第七十五話 淘汰されるべき男
世界を滅ぼす。そう言ったアドレは、にたりと悪い笑みを浮かべていた。しかし、みんなはあっけにとられていて、ただ口をあんぐりと開けていた。
それも仕方がなかった。なんせ僕と俺、二人のエディタ・アドレが目の前にいたからだ。
しかし、容姿と言葉遣いはまったく違う。黒髪の僕と対になる様に、俺のほうは白髪だ。それに一人称は僕と俺。僕ら二人は名前だけが同じで、中身はまったくもって違う人間だと、ようやく二人も気が付いた。
「お前が何者かどうかなんて関係ねぇ。そいつを俺たちによこせ」
「何を言う。こいつは俺の計画に必要なんだ。そう簡単に渡すと思うか...?それに......」
直後、僕の視界から俺が消えたかと思うと、俺はユイガの肩をポンと叩いていた。一見すると何の変哲もないことに思えるが、俺は一瞬にして消えたのだ。それに、物音ひとつすら立てずに。
まるで、瞬間移動したかのような動きだった。
「主戦力がずいぶんとくたびれているじゃないか。大将が弱った軍勢など脆弱だ、一瞬にして瓦解する。それでも、俺に挑むというのか...?」
「ああ」
ユイガは拳を強く握り、ぽきぽきと骨を鳴らすと、戦闘態勢をとった。
「ここまで来たんだ。ここで下がるわけには、行かねぇよ!」
ユイガが飛び出した。きっと暴れたりなかったのだろう。見た限り、初めから全快モードのようである。
ユイガのラッシュが続くが、すべて最小限の動きで躱される。長いラッシュの末にユイガが悟ったもの、それは、敗北だった。
ユイガのラッシュに対して、俺はその場から一歩も動いていたなかった。
「ほら、俺を退けるんだろ?もっとギアを上げろよ。そうでもしなきゃ、俺には一歩も届かない。いいんだぜ?三人がかりで来ても」
「そうかい。それじゃあ僕たちもいかせてもらうよ。アドレ君、行くよ.....,」
そうして僕たち二人も加勢に入ったが、一向に攻撃が当たらない。それどころか、僕たちの体力は徐々にむしばまれていき、最終的に、僕は息を上げて膝をついた。
すると、俺はにやりと嫌みたらしく笑うと、抱きかかえていたレイナが浮遊した。
「ずっと待ってやったんだ。今度は俺のターンで、いいよな?」
パチンっ...!
俺が放ったスナップ音とともに、僕たちとレイナは一瞬にして平原に移動されていた。場所は、あの時要とユイガが戦ったところである。
「どうしてここに移動させたんだい?」
「なに、これほど広くないと、俺の力は発揮できないんでな」
俺は構えをとらず、ゆっくりとこちらに歩み始めた。まるで待ちゆく国民のように、目の前に敵がいることを認識していないかのように、歩き出した。
この戦法を、僕は知っていた。
「なあアドレ。お手本を見せてやろうか....?」
「...!みんな、今すぐここから離れてくれ!!」
「もう遅い」
そういったアドレは、突如として僕ら三人を取り囲むように分身体を出し始めた。だが分身体というほどでもない。ただ超高速で円を描くように回っているだけ。しかし、分身体が濃くはっきりと見える時点で、俺の身体能力がいかにすごいかがわかる。
あっけにとられている間にも、俺は徐々に近づいてくる。逃げようと脱出を試み、時スキルで時間を極限にまで遅くした。
俺の残像は確かに薄くなった。しかし、スピードはいまだ健在。脱出は、失敗に終わった。
「そのまま少し寝ていろ」
僕たちと俺との距離が目と鼻の先になった時、俺はそんなことを言うと、目に見えないスピードでユイガと要を蹂躙した。
残ったのは、僕だけだった。
「アドレ。いつか俺はこの世界を支配する。その日が来るまで、せいぜい俺を超えるほどにまで強くなるんだな」
そういうと、アドレは浮いていたレイナを姫様抱っこをして抱きかかえ、パっ。とどこかへ消えた。
くそっ。という後悔と、脅威が去ったということにため息を漏らす。すると、あたりの景色が鵜蔵くなっていくのを感じた。
限界、か。
そう悟ると同時に、僕はバタンと倒れ、意識を手放した。
ようやく僕が意識を取り戻したのは、それから二日後のことだった。目が覚めた時、僕はテラスティア宮殿の患者室で寝かされていたと当時に、みんなが僕のために見舞いに来てくれていた。
案外僕という冒険者の名は広まっているようで、僕が寝込んだということも知らされたらしい。左手にある窓の近くにある机には、たくさんの手紙が置いてあった。
周りを見てみると、だれもいない。そこにあるのは、静寂と、レイナを逃がしたという確かな事実だけであった。
何度もタイムリープして失敗した。その事実から逃げるようにして、僕は手紙を読み始めた、そんな手紙に書かれていたのは、頑張って、応援してるなどといった応援メッセージだった。
うれしい。素直にそう思った。しかしうれしいのだが、どれも心に響くものではなかった。
はぁ、とため息をついたそんな時、一つの手紙が僕の目に留まった。裏を覗いてみると、そこには確かに『エナ・オーリー』と書かれていた。
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