第四十五話 俺のスキル
「お前のスキル?お前のスキルは『時』だけだろ?」
「ああ。確かにそうだ。『スキル』は時スキルだけだ。だが『魔法』は二つ使えるぞ?」
「『魔法』?」
「ああ。俺は別世界から来たものでね。その世界には魔法というものが存在した。この世界でいうスキルみたいなものだが。つまり、俺は実質的にスキルを三つほど持っているというわけだ」
そう締めくくると、俺は目を細めてうつむいた。
「とはいえ、俺が使った『空』スキルを相殺できるなんて、お前、何をした?」
「何をした...か」
ナイフを腰に付けてあった鞘に納め、俺は笑って答えた。
「なに。お前の空間を勝手に移動させただけだ。そう。俺の魔法は、いやスキルでいうとするならば、『空』スキル。だからな」
感情を表に出さずとも、親父が取り乱していることはわかった。
「今日はここに泊まろうか」
父との戦いも終わり、僕たちは小さな宿屋に来ていた。空はすっかり暗くなっており、腹は背中はぺったんこ。故に、僕たちの目は死んでおり、体格もげっそりしていた。それは父以外全員同じだった。
「お前たち、普段ちゃんと栄養を取っているか?もしよかったら、冒険で俺がよく作っていた料理を教えてやるぞ?」
「えぇー!じゃあ私が教わりまーす!」
「いや、これはみんなが教わるべきだと僕は思うよ。ね、アドレ君?」
「ま、まぁね」
要の圧に押し負けながらも、僕らは宿屋に入ろうとした。のだが、父はその場で足を止めて、脇にあった馬小屋に向かった。
「え、ちょ、ちょっと!?」
「なに。いつも戦場で戦っていたが故、普段のベッドでは眠れなくなってしまってな。だから馬小屋で寝ることにした」
父の発言に、さすがの僕もドン引きした。それはみんなも同じで、全員が顔を引きつらせて顔を青くしていた。
「わ、わかったよ。それじゃあみんな、行こう」
そのままみんなを引き連れ、僕は宿屋の中へ入る。
入口へ入った時だった。僕は一人の少年とすれ違った。なんてことはない、眼鏡をかけた普通の少年。しかし、少年は僕を横目で見るなり、耳打ちをしてきた。
「今晩、宿屋の前で待ってる」
後ろを振り返る。が、少年は人ごみに紛れてしまい、跡を追えなくなってしまった。
「何かあったの?」
イヴが不思議そうに僕を見つめる。しかし先ほどのことを言っても信じてはくれないだろう。そう思った僕は、笑顔を取り繕った。
「特に何もないさ。いこ」
何も気にしないふりをして、僕はそのまま二つほど部屋を予約した。
ユイガと二人。本来なら仲良く談笑したり、軽口を言い合ったりするのだが、今僕は先ほどのことが気になって仕方がなかった。
あいつは何を知らせたいんだ?僕のほうな部外者にこそ伝えたいもの?いや、なんだか違う気がする。もっと、重大な何かな気がする。
みんなが眠った後、僕はこっそり部屋から抜け出して、宿屋の前に来た。
「お?来てくれたんやね」
なまりが含まれた口調で、少年は僕を見るなり手を振った。少年同様、僕も手を振り返しつつ、彼に近づく。
「それで、僕に何か用かな」
「君さ、今ここ、サリパンで起こっている異変を知っているかい?」
「知ってるさ。なんなら、僕たちはその被害者だ」
そういうと、彼は目を細めて考え出した。しばらくして顔を上げたかと思えば、真剣な表情でこちらを見ていた。
「この異変はな、かれこれ四季を一周するくらいの期間続いてるんや。僕らサリパンは異変とともにある国。だからこそわかるんや。普通ならこんなに長く異変は続かへん。ってね。そこで異変を解決するのを、君に手伝ってほしいんや」
突然のお願いに、僕は怪しんだ。彼が怪しかったから。それ以上他ならない。なんてたって、あえて僕を指名したからだ。ほかにも優秀な人材はいたはずである。
疑問だらけになる頭を整理するように、僕は彼に聞いた。
「なんで僕なんだ?ほかにも人はいるはずだ」
「それはな、君が噂のスーパールーキーだからや。期待しとるよ。ほなまた」
そう言って、少年は突如としてその場を去った。
何か、とてつもなく嫌な問題に直面している気がする。少年の去る姿を見て、僕はそう思った。
その夜。僕はまた夢を見た。
最後まで読んでくださりありがとうございます!執筆速度は遅いですが、これからもこのシリーズを続けていこうともいますので、ブックマークをして待っていただけると嬉しいです。
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