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第五十五話 異変を終わらせるために

アドレがちょうどグイドを殴った時のことである。アルベルト王率いる多くの軍勢は、暴走状態にある人を討伐しては前に進んでいた。しかし長く続いていた異変というのもあり、ルベルトが思っていたよりも、暴走した人たちは多かった。それでも、王国軍はゆく当てもなく目の前にいる暴走状態の者を切り捨てていく。


「父さん」


道中、ルベルトはアルベルト王に声をかけた。王は顔をこちらに向けることなく、なんだ。とだけ言って馬を走らせ続ける。


「父さんは、わかってるんですよね。異変の対処法」

「そうだ。それがどうかしたか」


アルベルト王は手綱を強く握りしめ、今一度馬の首に手綱を強くあてた。馬の走る速度が速くなる。


「それなのに、どうしてこんな無意味なことをするんですか?やっぱり、最愛の人を失いたくないからですか」

「ああ。その通りだ。私はもう二度とリベリアを死なせたくはないのだ。だから、これから私はある場所へ向かう。そう、異変の元凶のもとにだ」


そういって、アルベルト王は指揮を執ると、軍を連れて走っていく。後を追うように馬を走らせるのだが、その道中、ルベルトはずっと葛藤していた。

 それはある日のことだった。母は48という若さでこの世界から旅立った。旅立つ手前、咳や嘔吐などを繰り返しており、容体はかなり悪いように見えた。それでも母はずっと、いつかまた手料理を作ってあげるね。などと言ってルベルトや王に心配させないようにふるまってきた。

 母が死に、ルベルトらは悲しみに暮れた。もう立ち直れない。そう思う日もあった。だけど、それと同時にわかったのだ。死があるからこそ人は尊く、そしてはかないのだ。と。このとき彼は、この出来事を糧にして生きていくことを決意した。

 しかしそれから2年がたったある日のことである。一人の女性が、王宮の扉を開けた。その女性は明らかに母と似ていて、そして、まるで自分の家かのように王宮に入った。


「ルベルト。ただいま」


その言葉を、彼は忘れることはないだろう。なんせ、本当の母親が間の前にいたのだから。しかし何かが違う。その母であって母ではない存在と一日ともに過ごた。それは常に母と変わらず、本当に母が返ってきたのではないか。とさえ彼は思った。それから、八百屋にいた情報屋に聞いた。死者をよみがえらせるスキルは存在するのか。と。


「そういうスキルは聖女ではない限り不可能だろう。だけど、聖女がこの国に来たっていう情報もなかった。もしかしたら、異変かもな」


その言葉通り、彼は次々と死者が蘇ったという話を聞くようになった。そして確信した。あれは母なんかじゃない。母の記憶を持った、別の存在。異変が作り上げたまがい物なのだと。

 だからこそ、彼は強く決意した。これ以上死者をよみがえらせるわけにはいかない。と。








その少し前のことである。エディタグイドは、そこでようやく目を覚ました。起き上がってあたりを見渡すと、周りには心配そうに見つめている僕たちの姿があった。様子から見るに、父はついに勝機を取り戻せたようであった。ふぅ。と安堵の息を漏らす。


「よかった。戻ったんだね。父さん」

「まあな。心配かけてすまなかった。それでなんだが...」


そういって父は起き上がった。父は何かを決したようにこぶしを強く握りしめ、そして僕らにこう言った。


「俺はさっきまで、異変の元凶とつながっていた。だから、異変の元凶の居場所がわかるんだ。俺は今から、その場所に行く。みんな、ついてきてくれないか」


返事を聞くまでもなく、父はその場を去ってしまった。よほど焦っていたのか。それとも...。様々な可能性が頭を駆け巡る。しかし、考えている暇はなかった。父の背中姿は刻一刻と小さくなっていく。


「行こう」


そのたしかに感じた嫌な予感を的中させないためにも、僕たちは急ぎ足で父が歩き出した方向へと向かった。

 その後父と合流することができた。しかし父は、いつものように僕たちのペースには合わせてはくれなかった。道中、いろいろなところを通った。それはどれもこれも、僕が見たことのある景色であり、そして、たどり着いた場所は、僕が知っている場所だった。


「ここって...」

「ああ。お前がクエストで来た場所であり、俺が蘇った場所だ」


そういって、父は入り口にある階段を下っていく。追いつくように僕たちは父の元へ行き、降りている間、僕は父に話しかけた。


「こんなところにあったんだ。なんで父さんがここでよみがえったかは分からないけれど...」

「いや。なんとなくわかるさ。あいつ、弱小な存在ほどより遠くの範囲で蘇らせる。だけど強力な存在ほど、蘇らせる範囲というのは限りなく狭くなる。俺がその最たる例だろう」


父がそう言い終えると、どこかさみしそうにこちらを見て、笑った。

 さみしそうなその父の顔を見るのは初めてで、僕は父になんて声をかければよいのかわからなかった。

 しばらくの沈黙の間もどんどんと前に進んでいき、そして、僕たちはその扉の前にまで来ていた。

最後まで読んでくださりありがとうございます!執筆速度は遅いですが、これからもこのシリーズを続けていこうともいますのでブックマークをして待っていただけると嬉しいです。

 これからもこのシリーズをよろしくお願いします!

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