第四十八話 月がキレイですね
アドレと別れた後、ルベルトは速足で王がいる宮殿に向かった。
大きな玄関。そして階段。大きなシャンデリアや豪華な買いが。そして隅まで手入れが行き届いた花瓶などをしり目に、大きく敷かれた赤色のカーペットに沿って、王室まで走った。
そして、ようやくルベルトは大きな茶色の扉の前まできた。しかしどうにも手がうまく動かせない。なぜかと手をのほうを見てみると、震えている。恐怖していたのだ。いつも厳しい父に、異変を後押ししている父に、異変を解決したい。そんなことを言ったら、自分はどうなってしまうのだろうか。想像すらしたくなかった。
しかし異変でよみがえったものはどこまで行っても偽物。本物になることはできない。偽物が本物と思っていようとも、姿かたち。それらすべてが同じだったとしても。それは皮をかぶった偽物である。だからこそ、この異変を終わらせなければならない。
異変を解決する。その確かな意思を奮い立たせ、ルベルトはその重い扉をゆっくりと開けた。
そこはあたり一帯が白色で包まれていた。柱も、天井も。何もかもが白色である。この部屋以外の壁はすべて黄土色。そのせいか、やけにこの部屋は神々しく見えた。そして床には唯一白色ではない、赤色のカーペットが敷かれてた。しかしそのカーペットの脇には、大勢の兵がいた。全員が甲冑を着ており、今戦ったとしたも到底太刀打ちできない。ルベルトはそう悟った。
カーペットの道を進み、王座に座っている一人の男と、その横にいるガタイのいい男の近くまで行く。そして、ルベルトは膝をついた。
「どうした、ルベルト」
低い声が、この部屋に響き渡る。その声は、髭を伸ばし、余裕そうに立ち構える国王アルベルトにふさわしかった。
「父上。僕はこの異変を終わらせます」
「ほう」
アルベルトの眉がピクリと動いた。癇に障った。それに気が付いたルベルトは、一滴の冷や汗をかいた。しかしそれでも、ルベルトは引く素振りすら見せなかった。
「偽物は偽物です。それに、少しすればもう後戻りができなくなってしまう!その前に、一刻も早くこの異変を終わらせなければならないんです!だから、力を貸してほしいんです」
アルベルト王はルベルトの話を静かに聞き、そして聞き終えると、ゆっくりと立ち上がった。
「ルベルト。だめだ。俺はお前の提案には答えない」
「どうして...!王は、民を守らなければならない!なのに、なぜ自分のことを優先する!!父上は昔言っていた。民を守るのが王の務めだと。それを体現できていないのは誰だ!?紛れもないアルベルト王、あなただ!あなたは王として失格だ!」
アルベルト王の答えに、ルベルトは王に対してため込んでいた感情が一気にあふれてきた。しかしここまで行っても、その木本が和らぐことはなかった。それどころか、どんどんたまっていく。
その時、ガタイのいい男が動いたかと思えば、ルベルトの背中には剣の持ち手部分が当てられていた。そしてそれは大きく振りかぶられたようで、ルベルトはかはっ。と声を漏らして、悶絶する。
「アルベルト王に何という口の利き方だ。息子だからと言っても限度がある。言葉を慎め」
「いいんだ。別にそこまで怒ってはいない。むしろ注意すべきはお前だ、グレイヴ。お前はレベル9。お前が少し力を入れてしまえば、たいていの人間は気絶。または死んでしまうのだ。お前にはもう少し塩梅の加減というものを教えなくてはならんようだ」
するとグレイヴはアルベルト王に向かって膝をついて、すみませんでした。と言って謝罪した。
「そういうことだルベルト。お前が何を言おうと、私のやることは変わらない。ようがないなら、そのまま立ち去れ」
そうしてルベルトはその場を去った。茶色い扉の前。ルベルトの頬には一筋の涙が滴っていた。悔し涙である。それは父に対する怒りと、何も変えられなかった自分への怒りだった。
その時、一人の女性がルベルトの目の前に現れた。そしてすかさず、女性はルベルトの頬に手を添える。
「ルベルト、大丈夫?」
「...や、やめろ......!!」
黒い髪の毛に金色の瞳。そして生前の母が来ていた白いワンピース。その正体がソイツだと理解した時には、ルベルトは彼女の手を大きくはたいてどこかへ走って去って行った。
時を同じくして深夜。カレーを食べ終えたアドレ一同は、そのまま馬小屋で寝ていた。しかしユイガは後片付けをするべく、重たい目をこすりつつ起きていた。
「ねぇユイガ」
「なんだ?」
馬小屋からイヴの声が聞こえた。呼び止められたので、作業しつつ応える。
「私さ、だれかここと好きって言ったら...どうする?」
「....は?」
突然の出来事に思わず作業の手を止めてしまう。このイヴが?あんなに頑固で馬鹿で、強欲なイヴが!?といったように、脳内がめちゃくちゃになる。極めつけは、何といってもイヴが頬を赤らめていたことだ。それによって、彼女の言っていることが嘘ではないことがわかってしまった。
「そうだなぁ.........特にどうもしないかな。お前が好きな奴を振り向かせるために俺は応援する」
というかこのシチュエーションは...。と、何かを思いついたようで、ユイガは徐々に口角が上がっていく。
俺にもモテ期到来かーー!!
そう思うと、どんどんと心拍数が上がっていく。
「私、アドレが好きなの...」
恥ずかしそうにそういう彼女に対して、ユイガは呆然としていた。
俺じゃねーのかよ!!
と、心の中で思いながら、ゆっくりと月を見上げたのだった。
最後まで読んでくださりありがとうございます!執筆速度は遅いですが、これからもこのシリーズを続けていこうともいますので、ブックマークをして待っていただけると嬉しいです。
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