第六十二話 じゃあな
それは、アドレたちが警備隊を引き連れて、捜索を開始し始めた時のことである。ある廃れた一軒家の地下。そこに、一人の少年がいた。
そう。もう一人のエディタ・アドレである。
アドレは薄暗い地下で、ほのかにともる照明を頼りに机いっぱいに地図を広げた。もちろん、地図というのはウェスリーア。つまり、今現在アドレたちがいる国である。
彼は指でアドレたちがいる場所をなぞっていき、そして最後に別の場所に指を置いた。そこは、アドレたちとは真逆の方向であった。
「早くしろよ。さもないと、あいつは俺以外では止められなくなってしまうぞ。だから急げ。もう一人の俺」
彼は一人、地下で不敵に笑うのであった。
「これはまた、ひどいな....」
僕とリレイルは、前回僕とイヴが通ったルートを主として探索していた。
通る道には死体ばかりで、もう何人死んでいるかもわからない状況であった。
「そういえばアドレ。おぬし、レベルはいくつじゃ?」
「レベルはたしか6だったような....」
うろ覚えである。なにせ、レベルアップした時、僕は俺に意識をゆだねていた。故に、知っているのは僕ではなく俺なのだ。
「そうか。おそらくだが、犯人はレベル2くらいの実力者とみてよいだろう。犯人は我々を避けている。なぜ避けているのかは簡単じゃ。わしらよりも犯人のほうが弱いからじゃ。じゃからきっと、探し出せればきっととらえられるはずじゃ」
違う。何かが、違う。
僕は、彼女の発言に違和感を覚えていた。
確かにそれが理由だと思う。だけど、それだけじゃない気がする。もっと何か、その先に何かがあるようでならない。
「ちなみにリレイルさんのレベルはいくつなんですか?」
「わしはレベル7じゃよ」
それなら頼れるな。と、心の奥底で思うのだった。
その後各々合流し、その日の収穫を聞いてみたが、どれも収穫はなかった。
一日。また一日と、どんどんと日が過ぎていく。それに伴って、どんどんと被害者が出始めている。そうして一週間と半日が過ぎた今。気が付けば、被害者は700人を超えていた。
そんな状況のせいで、僕はまともな睡眠が取れなかった。
当たり前である。なんせ、いつ殺されるかわからない状況なのだから。
真夜中。僕は宿の外に出た。
「少しの気分転換だ」
そういって外に出た時だった。宿の入り口に、二人の死体が広がっていた。
二人の目はうつろで、出血も多量。両者ともに真っ二つに斬られていた。
足趾である。
そんな二人。いや、ユイガとイヴの死体はこちらを見ていた。
「い......イヴ...?ゆい....が?」
動悸が激しい。今にも胸がはじけ飛びそうである。
夢だ。きっとこれは、夢だ。
そう願うが、現実であることは明らかだった。
「やあ、アドレ君」
その時だった。目の前に、要が現れた。しかし持っている刀には血が付着しており、その笑顔には凶器がにじみ出ていた。
犯人は、要だった。
「要。どうするつもりだ....?」
「なにって、決まってるでしょう。あなたを殺すのよ」
「...?お前、誰だ?」
彼女の口調に、僕は違和感を覚えた。
普段彼女の一人称は『僕』私ではないのだ。それに、こんなに口調は丁寧ではない。
「何を言っているのよ。これが普通よ」
「いいや。違うね。なんせ僕は彼女と旅をしてきた仲間だから。それぐらいの違いなんて分かって当然さ」
「そう」
すると彼女の姿は見る見るうちに変化していき、最終的に見覚えのある姿になった。
その姿を、僕は知っていた。
「やっぱり、君だったんだね...!!」
そう、あの時僕が助けた少女だった。
「なんでこんなことをする?」
「世界が淘汰した私という存在を、みんなに思い知らせるためよ」
そういう彼女はどこか嬉々としていて、ほんの少し身震いを起こした。
「要はどうした?」
「ああ。彼女はとっくに殺したわよ。あなたたちが私を探していた時にね」
あの時。つまり、僕がオルトさんと情報を共有していた時にいた要は、もうすでに彼女と入れ替わっていたのだ。そしてその情報をもとに、別の場所で殺害を行い、ことごとく僕たちの捜査の目から逃れていたのか。
そう思うと、まんまと手中に収められていた気がして、悔しくなった。
静かに剣を構える。しかし相手は何も構えず、ただ呆然と立ち尽くしている。
しばらくの静寂のなか、その静寂を打ち破ったのは僕だった。
先制攻撃を仕掛け、その刃が彼女に到達するはずだった。しかし、一定の距離にまで来ると、その刃は止まってしまった。
「それなら...!」
時スキルを使用し、バリアが張られる前にまで時間を戻す。
ついにその剣が届き、勝ったかと思われた。しかし、彼女はその剣を片腕で、そして無傷で受け止めていた。
その後も何度も剣をふるって攻撃を仕掛け。当てるが、何をしてもノーダメージ。そして何度も動き続けたせいで、僕の体力はもう残されていなかった。
どうする?どうすればいい?
そう考えている間にも、彼女は僕へ歩を進める。
「終わりよ」
そういって彼女がナイフを振りかざした瞬間、僕は思いついた。
瞬間、僕は自身に手を当て、スキルを発動する。
「死ぬ前に聞いておきたいことがある。君の名前は?」
「レイナよ」
「そうか、レイナ。じゃあ過去でまた会おう」
そうして、僕の体は過去に転送された。
最後まで読んでくださりありがとうございます!執筆速度は遅いですが、これからもこのシリーズを続けていこうともいますのでブックマークをして待っていただけると嬉しいです。
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