第五十話 突入
「何者だ!」
王宮の門へかかる橋の前、一人の兵士が声をかけると、そのまま僕たちの行く手をふさいだ。王宮の周りはあたり一帯が水で覆われているため、王宮に入るにはここを通るほかはなかった。
怪しい行動をすれば、ここで数千の兵士と戦うことになる。そう僕は静かに悟り、ルベルトの一歩前に出た。
「冒険者のエディタ・アドレです。少し王に用事があってここに来ました」
襲撃があったのは今さっき。いくらサリパンダとはいえ、情報伝達が飛んでも入アというわけではないはずだ。なら、まだ下っ端の兵士には僕の情報は伝わっていないはず。あくまで予測ではあるが、その可能性に賭けた。
「すまないな。アルベルト王は今用事があるようでね。謁見するなら後にしてくれ」
すまないといわんばかりに、兵士は僕たちに向けて手を合わせた。
「用事があるってさ。どうするルベルト?」
僕が話している最中にルベルトにアイサインを送ると、彼はそれを理解したようで、含み笑いをして兵士の前に出た。彼の顔を見て、兵士は驚く。
「父上に会いたい。ここを通してくれないだろうか」
「....まぁー、わかった。通そう」
かなり渋っていたが、兵士は最後にため息をついてその場から退いた。そして誰もいなくなった橋を渡って、ようやく王宮の中へ侵入することに成功した。
王宮へいざ入ってみると、そこはいかにも高そうな備品がいくつも飾られていた。天井にあるシャンデリア。そして絵画。どれも僕たちの資産では到底買えないものであった。しかし、それらに目をやるまでもなく、走ってどんどん王宮の中へ進んでいく。
「侵入者だ!!」
ようやく情報が出回ったのか、兵士たちが進むほうにもそして、反対方向からも、二方向で囲んでいた。別の通路があればよかったが、最悪なことにここは一本道であり、進には兵士たちをいちいち相手しなくてはならない。
一刻も早く進みたい僕は、そのまま走って兵士たちをなぎ倒していく。後ろから追ってくる兵士たちもいたが、無視して王室へ向かう。
「ここを右!」
ルベルトの指示で、兵士に追われながら僕たちは茶色の扉を開ける。扉はかなり重かったが、幸いなことに二人で押していたため、いともたやすく開けることができた。
そこに広がっていたのは、真っ白な空間であった。しかし窓はついており、そこから青空が見えるため、ここが異空間ではないことが分かる。だとしてもすべてが白色の部屋。柱もすべて。それがわかると、その部屋が奇妙であり、頭が変になりそうであった。
しかし幸いなことに、床には赤色のカーペットが敷かれていた。カーペットの端には数多くの兵士たちが姿勢よくたたずんでおり、肝心のカーペットさえ心休みにはならない。
「お前がエディタ・アドレか」
カーペットの終着点。そこには赤い玉座に座るアルベルト王の姿があった。彼は堂々と座っており、まるで僕たちを見下しているようにも思える。
「お前はこれ以上、この異変にかかわるな。かかわるのであれば殺すぞ」
「なぜ?」
「お前が、私たちの不安要素だからだ」
「そうかい。なら、なおさらこの異変から退くつもりはないよ。僕は、友を助けたいからさ」
不安要素。その言葉を聞いた僕は、不安要素だから殺す。その思想が、僕の正義感を強く刺激して怒りへと変えさせた。それはルベルトも同じであり、ふと見れば眉をひそめて歯をギリギリと鳴らしていた。
アルベルト王は仕方がない。というと、グレイヴ。と誰かの名前を呼んだ。すると、ガタイのいい一人の男が僕らの前へ立ちふさがった。露出している肌からは浮き彫りになっている筋肉が見え、かなりの実力者だと僕は確信した。
「アドレ、逃げろ!グレイヴはレベル9だ!!まともにたたかえば....」
ルベルトがそう忠告するときには、グレイヴは僕の目前まで来ており、僕の腹部に強烈な一撃を与えた。思わず反吐をはき、膝をついてしまう。
勝てない。たったの一撃で、僕はそう確信してしまった。それでもと、僕は立ち上がる。
「ほう。まだ立つか」
「......発動。.........流速」
僕がそういうと、あたり一帯の動きがゆっくりになる。それに乗じた『時』スキルの発動により、先ほどの四倍以上の速度でグレイヴの懐に潜り込むことに成功した。だが、グレイヴはそれ以上のスピード。なんなら先ほどと変わらない速度で僕の攻撃を回避し、カウンターを僕に浴びせた。あまりの重さにスキルを解除してしまう。
これも効かない...。
奥の手を使ってなお圧倒される。レベル9の強さを目の当たりにした僕は、あまりの絶望故に力が抜けてしまった。
「もうおしまいか。なら、今度はこちらから行くぞ」
直後、大きな爆発がサリパン全域にとどろいた。
その音は、グイドたちにもしっかり届いていた。
「今の音、聞こえたか?」
グイドが全員に確認をとると、全員がうなずいた。そして、全員が思っていた。アドレがここにいない理由。それは、王宮で誰かと戦っているからではないか。と
すると、ユイガが一人立ちあがった。彼の拳は強く握りしめられており、確かな決意が見えた。
「俺、何か嫌な予感がします。グイドさん、俺王宮に向かいますよ」
「だめだ。一人で生かすなんて、自殺行為でしかない」
止められたユイガの顔は鬼気迫っているような表情をしており、何よりアドレが大切なのかをグイドは察した。
「早くいかせてください!」
「はぁ。さっきから言ってるだろ。一人ではいくなって」
一人では。そこを強調してグイドが言うと、ユイガは疑問を覚えた。それに対してグイドはにやりと笑うと、立ち上がった。
「お前らも行くぞ。助けたいんだろ?アドレを」
そういって、グイドはユイガのもとへ寄る。
「いっただろ。一人ではいくなって」
そうして、グイドたちは王宮へ向かうのだった。
最後まで読んでくださりありがとうございます!執筆速度は遅いですが、これからもこのシリーズを続けていこうともいますので、ブックマークをして待っていただけると嬉しいです。
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