第六十七話 ユイガvs要
そうしてまた、あの時にまで戻ってきた。
あたりを見回してみると、やはりユイガたちは生きている。あの時の情景そのままである。
さて、どうしようか。と僕は迷っていた。
彼女のスキルはわかったのだが、対策するのは難しい。そもそも現時点での彼女の実力が未知数であるがゆえに、ユイガたちを犠牲にしてしまう可能性があった。
それだけはしたくない。
ならどうするか?
その問いすら、僕は答えられないままでいた。
「それで、イヴちゃんとアドレ君が一緒に行動するんだよね?」
「いいや。僕ともう一人、要かユイガを連れて二人だけで探索しよう。相手は殺人犯だ。実力がなかったら殺される」
僕の発言にユイガたちは顔をしかめた。
あまりにもひどい言い方だったから。
「わかった。要、俺と戦おう。そうすればどっちが強いか示しがつく。それでどうだ?」
「わかったよ。じゃあさっそくと行きたいところだけど、場所を変えよう。この国から少し外れた場所に平原があるんだ。そこでやろう」
要の提案で、僕らは平原にまでたどり着いた。
そこは確かに平原であった。しかし、隣には森林が、後ろにはウェスリーアが見える。
それでも、平原といえば平原だ。戦うだけのスペースが、そこにはあった。
「それじゃあ、はじめよっか」
要が静かに刀を抜く。それに呼応して、ユイガも構えをとる。しかし、その構えはいつもと違っていた。
そう。ユイガは、最小限で動ける構えを開発していたのだ。
あたりから、優しい風が全員を包む。そして気が付いた。
僕とイヴは、その戦いを見守るだけの傍観者であることに。
「しゃあ、こいや!!」
活を入れるように、ユイガが叫ぶ。しかしそれとは対照的に、要は静かにユイガのもとにまで急接近した。
しかしユイガも冷静に対処し、紙一重で刀をよける。
ブンッ..!
ユイガの弱点を見定め、振った刀は見事に空を切った。
しかし彼女もそれだけでは終わるはずがなかった。すぐさま体勢を立て直し、今一度攻撃を仕掛ける。
それすらも、ユイガはギリギリでよけていく。
しばらく続いた要の猛攻も終わり、無傷のユイガを見て彼女は言った。
「君、僕に何かしたかい?いつもよりも断然スピードが遅いんだけど」
要がそういうと、ユイガはにやりと笑みをこぼした。
まさか。
一つの可能性が、僕の脳内をよぎる。
「ああ。そのまさかさ。俺のスキルは『倍』スキル。一見自分や他人を強化するだけのスキルに思えるが、レベルアップして気が付いた。二倍三倍ができるなら、二分の一倍、三分の一倍もできるんじゃねぇかってな」
スキルは、初めから100%全力で使えるわけじゃない。最初のころ、つまりレベル一の時は10%。レベル10で100%といったように、レベルに乗じてスキルの使い勝手が増えていくのだ。
そしてユイガがはたったのレベル5。つまり、50%しか使えない中、彼なりにそのスキルを活かしたのだ。
きっと、僕が『倍』スキルだったとしても、その発想には至ることができなかっただろう。
「そして俺のスキルは重複することもできる。つまり、お前は時間が経てばたつほど攻撃力、そしてお得意のスピードもなくなってしまうというわけさ」
その瞬間誰もが、ユイガの勝利だと確信した。
要はあきらめたようにはぁとため息をつき、両手を上げた。
「降参だよ。きっと今の僕じゃ、君には勝てない。完敗さ」
「ふん。それでアドレ。今から行くのか?」
「うん。できるならすぐ行きたいって感じだ」
彼女は今戦いを行っていた時もなお強くなっているのだ。一刻も早く止めに行かねばならない。
そうか。とユイガが言うと、僕をおんぶした。
突然のおんぶに困惑していると、ユイガは全力ダッシュでウェスリーアまで走った。
そのスピードは確かに僕よりもはやかった。
おかげで、ウェスリーアには寝る暇もないほど早くついた。
「それで、俺たちはどこに行けばいいんだ?」
「あっち。テラスティア宮殿の向こう側にある細道だよ」
そう僕が言うと、またユイガは走り始め、一瞬で例の小道にまで来てしまっていた。
あたりの状況は前回のタイムリープと同様。しかし時間帯はまったくもって違う。
それ故に、ここにレイナが来るかさえ怪しかった。
そこで、僕は時間つぶしという名目で真実を打ち明けることにした。
「ユイガ。僕は未来から来たんだ」
「ああ。なんとなくわかるよ。なんせお前のスキルは『時』スキルだしな。それで、どうして過去に戻ってきたんだ?」
言っていいものだろうか。
僕は少し戸惑っていた。
ユイガが死んでしまうから。むごい殺され方をする。と、言ってしまっていいのだろうか。
いいや。仲間だからこそ、しっかり伝えるべきだ。
そう決心して、僕はその言葉をつぶやいた。
「死ぬんだ。みんな。イヴも要もユイガも。そして、ほかのみんなも。全員があと少ししないうちに死んでしまうんだ」
「.......。そうか。なら教えてくれよ。今回は死なないようにするからさ。その時の光景を」
そう言われ、僕は話した。
オルトたちで練った作戦が失敗したこと。要は最初に殺され、レイナという殺人犯が要に装っていたこと。そして、僕があまりにも力不足だったこと。
その時のユイガは反論はせず、優しくそうかと相槌を打っていた。
気が付けば夜になっており、太陽の姿はどこにもなかった。
来た...!
その時、僕らの目の前には老いぼれた老父が立っていたのだった。
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