第六十六話 タイムリープ second time
「あ...。ああ....。ああっ....!!」
死体を見るなり、僕はうろたえた。
息が荒い。思考がまとまらない。それに、怖い。
ありとあらゆる考えが巡っては消えを繰り返し、僕はその場に立ち尽くし声を上げるだけだった。
「しっかりしなさい。アドレ君。君は一度この光景を経験しているはずです。正気に戻りなさい!」
確かに僕はこの光景を一度見たことがある。ユイガの死体。イヴの死体。そして、それを見て笑う彼女の顔。それらすべては、僕の脳裏に深く焼き付いている。
だが、それでも怖いのだ。どれだけ経験しようが、怖いものは怖い。
僕は彼女たちが死ぬということが、トラウマになっていたのだ。
「いい加減にしなさい!!」
直後、オルトが僕の頭を強くたたいた。
案外強くたたかれ、僕は頭を抱えてうずくまった。
「今は悲しんでいる場合じゃないですよ。今は、目の前にいる犯罪者を片付けるべきです」
そう言われて目の前を見てみると、そこにはレイナがいた。
彼女は黒いドレスを着ているせいで血が目立っていないようだが、頬には確かな血痕が残っている。
だからこそ、彼女が彼らを殺したんだと真に理解した。
「あら、また会ったわね。久しぶり」
「あれが?」
「はい。あれが、レイナです」
僕とオルトは戦闘態勢に入り、剣。槍といった武器を取り出した。
対してレイナは武器を持たず、そのままゆっくりと僕らへ歩んでいく。
まるで国を散策する旅人のように、ステップを弾ませる。
その光景に、僕らはあっけにとられていた。
「私のスキル、教えてあげようか?」
直後、どこからか彼女はナイフを取り出し、薙ぐ様にナイフを振った。
しかしナイフはリーチが少ないため、予備動作で僕らはよけることができた。
「ま、勝てたらなんだけどね」
そういう彼女の雰囲気は、前の彼女とは違った。
どちらかといえば、ユイガたちを殺した直後の彼女と、雰囲気が似ているのだ。
絶対的強者の風格。それが、今の彼女の雰囲気に合っていた。
つまり僕たちは、蛇ににらまれたカエル同然であった。
「やってみなきゃわからないかもよ?今度も僕の勝ちかもしれないし」
僕がそういうと、彼女はありえないほどの速度で接近し、耳元でささやいた。
「もうあなたじゃ勝てないわよ」
直後、僕は思い切り壁に激突した。
あまりの衝撃に、僕は思わず血を吐いた。
僕が飛ばされた理由はスピードじゃない。信じられないほどのパワーで吹き飛ばされたのだ。
その攻撃力はまるで倍にしたようであり、今の僕では歯なんか立たなかった。
もうろうとする意識の中、オルトがレイナと互角の戦いを繰り広げている光景が、僕の目にはっきりと映った。
倍...?
その瞬間、僕の中でその単語が脳裏にちらついた。
もしそうなら...。
僕は胸に手を当て、『時』スキルを使い、戦線に復活した。
「あなた、なかなかやるじゃない」
「そうですかね。私からしたら、ただ遊ばれているようにしか見えないのですがね」
「まあ実際遊んでいるからじゃないかしら?」
彼女はオルトと押し合っていた状況を、ナイフの一振りで変え、まんまと自身のターンにして見せた。
直後、オルトは肩を押され、彼女に押し倒される形となってしまった。
「さて、あなたはどんなスキルを持っているのかしらね?」
ナイフが、ゆっくりとオルトに迫る。
もうここまで...ですかね。
死を覚悟したオルトは冷静に、抵抗するわけでもなくただ目をつぶった。
間に合ってくれ...!!
『流速』と『時』スキルをフルで使用しているのにもかかわらず、彼女のナイフは止まらない。それどころか、効果を受けていないようだった。
僕が手を伸ばした直後、ざしゅっ。という音とともに、あたりに血が飛散した。
「ち、畜生がぁっ!!」
怒りに任せ、剣をふるう。
カキンッ...!!
金属同士がぶつかり合った音とともに、僕の剣ははじかれた。
ふと彼女の腕を見てみたが、そこにあるのはただの腕。特別な仕掛けなんて一見ないように思えた。
しかし、仕掛けはある。
僕がそれをよく理解していた。
「『倍』スキルか」
「ええ。よくわかったわね。まさか、私のスキルに気が付いたのかしら?」
「まあね。君のスキルの名前はわからないけれど、君は殺した相手のスキルを奪くことができる。そうだろう?」
僕がそういうと、彼女は一瞬目を見開いた。が、すぐに平静を装った。
それほどに、計算高い彼女にとっては予想外だったのだ。
「なぜわかったたの?」
「簡単だよ。君が僕を吹っ飛ばす前と吹っ飛ばす瞬間。あの時、最初は『速』スキル。次に使ったのが、『倍』スキル。そのスキルは僕の仲間が使っていたものだからね。わかるんだよ。仲間だから」
「ええ。ご名答よ。私のスキルは『奪』スキル。当てたご褒美に、今回はじっくりと殺してあげる」
僕は戦闘態勢に入らず、ゆっくりと、自身の胸に手を当てる。
今度は自身の状態を過去に戻して回復。というわけじゃない。
『自身を過去に転送する』のだ。
「これでよくわかった。君は初日に殺すべきだってことが。それじゃあ、また会おうぜ。化け物」
直後、僕は僕自身を過去に転送した。
最後まで読んでくださりありがとうございます!執筆速度は遅いですが、これからもこのシリーズを続けていこうともいますのでブックマークをして待っていただけると嬉しいです。
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