第五十三話 父の暴走
ちらりと、父はこちらに視線を向ける。目にはオーラと同様の光が宿っており、しばらくこちらを見つめていた。
父が右足を下げ、戦闘態勢に入った瞬間。僕の眼前に父がおり、気が付けば遠くまで吹き飛ばされていた。そのこぶしの強さに、思わずうめき声をあげ、嗚咽を漏らした。しかしそれでも、父の攻撃は止まない。宙に放り出された僕に追いつき、そのままおなかめがけて蹴りを入れた。どごっ。と地面に穴が開く音とともに、僕の背骨は折れた。
「アドレ、しっかり!」
イヴが僕の元まで来ると、スキルで僕のことを癒してくれた。おかげで骨折は元通り。先ほどまで追っていた傷まですべて元通りになっていた。
「ありがとう」
そのまま父へ一撃を入れてみようと、剣を振りかざしてみるが、何かに阻まれ剣の先は父の目の前で止まってしまう。しかしこの光景を、以前に診たことがあった。そうあの時、僕が俺と交代した時である。そしてあの時、うかつにも父はこの現象について一から解説してくれていたため、理屈を理解することはできた。が、肝心の対抗策はなかった。
あの時は俺が似たようなスキルを持っていたからできたもの。僕では俺のような芸当はできないと、気が付いていた。
「とりあえず、イヴは先にユイガたちの回復を頼む。僕はその間、父さんを引き付けておくよ」
そういって、僕はイヴの前に出た。
「わかったわ。けど、レベル5のあなたが最高戦力なのを忘れないでよね」
レベル、5?そうあっけにとられていると、イヴはユイガのほうへ向かって走って行ってしまった。
レベル...5。もしかしたら。とそう思い、父へ近づいて圧縮された空間に触れてスキルを発動した。すると、パリンッ。とガラスが割れたような音とともに、父を覆っていたバリアのようなものが消えた。
そしてその時、僕は確証を得た。レベル5。いつレベルアップしたかはわからないが、おそらくこの時スキルを特定の範囲に入っているものに対して有効になるようになったのだ。これなら、父のガードと父の暴走状態を同時に戻すことができる。
僕が今一度手をかざそうとすると、父は僕のスキル効果を理解したのか僕では視認できないほどのスピードで僕のほうへ急接近し、そのこぶしを僕へ向けた。生存本能のせいか、思わず目をつぶる。
しかしその時、うっすらとした視界の中、誰かが僕の前へ出たかと思うと、一人の男が父の攻撃を何とか耐えていた。予想だにしえなかった出来事に、僕は目を開けた。
そこにいた男の容姿に、僕は既視感を覚える。そう僕を助けたのは、僕の親友であるユイガであった。
「間に合ったようだな。アドレ。けがはないか?」
そう心配するユイガの頬には冷汗が流れており、僕は長くはもたないことを察する。しかしその気丈な振る舞いを見ていると、この勝てない戦いに勝つことができるかもしれない。
僕は頭に手を添えると、『時』スキルで俺に交代しようとした。しかし、いつも流れてくるあの記憶。それが流れてこないのだ。それどころか、俺と交代する気配すら見えない。
どうしたんだと手を見つめる暇はなく、そう考えている間も刻一刻と時間は過ぎていく。僕はこの時初めて、自分一人で解決しようと思った。
「ユイガ、僕に合わせられる?」
そういうと、ユイガは鼻で笑って、当たり前だと言って父のほうへ突っ込んでいった。しかし見えない何かに阻まれ、ユイガの拳は一定の距離で止まった。何度も父の当てようと拳を押すが、それ以上は押せない。
その時に、僕は父へ向けて時スキルを使い、いともたやすくその壁のような何かを壊した。パリンという音とともに、ユイガの拳が父の左ほほに直撃した。しかし、ユイガの自慢の拳を食らってもなお、吹き飛ばされずに立っていた。ハッとするのもつかの間、ユイガは次の瞬間に遠くまで吹き飛ばされていた。
最後まで読んでくださりありがとうございます!執筆速度は遅いですが、これからもこのシリーズを続けていこうともいますのでブックマークをして待っていただけると嬉しいです。
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