第四十九話 Wow
「それで、どうしてアドレが好きになったんだ?」
あらかた片付けが終わって、ユイガはイヴの隣まで来るなり座った。そして静かに一息つくと、そう疑問を投げかけた。
先ほどまで取り乱したユイガはもうなんともなく、冷静であった。しかしイヴはいまだ頬を赤らめている。それどころか、余計に厚くなっているようにも見えた。
「レベル4の男に絡まれていた時、あったじゃない?」
ユイガを見ることなく、壁に向かって言う。
「あったな。もしかして、助けられてアドレに惚れたってことか!?」
そんなチョロインのテンプレみたいな惚れ方あるのか。と疑問に思いつつ、イヴのほうを見てみる。彼女はそっぽを向いており、表情を見ることはできなかった。しかし、髪の毛から出ている耳の端が赤くなっていることに気が付き、ユイガはうそじゃないことを理解した。
「私はあくまで聖女。いつも守られてきて、そしてそれが日常だとも思ってた。だけどある日、私はその国から飛び出した。そしてあの時の男に襲われた。そんなときに、アドレが助けてくれた。本当にうれしかった。だけどあの男は強かった。全員から見ても、あれは絶望的な状況だったはず。それでもアドレはあきらめなかった。それどころか、あの男を倒した。まだレベル1だったのに。絶対にあきらめない。私は、彼のそんなところが好きなんだな。って」
あいつはあきらめない。それは間違っている。アドレは馬鹿で優柔不断なだけだ。どっちかの選択なんて取れない。そんな奴だから。
彼女の話を聞くと、ユイガはなんとなくアドレに惚れた訳がわかったような気がした。
「そうか。いつかその恋が実るといいな。それじゃあ、おやすみ」
そしてユイガは腰を上げると、積み立てられた食器や鍋などを片付け始めた。その時イヴはユイガの片づけをしり目に、目をつぶった。
「頑張れよイヴ。そして、彼女の思いにこたえてやれよ。親友」
片付けが終わって眠りにつく際、ユイガは一人でそうつぶやくのであった。
それから毎日、僕はルベルトの手伝いをすることになった。いつものように商店街を訪れて情報収集。そして成果はなし。そのあとルベルトとは解散して、みんなで夕食を食べる。それがずっと続いてはや2週間。あまりの進展のなさに違和感を覚えた僕は、商店街でルベルトを呼び止めた。
「なんや?」
ルベルトはきょとんとしており、とてもうそをついていたり隠し事をしているようには思えなかった。だけど、何かがおかしい。その自信の直感を頼りに、ルベルトに質問を投げる。
「あまりにも進展がなさすぎじゃない?何か、隠し事をしてるの?それなら僕に言ってほしい」
それを聞いたルベルトは、一度顔が動いたがすぐに戻り、平静を取り繕う。しかし僕には思い通しであった。すかさずほら!とルベルトを指さす。
「やっぱり隠し事してる!だめだよ。一人でか抱え込んじゃいけない。大丈夫。僕たちならなんとかできる。だから...」
「無理だよ!!僕たちじゃ、どうしようもできない...」
僕の言葉が耳障りだといわんばかりに、ルベルトは僕の言葉をさえぎって、大声で叫んだ。そして、ルベルトは膝から崩れ落ちる。その顔は絶望でいっぱいになっており、敵に四方八方に囲まれた一人の兵士の顔に酷似していた。
おい!おい!と声をかけて肩を揺さぶるが、何かにとらわれて用にうめき声をあげながらどこかそれを見ている。
その時、商店街のわき道から大勢の兵士が現れた。待ち伏せしていたらしい。
「そこを動くな異邦人!!動けば殺す!!」
そういって槍やら盾を構える兵士たちだが、僕は何かをした覚えはなかった。しかし相手が異邦人と言っているあたり、僕に対して言っているのは確かであった。
「何かの間違いでは?僕は何もしてないですし」
「俺たちもなにかは聞かされていない。だが、国王アルベルト様の命令だ。それで理由は十分なはずだ」
国王というワードに、僕は引っかかりを覚えた。その時、商店街でおじさんがルベルトに対しての呼称は『王子』だということを思い出した。
ルベルトに聞くしかない。どうしてこうなってるのかを。
しかしルベルトを起こす暇はない。そう判断した僕はルベルトを背中に背負い、僕から見て右側のほうへ全力疾走し、兵士たちを蹴散らした。そしてそのまま、何とか兵士を巻いた。
「おい、ルベルト!さっさと起きてくれ!」
何度も肩をゆすぶり、何度も彼の名前を呼んだ。そしてようやく、ルベルトは正気に戻った。
「....。はっ。どうなって?」
「話はあとだよ。ところで、アルベルト王って...」
そういうと、ルベルトは曇った表情をしながら、僕の父さんだ。といった。
「それがどうしたの?」
「さっき、アルベルト王の命令で僕たちが襲撃された」
「襲撃?」
そう聞き返すか、何か心当たりでもあるようで、目を見開くとくそっ。と舌打ちをした。
「もうこうなったら全力で父さんに立ち向かうしかない。アドレ。僕に力を貸してくれないか?」
普段独特のくせがあるしゃべり方があるルベルトだが、今この時だけは癖が抜けており、真剣なんだなと直感で理解した。だからこそ、僕はルベルトの手を取って、行こう。とだけ言うと、そのまま応急へ向かった。
最後まで読んでくださりありがとうございます!執筆速度は遅いですが、これからもこのシリーズを続けていこうともいますので、ブックマークをして待っていただけると嬉しいです。
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