第七十話 最高の作戦
テラスティア宮殿。僕らがここに行くのは二日後で、本来なら今日来ることはない。
なにせ僕はオルトに情報提供を求められていることで、入ることができていたのだから。しかし、現時点ではオルトに情報提供なんて求められてないし、さらには彼女は大体的な犯行をしているわけじゃあ...。
その時、僕は思い出した。あの男に狙われていたのは、あの男の息子を彼女が殺されていたからだ。と。
それを報告すれば、僕たちは合法的にテラスティア宮殿に入ることができるのではないか。
そう思いついた時には、僕は宮殿の門をこんこんとノックしていた。
直後、門が開くと同時に二人の少年が姿を現した。
二人とも背丈は僕たちよりも小さく、まだ僕たちよりも若かった。お互い対照的な色合いをしていて、少年は黒い瞳に黒い髪。もう一方は、白い髪に負い目をしていた。
「なんのようですか」
黒い少年(仮)が僕に用件を尋ねる。
「オルトさんに伝えたい用があるんだ。悪いんだけどここを通してくれないかな」
「はやく要件を言いってください。さもなくば締め出しますよ」
白い少年(仮)はあきれたようにこちらを見つめて、吐き捨てるようにそう言葉を放った。
二人の少年の言葉はどこか牙があって、一刻も早く僕らとの会話を終わらせたいといわんばかりの口調であった。
生意気だ。
というのは嘘で、僕はできる限り穏やかに、そして優しく少年たちに言った。
「ある少女が一人の男を殺したんだ。その事件についての情報を持ってるから、しかもすごく重要なのを。だからオルトさんに話そうと思って」
「すいませんが、その程度の事件が重要だとは思えません。さっさと帰ってください」
やっぱり怒ってやろうかな?
そう思っていた時だった。ユイガが僕の前に出たかと思うと、おいガキども。といって見下すように少年たちを見つめ、そしていった。
「おまえら人に対するマナーってのがなってねぇ。どんなに偉い立場にいようと、人に対する敬意ってのは忘れちゃいけないって上司に言われなかったのかよ」
「別に、僕は上司には敬意を払ってますよ。強い人には。ですけど、あなたは僕たちよりも弱い。弱い相手に敬意なんて払う必要はないですからね」
かなり生意気な子供ではあるが、その心境はわからなくもなかった。
彼らの時期はプライドというものが芽生えてくる時期。そしてそのプライドのせいで、他人に迷惑をかけてしまう。
僕もまたそうだった。
それ故に、僕は反論はせず、ただただ心の中で同情していた。
そんな時だった。一人の男が彼らの後ろから現れた。
「すいませんうちの部下が変なことをしてしまって」
そういって二人を下がらせたのは、今回のキーパーソンであるオルトだった。
彼は不思議そうにこちらを見つめては顔をしかめ、何か考えている様子だった。
「それで、私に何か御用でしょうか」
「オルトさん。僕が未来からやってきたと言ったら信じてくれますか?」
唐突な質問にオルトは目をまん丸にしたが、しばらく考えたのち、冷静にこう答えた。
「わからないですね。私はあなたのことを知らないので、あなたがどんな性格なのかもわかりません。故に、あなたが本当のことを言っているのかはわからないです」
彼の返答は的確だった。
どうしたら信じてくれるだろうか。
僕の頭はそのことでいっぱいになっていた。
何度も何度も。そして考えた末にたどり着いた答えが、これだった。
「オルトさん、所長はどこにいますか?」
『よく知ってますね。ですがあいにく。所長は現在勤務外でして...』
僕の声とオルトの声が重なる。
全員は口をあんぐりと明け、僕をただ見つめていた。
それはオルトも例外ではなかった。
「なるほど。本当に未来から来たんですね。それで、要件は何でしょう?」
「今からウェスリーアで大量虐殺が起こる。それを阻止したいんだ」
僕がそういうと、オルトは難しそうな表情をして、そして僕にこういった。
「残念ですが、今からというわけにはいきません。現在隊員たちは遠征中でして、兵力が半分以下になっているんです」
「遠征から帰ってくるのは?」
「ざっと明後日でしょうか」
明後日。その日には、僕とレイナの実力は僕と同等かそれ以上になっているはず。
どうやって倒すんだ?
そんな疑問が僕の頭に思い浮かんだ。
やっとの思いで思いついた作戦が、ここで行き詰ってしまった。僕はこれ以上の作戦を思いつく自信はないし、今後思いつける気もしない。
「なぁアドレ。大量虐殺が起きるんだろ?それなら、イヴのスキルが役に立つんじゃないか?」
「...あ.......」
耳打ちをしてきたユイガの発言により、僕の作戦に新たな活路が開かれた。
そうだ。殺された人たちを生き返らせればいいんだ。イヴの手で。
「オルトさん。明後日になれば隊員は全員戻ってくるんですよね?」
「ええ」
「なら、あらかじめ作戦を伝えておきます」
そういって、僕は作戦をオルトに伝えた。
「なるほど。といいたいところですが、これではあなたにリスクがある」
言い終えると、オルトは心配そうにこちらを見つめた。
皆も同様、僕にそれとなく心配の視線を送りつけていた。
「大丈夫ですよ」
だってまたやり直せばいいのだから。
「それなら、せめて私ができる限りあなたを鍛えます。明後日に備えてね」
そういって、オルトは僕たちに背を向けて走り出した。
あまりにも突然すぎる出来事にと毎度いながらも、僕たちはオルトについていくのだった。
最後まで読んでくださりありがとうございます!執筆速度は遅いですが、これからもこのシリーズを続けていこうともいますのでブックマークをして待っていただけると嬉しいです。
これからもこのシリーズをよろしくお願いします!




