとは各自の訓練に頼るしかない。頼んだぞ」
僕ら一同は、その言葉にはい!と大声で返事をし、各自別々の場所で訓練を始めるのだった。
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