第五十七話 その先に
父が死んだ日。その次の日には、異変の片りんすら見えなくなっていた。今回の異変は多くの人たちに被害があったようで、ところどころの施設が損壊していた。そして、人も確かに減っていた。異変をほおっておいたら、こうなってしまうのか。と、この国を見てそう思った。
そんな異変を解決したのが、エディタ・グイドである。彼自身もまた被害者であるのに。本来なら、生き返ったら死にたくないと思うはずなのに。あの人は、父は地震の危険を顧みず、異変を解決したのだ。その犠牲を、この国の人たちは知っている。きっと、もう二度と異変を放っておくことはないだろう。僕はそう確信した。
異変を放置。隠ぺいしていたアルベルト王は国民からの反感を買い、王を辞任した。それに関与していた王国軍全員も辞任するため、近頃に新たな警備隊の結成があるらしい。また、それを必死に止めようとした功績から、ルベルトが次の王になる予定らしい。彼から君は警備隊の長になるべきだと進められているが、僕にはやらなくてはならないことがあるといって断った。
それからは大変だった。ルベルトと僕が知人であり、国を敵にしたということがばれ、ユイガたちからたくさん言い寄られた。特にイブからは日が暮れるまで説教された。だけど、それは優しさであった。僕も、それを知っていた。だからこそ、申し訳なくて、ずっと土下座をした。するとみんなはあきれるようにいいよ。と言ってくれた。
これですべてが元通りというわけではない。僕の中には、もう戻らない後悔と罪悪感が残っていた。それは間違いなく父が死んだときにできたものだ。僕は、救えた。救えたからこそ、より後悔している。
その日の夜も、僕は宿屋の前で月を眺めていた。月はほのかに輝き、まるで黄金ともいえるその色で僕を魅了する。その時だけは、何も考えずに入れた。
「最近、元気ないわね。やっぱりグイドさんのことで気にしてるの?」
「君にはわからないだろうね。僕には救える力を持っていた。もう少し強くなろうと思えていれば、何度も戦って戦って、レベルアップしてた。なのに僕はしなかった。そして、救えなかった。それは、僕のせいなんだ...」
その時、僕の頬に強烈な痛みが走った。あまりの威力に、僕は頬をさすってイヴのほうをにらんだ。何するんだ!と言いかけたが、彼女の顔を見たときには、その言葉は引っ込んでいた。
彼女は泣いていた。涙袋に涙を上限までため、歯ぎしりをして、泣いていた。その顔は怒りと悲しみが混在していて、そしてその感情が向かう先は、僕であった。
「何がわからないだろうね。よ!私たちだって後悔しているにきまってるでしょ!!いや、私だけじゃない。みんなが後悔してる!勝手に一人で抱え込んで。説教でも言ったわよね。仲間は、一人が傷ついたら支え合うためにいるの。みんなで支え合って生きていくのよ。私は、あなたと一緒にいたい。だから、独りよがりで判断して、どこかに行かないでよ!!」
そういうと、イヴは僕の服に顔をうずめた。
ああ。なんて僕は馬鹿なんだろうな。そう思うのと同時に、父の言葉を思い出した。「救えない命が、この世には二つある。一つは何をしてもダメな命。もう一つは、本人が死を覚悟してしまった命だ」
父は暴走状態が収まった後、覚悟を決めていたのだ。もう助からないと、わかっていたから。そうわかると、もう何をしてもダメだったんだなと振り切った。
「ありがとう。僕が悪かったよ。ごめんね。不安にさせちゃって。これからは、みんなで分け合ってこう。苦しいことも、楽しいことも。全部」
きっとこの日の出来事は一生忘れることはないんだろうなと、僕は静かにそう感じた。
翌日。僕たちはついに出発することにした。早朝ということもあり、まだ薄暗く、ほのかに太陽が顔を出していた。それなのに、多くの国民が僕たちを見送ってくれた。英雄の旅立ちを見届けるために。
「何かあったら言ってくれな。いつでも力になるから」
そういって、ルベルトは僕に手を差し出した。そのシチュエーションで、僕は最初のころを思い出した。
ルベルトと会った時も、こんな感じだったっけ。
過去を振り返りながら、僕はルベルトの手を取った。
そうして僕たちは歩き始める。あれほど手を振ってくれていた人々が、今となっては黒い粒のようにしか見えず、何をしているかもわからないほど小さくなっていた。だけど、ありがとう。という気持ちだけは伝わってきた。
すると日差しが次第に強くなっていく。太陽は完全に空に顔を出しており、そのまぶしさで僕は太陽を手で隠した。
僕もいつか、父さんみたいになりたい。そして、もう誰も失いたくない。誰一人として...!!
その明確な意思を持って、僕はこぶしを握り締めた。
「見えたわ!」
イヴがそういって指をさす。その方向を目を凝らしながら見ると、白い建造物のようなものがあった。しかしそれだけではない。ほかにも様々な建物がある。
「あれが、ウェスリーア」
こうして僕らは、ウェスリーアへたどり着いた。
最後まで読んでくださりありがとうございます!執筆速度は遅いですが、これからもこのシリーズを続けていこうともいますのでブックマークをして待っていただけると嬉しいです。
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