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第五十九話 俺の記憶 其の三

僕はまた夢を見た。その夢はいつものような夢とは違く、薄暗い空間で目を開けた。床はかなり年季の立った石煉瓦でできており、よほどここが使われていないことがうかがえる。さらには唯一の便りである明かりも石煉瓦同様にかなりの月日が経過していたようで、時々明かりを消し、そして羽虫を集めていた。

 そんな空間で一つ、水が溜まっている場所があった。そこには多くのゴミが合わさって壁のようになっており、そこから少しの水が垂れている。しかし地面に穴が開いているところを見ると、水は一定以上は玉来ということが分かった。

 そしてそこには、倒れこむユイガの姿があった。ユイガの胸部からはひどい出血が確認でき、通常では流れないほどの寮が流れていることから、もう助からないと、わかってしまった。


「ユイガ......」


僕の意思とは関係なく、夢の主はそう名前をつぶやいた。最初は歩いていたが、徐々にその速度は速くなっていき、気が付けば全力で走って、ユイガの元まで来ていた。

 息を切らしながら、ユイガの体を持ち上げる。その時気が付いたが、ユイガの体は動いていなかった。きっとかなりの時間が経ってしまったのだろう。彼の肌を触ってみると、氷のように冷たかった。

 守れなかった.......。

 夢の主の、そんな後悔の気持ちが、僕にも流れてくる。その気持ちは、僕も一緒だった。なぜなら僕も同じような経験をしたから。もっと力があれば。もっと僕がうまく立ち回れていたら。そしたら、こんなことにはならなかったんじゃないか。と。


「ごめん...。ごめんっ........!!」


声にならない声で、夢の主は涙を流し、そして叫んだ。こんなことをした犯人を呪う気持ち。そして、自身の力のなさを恨み、叫んだ。

 しばらく叫んだのち、夢の主は少しの余裕を取り戻した。少しあたりを見渡すと、ユイガの隣にはいつもつけていた赤いハチマキを、ユイガが大事そうに強く握っているのが分かった。

 僕はそれを何とかとると、慎重に頭に巻いた。直後、ユイガの記憶が夢の主と僕に流れ込んでくる。

 生まれた時から死ぬまでの間、そのすべてが流れ込んでくる。その中に、僕は引っかかるものを見た。一つは味方であったはずのレイナという少女が敵であったこと。しかし、その少女の特徴は今日であった少女と酷似していた。

 そしてもう一つは、ユイガの隣にいる一人の少年。そう、俺だった。しかし俺は自分のことを僕と呼んでいて、さらには今まで僕には見せなかった笑顔さえ見せている。

 そんな彼が、どうして変わってしまったのだろう...?

 そう疑問を抱いていると、聞こえるはずもないユイガの声が聞こえた。

 アドレ。あとは任せたぞ。

 と、そうメッセージを残し、ついにユイガはこの世界から消えた。


「....。僕は.........。.....俺は」


夢の主、エディタ・アドレは、静かに拳に力を籠め、思い切りこぶしの握った。


「俺は、必ずレイナを殺す......!!」







 その時、僕は目を覚ました。あたりは先ほどの暗い空間ではなく、右側にある窓から漏れ出る日光でこの部屋を照らしていた。

 起き上がってみると、部屋が異様なほど静かなことに気が付く。いや、人の気配が一切しないのだ。普段ならユイガと一緒にこの部屋にいるのだが、ユイガの姿は見当たらない。

 (とりあえず外に出てみるか....)

 部屋で何もすることがない僕は、なんとなくの気持ちで扉の前にまで来ていた。その時、僕はドアノブまで延びようとしていた腕を止めた。

 外に出る前から、多くの人の声が聞こえる。しかし先日とは違い、にぎわっているというよりかは、どこか騒々しいように感じた。

 (なにかあったのだろうか。確かめに、行こう)

 そう決心して、僕はその扉を力強く開けた。

 目の前に広がる光景を見て、僕は息をのんだ。

 そこには倒れこんでいる人が数えるだけで20人ほどおり、多くの人々がその人らを取り囲むように群がっている。しかし倒れこんでいる当の本人たちは腹部や首。そして頭から出血しており、完全に意識がないようだ。

 そう、彼らは死んでいた。


「失礼。少しお時間よろしいですか」


目の前に広がる光景を前に委縮していると、一人の男が僕のほうへ駆け寄ってきた。

 赤い髪色に瞳。情熱を連想するような透き通った赤色だが、僕へ向けたその言葉には情熱なんてものはなく、そこには疑いしかなかった。

 しかしこの姿を、僕は知っていた。


「私の名はオルト。この国で国務警備隊員最高司令官を務めている。昨晩、ここで大勢の人が死んだ。そのことについて、何か知っていること。または、見たものを話してほしい」

「特に......ないですかね」


僕は一瞬だけ彼女の姿を思い出した。もしかしたら彼女なんじゃないかと、そんなもしもの可能性のことでいっぱいになり、僕は口ごもった。


「そうですか。また何かあったら、この近くにあるテラスティア宮殿にお越しください。それでは」


そういって、オルトはその場所を離れた。

最後まで読んでくださりありがとうございます!執筆速度は遅いですが、これからもこのシリーズを続けていこうともいますのでブックマークをして待っていただけると嬉しいです。

 これからもこのシリーズをよろしくお願いします!

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