第六十四話 白状
もし本当に僕の仮説が正しいのなら....。
僕の仮説を確かめるべく、僕はレイナの攻撃を受け流し、反撃する。
彼女の攻撃は、以前の貧弱さを感じられないほど重かったが、僕と対峙した時ほどではない。いや、到底及ばなかった。
つまり、僕の仮説は正しかったのである。
彼女は徐々に強くなっているのではないか。と。
実際その通りで、僕の刃は彼女の頬にかすり、少量の血を流した。
「もう、お前は僕に勝てない」
そうはっきりと、僕は断言した。
彼女は苦虫を嚙み潰したように顔をゆがませ、ひどく癇癪を起していた。
「くそっ...!!」
その後何度もレイナが攻撃しようとも、僕は紙一重で回避する。
重力。炎。水。そして透明化。ありとあらゆる攻撃手段で挑まれようとも、先ほどと同様。僕にはダメージすら入らない。
逆に僕が回避する度。レイナが攻撃するたびに僕がカウンターを入れ、確実に彼女へダメージが入る。
気が付けば、彼女はすでにボロボロになっており、立っているのもやっとだった。
「くっ..........!!」
すると、彼女は僕に背を向けて走り出した。
逃走。それを察した時には、彼女の姿は消えていた。それほど彼女のスピードが速かったのである。
しかしそれ以上に、僕が油断していたのだ。
「逃がした。けど、これで変わった。未来が変わったんだ」
要は過去に、ここで死んだ。
しかしここにいるのは、未来から来た僕。要ではない。
ついに、未来が変わったのだ。
その確かな実感で、僕は拳を強く握りしめ、喜びに浸った。
「さて、テラスティア宮殿に行くか」
もう夜だから、オルトさんたちはいるのだろうか。
そう心配しながら、ユイガたちと合流し、テラスティア宮殿に向かった。
「急げ」と言って彼らをせかす。
彼らは困っていたけれど、一刻の猶予もない。話すほどの余裕はなかった。
なんせ彼女は、あと数日もすればだれも止められなくなってしまうのだから。
「こんな夜遅くにどうしたんですか....って、君はあの時の」
僕が大きな扉を開けると、ちょうど帰る時間だったのか、ばったりオルトと出会った。
彼は驚きと困惑がり混じっているようで、少しの間言葉が出ないようであった。
「オルトさん。先ほど例の殺人犯と出くわしました。それで重要な手がかりを集めたので、リレイルさんも集めてくれませんか」
「え......ええ。わかりました。今すぐ所長を連れてきます」
オルトがリレイルさんを呼ぶために去ったのち、僕は深く安堵の息を漏らした。
よかった。まだ間に合う。
「ねぇアドレ。今日の君、普通じゃないよ。さっきまで一緒に探そうって言ってたのに、急に一人で行くとか言い出して。それに、戻ってきたかと思えばテラスティア宮殿に行くって言いだして。なにかあったのかい?」
直後、要が心配するようにこちらに声をかけてきた。
無理もないよな。と心の中で思う。
僕はやりすぎたのだ。要を助けるのに必死で、はたから見た異常性を計算していなかったのだ。
異常だと思われれば、みんなは僕についてこなくなる。それでは、要や、みんなが死ぬ未来は変わらない。
ただ、死期が数日延びただけになってしまう。
だからこそ、僕は言うことに決めた。
「後で全部話すから。それまでは、何も聞かないでほしい」
僕はそう言って、テラスティア宮殿の中に入った。
僕が入った時には、もうすでに準備は整っていたらしい。入るなり、オルトが案内してくれた。
部屋に入ってみれば、そこには静かに茶を味わっているリレイルがいた。
彼女は僕らの姿を見るなりコップを置き、静かになんじゃと僕らに聞いた。
「みんなに言いたいことがあるんだ」
各々が席に着く中、僕は一人立ったまま、静かに息をのんだ。
信用してくれるだろうか。
そう、不安に思ってしまう。僕は、恐れているのだ。未来から来たといって信じてもらえず、結果的に何も変わらないことが。
やってきたことが無駄だと思いたくないのだ。
静かに息を整え、そして、言った。
「僕のスキルは『時』スキル。サリパンでのレベルアップによって、過去や未来に行くことがでるようになった。僕は、僕は....。未来から来たんだ」
全員が息をのんだ。オルトたちは『時』スキルに驚いたのだろうが、僕の仲間は違う。
わざわざ過去にさかのぼるようなことをしてまで伝えたい。成し遂げなければならないことがあると、察したのだ。
「それで、なんで過去にまで戻ってきたんだ?」
ユイガが純粋な疑問を僕にぶつける。
「今日、例の殺人犯に出くわしました。名前はレイナ。僕でも倒せる相手でした」
「その子と君が過去に戻ったのは、何か関係あるんですか?実力はあなたよりも下のはずですが...」
「違うんですよ。彼女は日が経つにつれて強くなるんです。それで、要。そして、ユイガとイヴが殺されました」
死んでしまった当事者であるユイガとイヴ。そして要は、僕の話を聞き終えるまでずっと口をあんぐりと広げていた。
それもそのはずである。なんせ、急にあなたは少ししたら死にますといわれても、納得できるはずがなかった。
ユイガが口を開ける。
ふざけているのか?と、ユイガが次言うセリフが簡単に予測できた。
僕は少し身構えたが、次にユイガから出てくる言葉は、僕の予測とは全くかけ離れたものだった。
「それなら、俺らはどうすればいい?」
と。
最後まで読んでくださりありがとうございます!執筆速度は遅いですが、これからもこのシリーズを続けていこうともいますのでブックマークをして待っていただけると嬉しいです。
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