第六十五話 デジャヴ
「そうだな...。彼女は明日になれば僕と同等。またはそれに近しい実力を手に入れているはずだ。僕ならまだしも、それ以外が怖い。だから、固まって動くことにしよう。ユイガたち、そしてリレイルさん。オルトさん。この三チームにそれぞれある程度の兵士を引き連れて捜索しましょう」
そう言ってみたはいいものの、彼女に対する疑問はいくつか残っていた。
まず一つ。なぜこのようなことをしたのか。
そしてもう二つは、なぜ彼女は次第に強くなれるのだろうか。
何度も言うが、日を重ねるごとに彼女は強くなっている。それは紛れもない事実だ。現に、彼女と戦ってみたが、前よりも強くなっていた。
これだけ見れば、普通に思えるかもしれない。
しかし、あまりにも成長スピードが速すぎるのだ。
絶対に何かある。
作戦会議中も、そう疑ってままならなかった。
「それでは、この配置でどうでしょう」
オルトが机いっぱいに地図を広げる。
そこに記されていたのは、人員配置。各方面にアドレ。所長。私。と赤や青で色分けしてマークされている。
配置は全体的に円状になっており、テラスティア宮殿を取り囲むような感じだ。
しかし、僕はこの配置に既視感があった。
なんというか、過去にもやったような配置というのだろうか。
思い出せないまま、僕はその作戦を承諾してしまった。
きっと、これが原因だった。と僕は思う。
「作戦は本日決行。つまり、今からです。合流は日の出です。わかりましたか?」
「これで、この野郎を倒しに行けるぜ。さあ、未来の俺たちの敵討ちだ!」
高々と拳を上げ、ユイガはそう嬉しそうに叫んだ。
「けれど、あまり無理はしないほうがいいわね。もしアドレの言っていることが本当なら、ユイガ。あなただってただじゃすまないかもしれないのよ?」
「あ?お前それ、俺がアドレよりも劣ってるってことじゃねぇか!!」
てめぇ!と声を上げると、ユイガはイヴのことを追いかけ始めた。
怒っているユイガとは裏腹に、イヴはあっかんベーをして挑発をし、円を描くように宮殿内を走り回った。
子供じゃないんだから....。
そう思うと、僕は深くため息をついた。
「アドレ君。ユイガ君たちのほうに強力な隊員を二人ほど編成しておきました。だから彼らのことを心配せず、思い切ってくださいね」
気が付いた時には、オルトは僕の横にいて、そして言った。
強力な二人。か。
その言葉に、僕は引っかかりを覚えた。
きっとそれですらも意味がないのではないか。と、ふと考えてしまう。
「わかりました」
そんな僕の考えを勘づかれないように表情を真顔で硬め、そのまま僕は配置についた。
一つ一つ。丁寧に民家などのオブジェクトを見張りながら、少しずつ捜索範囲を広げていく。そのスタイルを維持したままやっているはずなのに、僕らのほうでは何も手掛かりはなかった。
疲れ果ててふと空を見ると、月が沈みかけていた。
そう、日の出が近づいていたのである。
急いで引き返つつ捜索もしたけれど、やはり手がかりはなし。テラスティア宮殿に着くころには、もうとっくに朝日が顔を出していた。
慌てて顔を出してみてみると、オルト。リレイルのチームはすでに宮殿の前におり、静かに待機している。
遅れた僕は、あまり顔を出したくはなかった。
「そっちはどうでしたか」
その言い方だと、二チームはどちらも収穫がなかったらしい。
しかし、それはこちらも同じである。
僕は首を横に振って、何もなかったことを伝えた。
「そうですか。ところで、ユイガ君たちを見かけましたか?てっきり一緒に合流していたのかと」
オルトにそう言われ周りを見渡すと、ユイガたちのチームはどこにもいなかった。
太陽はとっくに出ているため、僕たちと一緒にいると考えても不自然じゃない。
しかし実際は、ユイガたちのチームは僕たちと合流はしてはおらず、行方をくらませた。
「おぬしたち、少し見に行っていてくれぬか。わしはここで待機して待っておる」
「わかりました。それじゃあアドレ君。いこう」
そういってオルトは僕と数千ほどの大軍を連れて、足早に、ユイガのチームが向かっていた方向へ歩き出した。
しかしいくら歩こうにも、どこにもいない。
一歩。一歩。そう確実に進んでいるはずなのに、どこにもいないのだ。
いやな予感がする。
ずっと感じていたつっかかりのようなもの。それが、今でもずっと喉の奥にあるような感じがした。
何歩ほど歩いただろうか。
少なからず、僕よりもユイガたちのほうが奥へと進んでいたのは確かである。
ユイガたちが進んだであろう通路に、血痕が残っていた。
血痕の色は赤黒いが、まだ時間は立っていなさそうだった。
「これは...!」
オルトが奥へ奥へと進んでいく。
次第に血痕の量は多くなっていき、気が付けばそこは血の海と化していた。
「...!!」
その血が湧いている場所を見ると、僕は思わず腰を抜かした。
そこにいたのは紛れもない、山積みにされた死体の山だった。
多すぎて何人。だれが死んだのかさえわからないが、見覚えのある顔がその中に入っていることに気が付き、はっきりと理解した。
ユイガたちは殺されたのだと。
最後まで読んでくださりありがとうございます!執筆速度は遅いですが、これからもこのシリーズを続けていこうともいますのでブックマークをして待っていただけると嬉しいです。
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